12.友情 純情 気温上昇
美山春は頭の中で自分の好きな歌を流して帰路を辿ろうとする。
そこに現れたのは、クラスメイトでバスケ部の成島葵だった。
「よっ、美山さん」
「あ、ど、どーも…」
バスケのユニフォームが良く似合う彼を凝視して顔を紅くする春。 そんな彼女に葵は視線を合わせて不思議そうに呟いた。
「帰るの?」
「あ、うん…」
葵との話は須藤との話同様ペースに乗せられて上手く話せない春。
「じゃあねー、また明日」
心臓の脈が上がっていたことに、春はまだ気付いていない。
「…暖かくなってきたなあ…」
「え、隆典!!?」
葵は体育館に入って驚きの声を上げた。
「よっ!」
目の前に立つのは幼馴染の野球少年だった男、新庄隆典である。
「お前…野球やるんじゃ…」
「野球やめるって言ったじゃん」
ふと校門での会話を思い出す葵だったが、冗談だと思っていた彼は言葉が止まる。
「お、お前やめるってマジでいってんの?」
「おう…!」
気丈に笑う新庄の顔を、固い笑顔で見つめた葵。
「だって、俺はお前とバスケしてみたかったんだってー」
新庄はそんな葵の表情を嘲笑うかのように冗談を続けるので、葵のバスケ仲間だった男、中川将輔が隣から現れた。
「おお、こいつが葵の言ってた新庄か。馬鹿なんだってか?」
中川も同じように冗談を言う。新庄は笑いながら中川の高い位置にある頭を小突く。
「バカはこいつじゃい! 俺はバカキャラだからな! 勘違いするなよ!」
新庄に「こいつ」と指差された葵は腑抜けた声を上げて突っ込む。
「くそ、モテるからって調子乗るなよ葵ッ!」
「るせー! 女子と接する方法なんか全然わからねえよ!」
怒る新庄。言い返す葵。そして
「おいおい…それって自分から話しかけなくても女子から寄ってくるって言ってるようなもんじゃねえかよ」
中川は葵の発言を的確にツッコミする。葵は中川の言葉に顔を茹蛸のように紅くする。
「し…知るかよ…」
中川は176cmの身長を持つ葵よりも更に高い頭の位置から笑い声を上げる。
「純情だなこいつー、もしかして彼女できたことないのか!」
「あ、あるに決まってるだろ!」
葵はむきになって中川に反論する。そしてボールを持ち出して床につき始める。
「とりあえず今日はバスケだ! バスケするぞ!」
気温は今年最高気温を迎えた。




