68話
「なんだよシャル、まじで?いいの?ずっとシャルは一人がいいからって、一緒に住んでくれようとしなかったのに……」
サージスさんが目をキラキラと輝かせてシャルを見た。そして両手を広げてシャルに抱き着こうとして、駆け寄り、広げた両手をシャルの体に伸ばしたところで。
スカッっと。サージスさんの手が空を抱きしめた。
「そういう暑苦しいのが嫌いだから一緒に居たくないって」
「あー、そのシャルが拠点が欲しいなんてどういうことだ?」
サージスさんが残りの干し肉をもぐもぐごっくんしてから、スクワットを再開した。
「リオは駄目だ」
え?私が駄目?
「宿に置いとくと、死ぬ」
「だ、だ、大丈夫です。今までだって死んでないですし、それに、えっと、これも買ったから、食費も節約できるので宿代もきっと大丈夫」
すちゃっと頭にのせている雪平鍋を手に取り見せる。
食材は森で手に入るし、糞と呼ばれるドロップ品が美味しいし……。
「そういうことじゃない、黙っててくれるリオ」
シャルが怒ったような顔で私の顔に手を伸ばす。あ、でこピン来るっ。
と思ったらちょいっと鼻をつままれた。
「あー、なんか、リオなら確かに……まぁ、なんか、いっぱい騙されて身ぐるみはがされそうだなぁ」
サージスさんの心配そうな言葉に、リュックを自慢げに見せる。
「大丈夫ですっ、ギルドで貸してくれた収納鞄には盗難防止もついてるので」
「奪われて困るのは収納鞄じゃないんだけど」
シャルの言葉にサージスさんが大きく頷いた。
「そうだな。うん、リオを狙ってるやつも多いからな」
へ?狙われてる?私が?
「それに、もう一つ大きな問題が発覚した」
シャルのつぶやきに身を固くする。
発覚!そうだ、女だってばれたんだ。サージスさんも私を男だと思ってパーティーの荷運者にしたのに話が違うって思うかも……。
「あ、あの、私、騙すつもりはな……」
謝ろう、謝って許してもらうんだ。
「リオ、黙ってくれる?リオが何をどう思おうが、これからはパーティーメンバーの一員として拠点に住んでもらうから」
「え?シャル、でも、あの……」
「ボクがリオを心配しすぎて死ぬ」
え?わ、私、そんなに頼りないのかな。
ああでも、収納鞄の中にはギルドにも各ショップにも売れない品を入れておかないといけない状態になっちゃってるし……。パーティーの共有所有物を私が預かっていたら確かに心配かけちゃうかも。それならパーティーの拠点を持って、そこにちゃんとした金庫なりなんなり用意してそこに入れておいた方が安全だよね?
「よし、じゃぁ早速拠点を探そう!と言ってもこの時間だ。明日探そう。今日のところは……」
サージスさんが私とシャルの顔を見た。
「ここに泊まるか?一緒に寝よう!」
サージスさんが私とシャルの腰に手を回して抱きかかえて、そのままベッドへダイブ。
「こんだけ大きけりゃ3人で充分寝られるだろ?そうだ、拠点にも大きなベッド1個入れて、みんな一緒に寝るか?」
サージスさんの言葉に、シャルが私の手をつかんで転移。
気がつけばベッドサイドでシャルに後ろからウエストに手を回されぎゅっとされている。
「冗談じゃないっ!まったく、冗談じゃない!ボクはリオが守る。サージスさんはあっち」
シャルが部屋に置いてあったソファを指さすとサージスさんがおとなしくそれに従った。
ベッドの中央に、たくさん置いてあった枕で仕切りをくくって、シャルが奥に寝転がる。
「ほら、リオはそっち」
手前をポンポンと手でたたく。
「僕がソファに寝るよ。ここサージスさんの部屋だし」
「はぁ?冗談じゃない。なんでボクがサージスさんと寝なくちゃいけないわけ?っていうか、リオは僕と寝るのが嫌なの?」
パッとシャルが私の目の前に転移してきた。勢いよくシャルの手が顔に延びてきて、目をぎゅっとつぶる。
また、鼻をつままれた。あれ?もうでこピンしないのかな?
うっすら片目を開く。【スキルジャパニーズアイ発動】あ、スキルが発動した。
【フェミニスト】とシャルに謎の単語が現れる。
「い、嫌じゃないよ。でも」
サージスさんに申し訳ないし。と、サージスさんの方を見る。
【寝落ち】
え?あれ?寝落ち?落ちるって?っていうか、サージスさん……もう、寝てます。今寝転がったばかりなのに……。
「ほら、早くリオも寝るよ」
シャルがベッドに座って私を呼ぶ。
「は、はい」
シーツを1枚手にとって、サージスさんの上にかけてからベッドに入る。
ああ、柔らかいなぁ。ふかふかだ。世の中にはこんなにふかふかした布団があるんだ……。
「おいリオ、もう寝たのか……たっく、無防備にもほどがあるだろ……。くそっ」
何か声が聞こえる……ごめん、何を言っているのか分からないや……お布団気持ちよすぎて……。
いつもご覧いただきありがとうございます。
1日目が終わりました。
ふぅ。
('ω')ノなんか、色々詰め込み過ぎた感はあるものの、仲間をゲットで、今度からはパーティーでダンジョンでドロップ品集めまくり、豪遊!
……な、わけも、なく……。