11.光は影に囲まれて咲く
葵の声は二人には聞こえていないようだった。
新庄は二人に視線を交互に当てると彼女らの表情を見てほっと胸を撫で下ろした。
「危なかったな葵…」
「お、おう…」
さすがの葵も今の発言は無神経すぎたと省みる。
何事もなかったように席に戻ろうとしたとき、隣の席にて、先ほど同時に教室に入ってきた二人が対峙していた。
「あんた…どういうつもりなの?」
「え…?」
和島海は席に座ろうとする美山春に向かって声を上げた。 成島葵の隣にて。
「そんなこと言われたって…って顔しないでよ…」
和島は尚も声を荒げる。春は更に更に黙り込む。
こんなときどうしたらよいかわからないのだ。
突然身に覚えのないことを話し掛けられる。 ただでさえ話しかけられるだけで緊張して固まる彼女にとって無茶振り以外の何者でもない。
機嫌の悪くなる和島海の様子が教室内の雰囲気を悪くしていた。
市野真子は和島と春と自分の足元を交互にチラチラと見ていた。
葵は口を一文字にして新庄の方を見る。
新庄も、気まずそうに座る葵の右肩に右手を置いて黙り込んで立っていた。
「ちょ…ちょっと…」
市野が右足を前に踏み出した。左手が無意識のうちに春と和島の方を向いている。
和島が怪訝な顔で市野の顔を見る。市野の周りにいた女子は彼女からさっと離れていく。
「ちょっと!!」
今度は別の方向から澄んでいて凛とした声が聞こえてくる。
「春ちゃん困ってるじゃない、そういうことやめよ」
声の主の方へ視線を向ける和島。目と鼻の先に寄ってきた須藤夏樹に対して嫌がる表情を見せる。
「…な、何よ」
「だからー、春ちゃんそーゆー悪乗り苦手だからやめたげよって」
須藤は笑いながら和島を諭す。
「そーそー、高圧的な態度は良くないよー」
「優しい子の方がイマドキモテルからねー」
「海ちゃん綺麗だからそんなことしなくてもモテルだろうけどさっ」
その雰囲気に須藤と仲良くしていた友達たちが同調して冗談を織り交ぜながら和島を諭す。笑い声すらも起きはじめる。
美山春だけが何が起こっているのかよくわかっていなかった。
それでも、微笑みかける須藤を見て春も固くなった顔を気付かず綻ばせていた。
「あんた…笑えるのね」
柴田が不器用に笑顔を浮かべ春に向かって呟く。須藤の笑顔を見ながら不機嫌そうにする和島は春にさらっと謝ると携帯電話をいじりながら教室を出て行った。




