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59.末路

余裕の更新!

これもひとえに皆さんの声援が力となって、薄れかけていた執筆意欲がうんちゃらかんちゃらでそういうあれです!


 俺がもうすでにパーティを組んでいるのは、月にとってはよっぽど想定外だったらしい。

 これまでで一番焦った顔で、月は俺に詰め寄ってきた。


「ちょ、ちょっと待ってください! じゃあ私の『封じられたパーティ募集! ぼっちを照らす麗しき月光』作戦は……」

「お前そんなこと考えてたのか……」


 なんだよそのネーミングセンスは、と言いたいが、作戦名聞くだけでどんな計画なのか大体分かっちゃうところがまたなんか腹が立つ。


 今度は俺の方から呆れた視線を向けると、月はどこからともなくハンカチを取り出して、わざとらしく目元をぬぐった。


「だ、騙してたんですね! ひどいです、乙女の純情をもてあそぶなんて!!」

「いや、それお前にだけは言われたくないからな」


 貴方を詐欺罪と器物損壊罪で訴えます、とか言い出しかねないテンションで訴えてくるが、どう考えても被害者は俺だろう。


「べ、別にいいじゃないですか。どうせこんな訳の分からない募集に乗る人いないだろうから、早めに諦めさせて傷心のところを恩着せがましくパーティに誘おうと思っただけなのに……」


 それ、割とひどいこと言ってると思うぞ。

 俺と、あとその訳の分からない募集に乗ってきた朔とかに。


「ううう、それにしても、私の完璧な計画が……。ま、まさか、あんなアホな募集に乗る人がいただなんて……!!」


 地味にショックがデカかったのか、額を押さえてふらりとよろめく月。

 何気に失礼な奴だが、ちょうどいい。


「ま、まあそういうことだから」


 月が呆然としている間にその脇を抜けて、訓練場を出る。


「ま、待ってください!」


 このまま振り切れれば、と思ったが、やはりそうは問屋が卸さなかった。

 信号待ちをしていた俺にあっさり追いつくと、逃がさないとばかりに駆け寄ってくる。


「こうなれば、もうなんでもいいです! 勝負とか抜きにして、私と……」

「ツゥキィィィィィイイイイ!!」


 月の言葉を遮るように遠くから響いた叫びに、俺たちは同時に振り返った。


「あ、やば」


 道を二つほど隔てた向こうに見える、月と同じ制服の少女二人の姿に、月の顔が強張る。


「見つけたわよ、月ぃぃ!!」


 おそらくさっきの声の主は、目を三角にして月をにらみつけている少女だろう。


 だが、それから隣にもう一人。

 叫ぶ少女の横にいる後輩らしい少女は、月の姿を認めると目を輝かせて手をぶんぶんと振って、


「あ、いた! かいちょー!!」


 なんだか聞き捨てならないことを口にした。


「かいちょー? ……会長!? って、まさか!」


 俺が驚いて月を見ると、彼女は悪びれる様子もなく「あ、バレちゃいました?」と舌を出す。


「もう、ひどいんですよ。学校で一番強いからってだけで生徒会長に立候補させられて、しかも『お飾りでいい』って言われてたのに、いざやってみると仕事しないと怒りだすし……」


 俺は思わず天を仰いだ。


 そりゃ、月が生徒会長だったら書記の友人はいるだろうし、よく分からない男を止めるために勝手に学校を飛び出したら止められもするだろう。

 というか……。


「お前、それでよく俺を非難出来たな。騙してたのはそっちの方じゃないか」

「もう、騙しただなんて人聞きの悪い。私は『自分が生徒会役員じゃない』なんて一言も言ってませんよ。ただ、『生徒会は全校生徒によって構成されている』って雑学を教えてあげただけじゃないですか」


「ちゃーんと学習指導要領にもそう書いてあるんですからね」となぜか自慢げにのたまう月。

 俺が思わず言葉に詰まると、弱みを見つけたとばかりに月の口が三日月型に吊り上がる。


「そ、も、そ、も! 『生徒会所属』って名乗って本当に一般生徒な訳がないと思いませんか? はー、まったく。あーんなに強いのに、そんなことも分からないなんてダメダメですねぇ。やーい、ざーこざーこ!」


 低レベルな煽りに俺が口をひくつかせていると、流石にやりすぎたと思ったのか、コホン、と咳払いをして月はその場から逃げ出そうとする。


「そ、それでは、名残り惜しいですけどこれで失礼しますね。パーティの件はまた後日改めて……」

「待て。逃がすと思ってるのか?」


 慌てて立ち去ろうとする月の手をつかむ。

 だが、それでも月は余裕の表情を崩さなかった。


「ふふ、いいんですか? こーんな人目のある場所で女の子を捕まえているのを見られたら、困るのはそちらだと思いますけど」


 確かに、普通ならそうかもしれない。

 だが、それに対する俺の返答は、一言だけだった。




「――〈氷神覚醒〉」




 俺のつぶやきを拾った月が、何が起こったか分からないとばかりに目をしばたたかせる。

 視線だけで疑問を訴えてくるが、俺の用事はもう済んだ。


「心配しなくても一時間くらいで溶けるようにはしてある。ま、一回くらいちゃんと絞られることだな」


 俺はあっさりと月から離れると、その場を歩き去る。

 そして……。


「え、ええと、とにかく私も逃げな……あ、あれ? 足が凍ってる!? ちょ、う、動けないんですけど! え? 今の一瞬で凍らせたんですか!? すごい! じゃなくて、ちょ、ちょっとほんとに歩けないどころか靴すら脱げないんですけど冗談ですよね!? ま、待って! 待ってください待ってください! え、まさか私一時間このままなんですか!? ちょ、調子乗ったのは謝りますからせめて――ぎにゃあああああ!!」


 後ろから聞こえてくる悲鳴をBGMに、俺は軽い足取りで家に帰ったのだった。

〈氷神覚醒〉は全てを解決する!!




明日は本筋に戻って、すごいです係さんとの冒険の模様をお届けする予定です

お楽しみに!

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成長率底辺のゲームキャラになった主人公が、裏技を使って英雄になっていく話です
主人公じゃない!

書籍二巻、コミック二巻ともに発売中!
二巻
― 新着の感想 ―
うぜえ女はうぜえです
[一言] つきさん「あ~、トイレ~!!?」
[一言] 勝手に1時間で溶けるがAランクがどうにもできないレベルの凍結硬度? かつおそらく動けないことに驚いてはいるが冷たいことに文句は言ってないので冷気による後遺症もなさそう 何をどう凍結させたん…
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