70話
本日2話目
「馬鹿なの?サージスさんは当然馬鹿だとして」
シャル……。
「リオもドロップ品馬鹿なだけじゃなくて、筋肉馬鹿になるつもりなの?」
……あ、私も馬鹿認定されてる。
「サージスさん、リオに危ないことさせないでいいからっ!リオは僕が守るし、剣なんてふる必要ない、分かった?」
シャルがいつの間にか私の目の前30センチのところにいて、鼻をつままれた。
うう。
糞……でない、味噌回収計画が。
ちょっと不満げな表情をしてしまったかな?
「僕が、守るって言ったの。僕を信用できないわけ?」
シャルがむっとした表情を見せる。
「ち、違う!あの、でも、その……」
じりじりとシャルの顔が私の顔に近づく。
「シャル、俺もお前のことは信用してる。だがな、いい機会だから言わせてもらう」
がしっと、サージスさんが、私とシャルの頭を大きな手でつかんで自分に向けた。
「シャル、もし何らかの事情でスキルが使えず、飛べなくなったらどうする。もちろん、俺は二人を命を懸けて守るが、俺に何かあったとき。お前に何かあったとき」
サージスさんに何かある?シャルに何かある?
シャルが何かを考えるような顔をする。
「ぼ、僕、二人に何かあったときに、二人を守れるようになりたいっ」
私の言葉に、シャルとサージスさんがあっけにとられた表情をする。
「ぷっ、そうだな、うん、いや、……まぁそういうことじゃないんだがな……」
サージさんがガリガリと頭を掻いた。
「パーティーメンバーに置いていかれて、一人でモンスターに囲まれてたリオをシャルは見てないだろう?」
シャルがその言葉にハッと息をのむ。
「本人にやる気があるなら、いろいろなことをしてみるべきだと、俺は思う。向いている向いていない、スキルがあるないなんて二の次三の次だ」
「スキルが、あるないは……二の次三の次?」
サージスさんがニカッと笑う。
「サージスさんが言うと何も言えない……」
シャルがはーっと大きなため息をついた。
「あの、スキルが無くても、僕も、剣を練習すれば、戦えるようになるかな?」
シャルが再び私の鼻をぎゅっとつまむ。
「鑑定スキルがなくたって、"あれ"なリオが、今更スキルのあるなしにこだわる必要ある?」
へ?あれって何だろう?
「まぁ、とにかく、シャルも起きたことだし、ご飯食って、ギルドにパーティー拠点を探しに行こうぜ」
サージスさんが嬉しそうに笑う。
「そうだな、庭が広くて、剣の訓練ができるところがいいな!」
シャルがちょっと嫌そうな顔を見せる。
「シャルの希望はどんなんだ?」
「そうですね、部屋は多い方がいいですね」
「ん?部屋など、3つもあれば十分だろう?いやむしろ、この宿みたいに広くて大きな部屋が一つでもいいだろ?」
シャルがサージスさんの顔に指を突き立てた。
「この宿みたいな皆が集まれる部屋のほかに、サージスさんの部屋、空き部屋、僕の部屋、リオの部屋。鍵付きの浴室とトイレと、調理場付きの食堂!」
ご覧いただきありがとうございます。
鍵付きのトイレと風呂……気が利くシャルであるが、よく考えたら、シャルには、鍵はむ、い、み。
('ω')ノ以上、現場からお送りいたしました。