表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
276/389

Σ(゜д゜lll)  赤の回廊で激突(マユハ視点 その二)

 マユハが着目したのは、「歩幅」だった。


 アヤトの歩幅は、自分よりも大きい。だから、大きな移動で挑んでも、勝つことは難しいだろう。


 だけど、小さな移動ならば。


 この移動、自分にとっては自然な歩幅なので、ここぞの時には無理がく。


 それに対して向こうは、普段とは違う歩幅での移動を、いられている状態。


 とはいえ、アヤトの反復横とびは驚異的だ。この程度の動きでは、彼をふり切ることはできないと思う。


 けれど、アヤトのリズムを少しでいいから、乱すことができれば・・・・・・。


 これしか活路が見出みいだせない以上、そこに全力をかたむける。


 小さな有利をコツコツ積み重ねていって、大きなチャンスに変えるのだ。今はこうやって、左右への動きを繰り返す時間帯。


 マユハは自分の最速で動いた。


 しかし、さすがにアヤトは速い。


 小さなすきは何度かあったが、こちらが前に出るよりも速く、ハリセンをうまく牽制けんせいに使ってくる。突破口が見出せない。


 このままでは、先に体力切れに追い込まれるのは、自分の方だ。焦ってはいけないと思うものの、現状維持だと待っているのは敗北のみ。


 一か八か、突撃をかけるか?


 その瞬間、アヤトのリズムがわずかに狂った。


 彼の右側に、細いながらも突破口が出現する。


(ここで攻める!)


 ほとんど反射的に、マユハはななめ前へと走り出していた。


 アヤトが対応してくる。それまでの構えから、さらに半歩、横に平行移動して、この状況に即した迎撃げいげき態勢をとっていた。


 緑色のハリセンが、高速の線となって迫ってくる。


 突破できるか。その逆か。


 きわどいタイミングだが、これは――――――――――――――――――――駄目だ!


 頭に浮かんだのは、ハリセンが命中するイメージ。


 すかさずマユハは、急ブレーキをかける。両足のかかとに、体重の大部分を無理矢理預けた。止まってー!


 だが、もはや手遅れだった。


 さらに前へと踏み込んでくるアヤト。攻撃の軌道を修正してくる。


 目の前には、ハリセンが迫ってきていた。よけたくても、体が言うことを聞かない。急ブレーキによる影響だ。


 ここまでか。


 マユハは観念する。


 ところが、顔のすぐ前で、ハリセンが急停止した。風圧だけが、顔をかすめていく。


 情けをかけたのだろうか。そんなものは望んでいないのに。


 とっさにマユハは、右手の指先をデコピンの形に変えていた。


 ハリセンの真ん前から顔を外すと、アヤトを本気でにらみつける。


 しかし、彼はとても真剣な表情をしていた。


 その勢いに、マユハは気圧けおされる。


 アヤトが小さくつぶやいてきた。


「下」


 わけがわからず、とりあえず視線を下げてみる。


 そこには白線があって、アヤトのくつがかかっていた。


 それで疑問が氷解する。


 これに気づいたから、ハリセンを止めたのか。あの一撃、当たっていたとしても、ラインオーバーで無効になっていた。


 勝った・・・・・・のか。


 マユハは指の形を崩しながら、大きく息を吐く。


 本当に紙一重だった。このラインオーバー、狙ったわけじゃない。


 背後の『役者連館やくしゃれんかん』側からは、ものすごい歓声が上がっていた。


 当然だろう。現在の赤の回廊で「最強」と称される、《千手せんじゅ狂王きょうおう》を突破したのだから。


 戦いの前や戦いの最中、彼らの声援は途切れなかった。それが見えない力となって、背中を押してくれた気がする。紙一重の勝負だったからこそ、この差は決定的なものとなった。


「安心するのは、まだ早い」


 普段と変わらない声で、アヤトが告げてくる。その表情も、穏やかなものに戻っていた。


「じゃあ、あとはメモリ、任せたんで」


 そう『奥館おくかん』側に伝えると、回廊のわきへと移動していく。


 アヤトの言う通りだと、マユハは気合いを引き締め直した。


 赤の回廊にいる「最強」は、《狂王きょうおう》一人だけではない。《無法少女》もいる。


 彼女も突破しなければ、『奥館』にたどり着くことはできないのだ。


 三十メートル先で待ち構えているメモリは、「いかにもアイドル!」といった服装をしていた。白とピンクを基調としたドレスには、レースやフリルがたくさんついている。


 彼女はバズーカ砲の先を、こちらへ向けてくると、


「はいはい、ちっちゃくてかわいい私を忘れないでね☆(キャピッ)」


 不敵な笑みを浮かべていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ