67話
「馬鹿なの?鞄の話じゃないから」
逃げたくても後ろは壁。……そもそも怒らせた私が悪い。
でこピンくらいじゃ許してもらえないってことだよね……。
できればこう、あんまり痛くないといいなぁ。
噛まれることを覚悟してぎゅっと両目をつむる。
コンコン。
「タライもういいか?次の客が待ってるんだが」
宿の主人の声に、シャルが何事もなかったかのように私から距離を取る。
「あ、はい、もういいです、すいませんありがとうございます」
シャルが私の荷物を手に持つと、もう片方の手で私の手をつかんだ。
ガチャリとドアが開いて主人が顔を出す。
「リオ、もう料金払ってあるんだよね?」
シャルの言葉に主人が私とシャルの顔を見た。
「あれ?1人増えたなら追加料金が必要だよ?」
主人の言葉に、シャルが首を横に振る。
「必要ない。泊まるつもりはないから。リオの支払いが済んでるならもう行く」
「へ?行くって……あ」
主人の言葉は途中で途切れた。
シャルが転移したんだ。目の前にはサージスさんがいる。
私が止まっていた宿とは比較的にならないくらい広い部屋。大きくて清潔なベッドが部屋に配置されている。
サージスさんの荷物がベッドの上に乱雑に置かれている。
「あれ?どうしたんだシャル?珍しいな、お前がダンジョン以外で俺の前に顔を出すなんて。おお、リオ、お前も一緒か」
上半身裸で、干し肉を口にくわえながらスクワットをしつつ、濡れタオルで体を拭いているサージスさんがいる。
「何やってんですか?」
シャルの言葉にサージスさんがニカット笑った。
「そりゃ、ご飯食べながら運動しながら、体を拭いてるんだ」
「ご飯ならご飯、運動なら運動、落ち着いてできないんですか?」
サージスさんが私の顔を見た。
「いや、でも時間がもったいないよな?せっかく体を鍛えられるのに、ただ飯を食ってるだけなんてな?」
同意を求められた。サージスさんはS級冒険者なのに、時間を無駄にしないように体を鍛えたりとか努力してるんだ。
「リオ、何、サージスさんすごいって目をして見てんの?リオはボクだけ褒めればいいんだ」
シャルがむっとした表情を見せる。いや、シャルもすごいと思ってるよ。
「食事は体を作るために大切な時間だろう?運動しながら適当に採るべきものじゃないし、そもそも運動してたら汗をかくから、体を拭いても拭いてもきれいにならないからね?」
あ。そういわれれば確かにその通りだ。
「で、二人そろってどうしたんだ?」
「サージスさんパーティーの拠点を作ってください」
パーティーの拠点?そういえば、何年も同じ街で冒険者をしているパーティーの中では、宿を借りるよりも節約になるとか便利だからと、家を買ったり借りたりして拠点としていることもあるって。
いつもご覧いただきありがとうございます。
朗報朗報。
もうすぐ、1日目が終わるよ……
(´・ω・`)そう、なんか、ロードグリにダンジョンでおいていかれてからスタートしたけど、これ、まだ、1日の中での出来事なの……
めっさ忙しかった1日。
長かった1日。
あと1話で1日目が、やっと、おわ……る……
では、引き続きよろしくお願いします!
ですです。