Σ(゜д゜lll) 暗躍する女の子たち
「これ、面白いですね。デスス、別人になったみたいでした」
おかっぱ頭の女の子は、屈託なく笑う。
この白い球体、アコンプリスが置いていった予備だ。
本人はもう一つの球体を携えて、すでに行動を開始している。ここ五番ドックにはいない。
今なら予備の球体を勝手に使っても、怒られることはなさそうだ。そのように考えたデススザクは、かぶって遊んでいたのだった。
「はい、最後の一個。デスちゃんが食べてよ」
正面にいた女の子の一人、峰谷モトナが笑顔で渡してくる。『迷宮スイーツ』の商品で、「カラメルソースのないプリン」だ。
クリーム色をしたプリンの上には、薄茶色のアメ細工が乗っている。アメ細工は、「串に刺さった焼き鳥」の形をしていた。
デススザクもモトナも、表向きは誘拐されたことになっているので、大手を振って外を出歩くわけにはいかない。
欲しい物を頼めば、女の子海賊団が買ってきてくれる。人質というよりも、お客さまという待遇を受けていた。
で、『迷宮スイーツ』のプリン、最初は二十個以上あったのに、残り一個にまで減っている。
これ以降の予定を考えれば、
(新たな食べ物を買ってきてもらうのは、やめておくです)
デススザクは白い球体を床に置くと、「ありがとうです」とプリンを受け取った。
すると今度は、モトナの隣にいた女の子が、プラスチックのスプーンを渡してくる。
それも受け取ろうと、デススザクは手を伸ばしかけて、思わず目を丸くする。
そこにいたのも、「自分」だった。ほんの一瞬前までは、そうじゃなかったのに・・・・・・。
この場には、デススザクが二人いる。赤いマントのデススザクと、白いセーラー服のデススザクだ。
しかし、そんな時間も長くは続かない。
スプーンを渡したあとで、「もう一人のデススザク」が、ペットボトルの水で手を洗い始めたのだ。
途端に、変身が解ける。ふんわりしたポニーテールの女の子が、正体を現した。
そうやって元の姿に戻った峰谷マノは、ハンカチで手を拭いてから、五番ドック内のデジタル時計に目を向ける。
「私、そろそろ出発するので、デススちゃん、妹のこと、よろしくお願いしますね」
「わかってるです。デススにお任せです」
「お姉ちゃん、待って。大事なことを忘れてるよ」
モトナが姉の両手を握った。
二人の指先から、淡い光が洩れ始める。
これは、異世界転生の際に、モトナが授かった力だ。自分以外の人間の身体能力を、驚異的に高めることができる。
ただし、この力を使うことができるのは、一日に一回のみだ。
さらに、副作用もある。たしかに身体能力は格段に強化されるものの、調子に乗り過ぎてはいけない。普段以上の力を出した分は、翌日以降の疲労として、繰り越されてしまうのだ。
「前に二回使ったことがあるけど、一回目は点滴が必要になっていたし、二回目はぶっ倒れて病院に担ぎ込まれていたよ。だから、お姉ちゃん、あまり無茶はしないで。でないと明日、大変なことになっちゃうよ!」
早口で力説するモトナ。
「大丈夫だよ」
マノは妹を優しく抱きしめると、
「私はほんの少し、がんばるだけでいいから」
そのために、まずはこれから、『役者連館』に潜入するのだ。




