表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
252/389

Σ(゜д゜lll)  勝敗の読めない相手

「鈴木一億か」


 エピテリカはつぶやいた。


 こいつの名前も、例のリストにっている。狩りの獲物が追加された、というわけだ。


むらさきの《選定候せんていこう》、すでに勝敗はついていると思うけどね。それ以上は、やり過ぎだよ。第一、《劇番衆げきばんしゅう》同士の私闘は禁止だし」


 幼稚園児っぽい声。


 それを聞き流しながら、エピテリカは素早く相手を観察する。


 鈴木一億は大きなハリセンを手にしていた。あれで、今の突風を起こしたに違いない。どうやら、こいつも近場で特訓していたようだ。


 たしかに、鈴木一億は強い。


 だが、石化少女たちも含めて、彼ら三人だけなら、まだ勝ちが十分狙える。


 しかし、この場に現れたのは、鈴木一億だけではなかった。


 もう一人いる。


 それに気づいた瞬間、エピテリカは緊張した。鈴木一億の肩から、視線を動かせない。


 そこには、美少女が座っている。黄色いヘルメットをかぶり、白いジャージを着ていた。


 エピテリカは警戒心をあらわにしつつ、その名前を告げる。


「アリリス・・・・・・」


 彼女は黄の回廊の《劇番衆》で、鈴木一億の相棒だ。


 エピテリカが一対一で戦ったとして、勝敗の読めない相手、その一人でもある。


 かつては、「海箱ユユの再来」とか「それ以上」とか呼ばれた天才。


 だが、アリリスは大きな弱点を抱えていた。


 そのせいで現在、世間からの評価は大暴落している。天才は天才でも、眠れる天才。落ちこぼれの天才。例のリストにも、彼女の名前は載っていない。


 しかし、エピテリカは今でも、アリリスのことを認めている。


 最強の座を狙える《劇番衆》の一人だと。


 前にルックナーとお酒を飲んだ時、あの男も似たようなことを言っていた。きっかけさえあれば、大きく化ける存在だと。


 そんなアリリスが、自分の前に現れたのだ。


 この脅威に対して、エピテリカは表情を硬くする。


 今の状況において、彼女アリリスの弱点は、大した意味を持たないだろう。


 片やこちらは、リンドエンドが入った麻袋を、かついでいるのだ。両手を自由に使える状態ではない。


 こうなると、立場が逆転する。狩る側と、狩られる側とが。


 しかも、アリリスが両手にはめているのは、見慣れない手袋だ。かわ製で、紫に着色されている。


 目をらしたところ、どの指先からも、透明の糸が伸びていた。


 これまでの《ゲキバン》において、アリリスの武器はハリセンだった。あんな手袋ではなかった。ということは・・・・・・。


 思わず息を飲む。


(ついに手にしたのか、専用武器を)


 おそらくは、「彼女の長所を最大限にかすもの」だと考えられる。


 となると、この勝負の行方は・・・・・・。


 エピテリカは想像せずにはいられない。


 アリリスに敗れ、捕まるようなことがあれば、


(一達さまの計画に悪影響を及ぼす)


 そんなご迷惑をかけるわけにはいかない。


 今になって、石化少女たちの粘りを、うらめしく思った。


 あの二人を速攻で倒せていたなら、アリリスとの遭遇そうぐうは避けられていたはず。


 しかし、こうなっては仕方がない。エピテリカは苦渋の決断をした。


 逃げに徹するのである。


 その下準備として、鈴木一億に呼びかけた。


「これをお前に預ける。大事に受け取れ」


 右肩に担いでいた麻袋を、パンダのぬいぐるみに向かって、山なりに投げた。


 相手がハリセンを持っていない方の手で受け止めるのを見届けてから、エピテリカは一目散に逃走する。


 アリリスは強い。


 鈴木一億が「最大」の《劇番衆》であるのに対し、彼女アリリスは「最速」の《劇番衆》だ。


 こうでもして身軽にならないと、この場から逃げきるのさえ難しい。


 自分は今ここで、絶対に捕まるわけにはいかないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ