Σ(゜д゜lll) 活路(前編)
黒い鞭が鋭い軌跡で、星空を切り裂いていった。
「何のまねだ!」
「ふいうちー!」
少し離れた場所から、非難の声が飛んでくる。
今の一撃で、エピテリカは決めるつもりだった。
だが、最初の攻撃は残念ながら、石化少女たちに回避されてしまった。
この二人は、ここで特訓していたらしい。それで体が十分に温まっていたのだろう。こちらの攻撃に対して、機敏に動くことができたのだ。
そうでなければ、今の一撃で、二人まとめて倒せていたはず。
しかし、それも時間の問題だ。
「次はかわせるかな」
エピテリカは再び鞭を振るう。さっきよりもスピードを上げた。
これに対して、回避ではなく、防御を選択する石化少女たち。
悪くない判断だと、エピテリカは思った。
彼女たちの武器はハリセンだ。鞭と比べて、攻撃の届く範囲が、圧倒的に狭い。
しかも、あの二人にとって、エピテリカは格上だ。明確な実力差がある以上、自分たちの戦力をどこに「集中」させるのか、その「選択」は重要になってくる。
攻撃、回避、防御、逃走。
この四つの選択肢がある中で、石化少女たちはただ一つ、「防御」のみに賭けてきた。
実力面での不利を、ひたすら守備に徹することで、どうにかして補おうという判断。
その抗いを、エピテリカは無言で賛美した。
攻撃、回避、逃走のいずれかを選んでいたなら、その時点で石化少女たちは敗北していただろう。こちらの鞭をなめてもらっては困る。防御がおろそかな状態を、そう何度も逃したりはしない。
だが、防御を選んだからといって、あの二人のゲームオーバーが、ほんの少し先になった、それだけのことだ。
エピテリカは確信する。石化少女たちが勝つことは、絶対にあり得ない。
その理由は単純だ。《劇番衆》は、ある基準によって、二種類に分けることができる。《ゲキバン》のルール、その傘下においてのみ強い者たちと、《ゲキバン》だけでなく、こういった戦闘においても強い者たち。
石化少女たちは前者で、エピテリカは後者だ。いわば、スポーツ選手と戦士の差。
この両者が、《ゲキバン》のルール外で戦うとなれば、結果は見えているも同然。
とはいえ、石化少女たちの方にも、希望は存在する。
あの二人が、エピテリカに勝つことはできない。
しかし、引き分けの道なら、一応は残されている。
石化少女たちは知らないことだが、のんびりと戦っている余裕が、エピテリカにはないのだ。このあと北の港で、女の子海賊団と待ち合わせをしている。
持久戦に持ち込むことができれば、そこに石化少女たちの活路があった。
鞭に耐える時間は、そう長くなくていい。せいぜい数分といったところか。それで引き分けに持ち込める。
だからこそ、こちらがやるべきことは決まっていた。
速攻あるのみだ。石化少女たちの守りを崩し、その先にある希望も粉砕する。




