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32話


 門が開く少し前にランドルフは起こされた。


 「ふぁ~~~~ぁ。……眠い」

 「おはようランドルフ君。顔を洗ったらすぐに行こう」

 「ふぁい」


 顔を洗って外に出ると、兵士を乗せた馬車数台とジュレップたちがいた。


 「この人数だけどいけるかい?」

 「大丈夫です。範囲内を外から見えなくして、音も消します。あと匂いと熱源と……とりあえずそんなもんでいいか。ほいっと。これで見えなくなったはずですけど、どうです?」

 「……これはすごい。こんなことまでできるのか……すごいなランドルフ君は」


 試しに掛けてみて、外からこちらを眺め、効果範囲を行き来して確認するとミード子爵が感心する。


 「ランドルフ君が泥棒じゃなくてよかったよ」

 「冗談でもそういうのはやめてくださいよ」

 「素敵ですっ……」


 つぶやくアプスの視線に、なぜか熱がこもっている気がする。門の前までは普通に見えるように移動し、そこからは姿を消して外へでた。


 「合流予定地はそろそろのはずなんだが……いないね~」

 「嘘の情報でしたかね?」


 遠見で探してみると、川のくぼ地にいたので、ちょうど隠れるようになってたようだ。


 「ジュレップ殿。ここは私にやらせてください」

 「……本当はよくないけど……殺さないようにできますか?」

 「何度か訓練で戦ったことはありますが、負けたことはありません」

 「訓練と実戦は違うよ?」

 「わかっています」


 じっとお互いに目を見つめあう。


 「……はぁ……わかった。でも遠くから取り囲んでおくからね」

 「ご配慮ありがたく」


 ジュレップに礼をいって、魔法の効果範囲からでるアプス。輪を半分にした形に効果範囲を変え、遠く離れながら兵士達が取り囲んでいった。







 「誰を待っているんだ?トクルマティア」

 「……アプス。やはり来たか」

 「わかっていたのか」

 「お前なら来ると思っていた。仲間はどうした?」

 「他は全員捕まった」

 「なに!?魔道具があったのにあいつらへましやがったのか!?」


 信じられない様子のトクルマティア。実際にランドルフがいなければ見つかることはなかったかもしれない。


 「お前も大人しくつかまれ!!お前の勝手のせいで村のみんなまで処罰されるかもしれない。お前の首を差し出して許しを請う」

 「はっ!!盗んだ金で食料を買ってやったのに!!ひどいものだなっ!!」

 「薬や工芸品を売ったお金でも十分にまかなえた!!お前がやったのは勝手な押し付けで、ただ自分のためにやったわがままだっ!!」

 「相変わらずくそまじめなやつだ。お前のそういうところが気に入らない。捕まえるつもりなんだろ?」

 「ああ」

 「そうか……じゃあ死ねっ!!」


 懐からナイフを出し、アプスにいきなり襲い掛かってきた。

 アプスもナイフを取り出し、受け止める。


 「訓練では私に勝てなかったお前が勝てると思っているのか!?」

 「まともにぶつかれば俺が勝つっ!!」

 「己に有利な状況で戦えと言っただろ!!」


 アプスがトクルマティアの腹を蹴り飛ばし、距離をとる。トクルマティアもガードして、離れ際にナイフを投げた。打ち落とすアプス。

 再び投げられたナイフも落としたが、その間に詰め寄られ、力いっぱい切りつけられる。

 何とかかわすが、連続で攻撃を仕掛けられる。


 「まともにと言った割には短刀を投げるんだなっ!!」

 「勝てばいいんだよ!!」

 「その意気込みを訓練のときに発揮していればっ!!」


 お互いに激しい攻防が続く。攻撃ばかり仕掛けるトクルマティアに対して、アプスはけん制はするが防戦一方だ。やがてトクルマティアの息が上がってくる。


 「はぁ…はぁ…。ちっ、俺なんか余裕だってか。はぁ…。気にくわねぇな。だが己に有利な状況で戦えって言ったよな?」


 何か仕掛けてくるか?


 アプスがそう思った瞬間、トクルマティアの姿が消えた。


 「くっ!!魔道具かっ!!」


 風きり音が聞こえ、下がりながら動き回り攻撃を回避する。見えない攻撃に、地面の砂を当たりにばら撒いて何とか居場所を探ろうとするも、気づいた頃には切りつけられて、どんどん出血していった。


 「ジュレップ様。さすがに手を出したほうが良いのでは?」

 「一方的になってしまうね」


 アプスが持っていた魔道具は研究にまわされ、今は持っていない。持っていてもお互い姿が見えず、千日手になっていただろう。

 ジュレップが兵士達に合図をだす。


 「もらったっ!!」

 「ぐぅ!!」


 そのとき、アプスは首筋に浅くない傷をもらってしまい、血を流し倒れこむ。トクルマティアが止めを刺そうとしたとき、魔法を解除していっせいに兵士達が姿を現した。不意打ちで、匂いを頼りにデンが電撃を浴びせ、魔道具が焼け焦げてトクルマティアも姿を現した。


 「なにっ!?」

 「アプスさんっ!!」


 ランドルフはすぐさま駆け寄り、治療をする。出血は止まったが、血を流しすぎたためか顔色が悪い。


 「なんだっお前ら!!」


 トクルマティアが兵士達に取り押さえられ暴れている。


 「王都を騒がせている泥棒さんを捕まえに来ただけさ」

 「アプスッ!!お前ー!!」

 「アプスさんしっかりしてください!!」

 「ゴフッ、……大丈夫、です。ありがとう。ゴホッホゴッ!!」


 口から詰まっていた血を吐き出し、息を整える。血を流しすぎたためか、腕に力は入らず、頭はくらくらする。


 「安静にしててください」

 「すまない。少し……、眠る……」


 そう言って眠ってしまったアプス。


 くそっ!!輸血とかの知識はないのかっ!?脈はあるが……とにかく暖かくしておくしかない。


 「けっ、アプスはくたばったのか!?いい気味だなっ!!」


 アプスが死んだと勘違いしたトクルマティアは、連行されながら罵声を浴びせる。ランドルフは頭にきたが、何も言わず静かににらみつける。


 こうして王都を騒がせた、泥棒事件は解決……かに思われた。


 ん?魔力反応?


 「何かいます!!警戒してっ!!」


 ランドルフがあわてて大声を上げ、警戒するように叫んだそのとき。トクルマティアが逃走用に用意していた馬車から炸裂音が聞こえた。


 「なんだ!?」

 「「ぐぁ!!」」


 トクルマティアを馬車に乗せようとしていた兵士達が吹き飛ぶ。魔法で吹き飛ばされたようだ。


 「いきなり実戦での運用試験とは……トクルマティアさん大丈夫ですか?」


 姿は見えないが声がする。ランドルフが空間把握をすると、こうもりの羽が生えた様な、人型を捉えた。


 「鳥人間か!?」

 「姿は消えているはずなのに、形がわかる?興味深いですが。今は逃げの一手ですな」

 「ゲザケインか?」


 噴出すのような音が鳴り、トクルマティアが一人でに浮き上がり、その場を離れてゆく。あわててランドルフが羽の生えた人型に向かって雷を落とす。


 「ぐぅ!!なんですか!?」


 アプスさんががんばったのに、ここで逃がすわけには行かないっての!!


 確実に当たったものの、衝撃を受けただけでまったく落ちる様子はない。もう一発雷を落とす。


 「うぐっ!!雷を落とすとは。だが空を飛ぶので落雷の耐性はつけてますよ!!」

 「ご高説どうもっ!!」


 爆発するような音が聞こえ、急速にスピードがあがり加速して逃げてゆくトクルマティア。雷では駄目だといわれたので火の玉を放つが、魔法が放たれて相殺された。


 「ジェットエンジン付けてんのかよ!!それって飛行ユニット!?グライダーか!!」


 ランドルフも飛んで追いかけようとする。そのとき、いきなり煙幕がばら撒かれた。


 「ランドルフ君っ!!」


 逃がすわけにはいかないと、煙幕なんてお構いなしに突き進もうとしたが、それはただの煙幕ではなかった。


 「ゴホゴホッ、目が痛い。喉が焼ける。催涙弾かよっ!!」


 痛みで集中力を欠きうまく飛ぶことができない。なんとか煙幕から抜けてすぐに治療し、目を開けた頃にはトクルマティアの姿がなかった。


 くそっ!!無理せずバリア張って慎重にいくべきだった!!俺の馬鹿野郎!!


 攻撃も火の玉でなく、石の槍でも放っておけば相殺はされなったかもしれない。実戦経験の無さが出てしまった。


 「すみません。ジュレップ様、逃がしてしまいました」

 「いや、君が無事でよかった」

 「魔法を食らった兵士さんは大丈夫ですか?」

 「今治療してもらっているよ」


 破裂した馬車を調べると、金貨が数枚散らばっていた。


 「今までの金貨はほとんど持っていかれたと思って良いねこりゃ」

 「あの話しぶりからすると、謎の集団の一人ってところでしょうか」


 予定にはない行動だったように感じられたしな。金貨だけ先に回収したのか。


 「魔道具を渡していたやつだろうね」

 「もっと早く気づくべきだった……」

 「そんなに自分を責めるな。君は良くやってくれたよ」

 「はい……」


 ミード子爵が慰めてくれた。


 アプスの容態も気になるので、釈然としないまま詰め所に帰る事になった。









 アプスを治療院に運んで診断を受けたが、命に別状は無いそうだ。療養しておけば回復するだろう。


 「ランドルフ君。陛下への報告があるから一緒に来て」


 との事なので登城した。前回と同じ国王の政務室だ。


 「皆、ご苦労であった。途中まではクレイブルに聞いていたのだがな。それでどうなった?」


 王様に今までの事を話した。


 「取り逃がしたか……。手配書は出してるんだろ?引き続き捜査は続けるが、ひとまずは一件落着だな」

 「謎の集団の件ですが」

 「そういうやつらがいるという情報だけでも価値はある。警戒は続けよう」

 「アプス殿に関してもなにとぞ穏便な計らいをお願いいたしたいと存じます」

 「わかっている。そもそもその女性に褒美をやらなければな。要望をできるだけ受け入れられるようにはしよう。族長の首を差し出す必要もない」

 「はっ」


 アプスさんよかったな~。早く元気になってください。


 「ランドルフもこの泥棒事件が終わったと宣言するときに来るようにな」

 「はい」


 ご褒美もらえちゃうんですかね。期待しちゃいますよ~?


 「褒美は島の開発資金に上乗せしておこう」

 「ありがとうございます」


 あらま、なんかちょっとがっかり。


 「アプスという女性が回復したら行うので心積もりはしておくように」


 他には特に何も無く、報告を終えて屋敷に帰る。

 アプスさんのお見舞いに行こう。

お読みいただきましてありがとうございます。


トクルマティアはアプスが死んだと思っています。

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