Σ(゜д゜lll) 託された手紙
午後五時十五分。
(こんなことになるなんて)
真鈴野マユハは黒いジャージ姿で、『役者連館』の中層階を、早足で移動していた。
周囲にいる役者たち、その多くが冷静さを欠いている。彼らの間では、さまざまな情報が錯綜していた。
この不安定な状況が、いつまでも続くとは思えない。
混乱は遠からず、爆発するだろう。
(急がないと)
マユハはさらに足を早める。
今し方、《閣下隊》に頼まれたのだ。《関所回廊》を突破し、これを代表支配人に届けて欲しい。
彼らからの依頼、思考の天秤に掛けるまでもなかった。
今日はずっと『役者連館』に待機している予定だったが、こうも状況が変わってしまうと、柔軟に行動した方が良い気がする。
黒いウエストポーチの中には、《閣下隊》から託された手紙が入っていた。
厳重に密封されているので、中身は見ていない。けれど、この手紙の重要性は、十分に理解しているつもりだ。
だからこそ、絶対に回廊を突破しなければ。
ただし、現在の《関所回廊》には、「完封指示」が出ているらしい。
しかも、各回廊を守っている《劇番衆》は、強豪ばかりだとわかっている。
特に、「青は避けろ」と強く言われた。七つの回廊で唯一、《選定候》がいるのだとか。
となると、残る六つの回廊から、どれを選ぶかだが・・・・・・。
紫、藍、緑、黄、オレンジ、赤。
少し考えたあとで、答えを出す。
(赤の回廊以外にあり得ない)




