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16 神とおむつとガラガラと

「ところで、サティアはまだ10歳……くらいだよな? 1人でこんな場所に泊まってるなんて、親は心配しないのか?」

「……心配なんてしませんよ。私、できそこないですから」

 ふと気になって尋ねてみれば、サティアが顔を曇らせた。


「あと私、13歳です。10歳じゃありません!」

「あっ……悪い」


 頬を膨らませたサティアは、不満そうな顔だ。

 すぐに謝ったが、背も低いし全然13歳には見えなかった。

 幼く見えることを、本人はとても気にしているようだ。


「私、魔神カークスの神子を務める、魔法使いの家に生まれたんですけど魔法が使えなくて。《煉獄れんごくの狼》は素質がなくても、炎魔法を使えるようになるエレメントスキルだと聞いて……この街までやってきたんです」

「《煉獄の狼》があれば、魔法が使えるかも知れないって思ったわけか」


 サティアの声には力がなく、落胆を感じさせた。

 俺の言葉に「はい」と小さく答えて、そのまま俯いてしまう。


「悪い……俺が浄化したせいだな」

「お兄さんのせいじゃないです!! エレメントがほしかったのは私の都合ですし、助けてまでもらったんですよ!? そもそも私の腕前で、《煉獄の狼》を手に入れるというのが無謀だったのです!」


 謝れば、とんでもないとサティアが否定してくる。

 有用なエレメントは取っておくことも必要だなと、心に刻む。



「いいえ。たとえエレメントを手に入れたとしても、私に扱えたかはわからないですし。神子としての才能がないのもそうですが、エレメントには相性がありますから」

「真透球があれば、どんなエレメントでも使えるわけじゃないのか?」


 サティアのふとももには、真透球と呼ばれるアイテムがある。

 それにエレメントを入れれば、どんなものでも扱えるのだと思っていたが違うらしい。


「人に好き嫌いや相性があるように、エレメントにもあるんですよ。元々は生き物から生まれた願いですからね。真透球には、暴走をある程度抑える効果しかありません」


 へぇ、そうなのか。

 つまり折角とっておいたとしても、俺が使えないエレメントもあるってことだな。

 そのあたりは見極めて、いらないものは神様ポイントへ変換しているのがいいかもしれない。


「暗い話はここまでにしましょう。今日はジータさんも疲れているでしょうし」

「そうだな」


 サティアのいうとおり、疲れていたし眠かった。

 キラはというと、俺のベッドで既に寝ている。

 その横に潜りこんで、俺もすぐに眠りについた。



 ◆◇◆


 赤ちゃんの泣き声で目を覚ます。

 なんなんだ一体……映画でも付けっぱなしで寝たか? 


 部屋は暗く、まだ夜だ。

 泣き声の主は、俺の側でぎゃんぎゃんと泣き続けていた。


 そうか、俺……キラと旅に出たんだったな。

 少しだけ目が覚めて、キラのステータスを確認すれば、お腹が空いたらしい。

 こんな時間から店が開いているわけもなく、宿屋の主人にムリをいって、キラ専用の離乳食を作ってもらった。


 赤ちゃんって、お腹が空くの早いんだな。

 俺達と同じように1日3食っていうわけじゃないらしいと、離乳食を与えながら思う。

 その後も寝付けずにぐずるキラをあやし、また眠りについたのは早朝だった。


 ◆◇◆


 キラの泣き声が聞こえる。

 もう少し寝かせておいてほしいんだが。


 なんだか温くて気持ちいいしな……というか、寝不足なんだよ。

 頼むから寝かせてくれ……。


 そんなことを考えて、温かいものをたぐり寄せ、抱き枕のように抱きしめる。

 足を絡め、腕の中にぬくもりを閉じ込めれば、妙に落ち着いた。


 ん? 抱き枕? そんなものあったか……?

 ふと疑問に感じて、ゆっくりと目を開ける。

 鼻がくっつく距離に、女の子の顔があった。


「……んぅ。むにゃ……もう、食べられませんよぅ……ふふっ……」

 幸せそうに笑っている彼女は、あどけない寝顔。

 どうやら食べ物の夢を見ているようだ。


 誰だ、この子?

 あぁ……そうだサティアだ。


 なんで一緒に寝てるんだ? 

 隣のベッドで寝てたはずなのに……?

 


『ぽかぽか神の加護が寝ている間に発動しました。体温の低下が認められたため、守護対象を熱源体のベッドへ移動させました』

 眠気が飛んでいった頭でそんなことを思えば、ナビが答えてくれる。

 

 ぽかぽか神の加護って、そういうことか……。

 なんてはた迷惑な!

 サティアが寝てたからいいものの、起きたら驚かれるだろうが!!


 しかし、ナビに文句を言ってもしかたない。

 壁の時計を見れば、まだ9時だった。

 お昼までは寝ていたいところだ。


 しかし、赤ちゃんはこちらの都合を聞いてはくれない。

 なので、取りあえずおしめを換えて……と。


 というか何で俺は、こんなところにまで来て赤ちゃんのおしめを換えてるんだろうな?

 キラの世話をしていると、我に返る瞬間が何度かあった。

 昨日の夜、聞き飽きるほど聞いたファンファーレ。

 育児レベルがアップしましたというナビの声が、もはや嫌みにしか聞こえない。 


 キラのほうは泣き止んだし、風呂に入りたいな。

 仁太もクレフだった俺も風呂はわりと好きだったし、体をさっぱりさせたかった。

 宿屋の主人に聞けば、宿泊者無料の温泉が近くにあるとのことだ。


「おい、そろそろ起きろサティア。風呂、入るだろ?」

「ん……うぅ……」


 サティアを揺するが起きない。

 昨日は筋肉痛で大変そうだったし、もう少し寝かせておくか。


 けど、俺1人で温泉に行くのもなぁ。

 置き手紙をしようにも、サティアに俺の書いた文字が読めるのかっていう問題がある。



 そうだ、今のうちにキラへ神様ポイントを割り振ろう。

 成長させるのに、どれくらいポイントが必要なんだろうな。

 というか、どうやってポイントを割り振ればいいんだろう……。


 ウィンドウを開けば、神様の育て方という項目があることに気づいた。

 どうやらこれがヘルプのようだ。


『神様を育てるには、神様と一緒にすごすことが大切です。日々の生活の中で、神様の内面は育っていきます。しかしそれだけではダメです。成長を促すなら、神様アイテム購入画面で買える神ミルクを与える必要があります』


 神様ポイントで買える特別なミルクを与えることで、キラにポイントを与えることができるようだ。

 さっそく購入画面を開いてみる。



 ★神ミルク(微)

  効果:神様を少し成長させる。

  詳細:1袋、ほ乳瓶1杯分。

     作り方は人間のものと一緒。

  値段:1,000神様ポイント


 ★神ミルク(並)

  効果:神様を成長させる。

  値段:10,000神様ポイント


 ★神ミルク(特)

  効果:神様をかなり成長させる。

  値段:100,000神様ポイント


 ★紙おむつセット

  効果:使い捨てのおむつセット。

  詳細:袋の中に常に補充される。

     使用後は丸めて捨てるだけ。

     地面に埋めればそのまま肥料に。

  値段:50,000神様ポイント


 ★神おむつセット

  効果:つねにおしりを清潔に保つ

  詳細:繰り返し使える5枚組。

     神様の力でつねに清潔に。

     1日1度取り替えれば十分。

     水洗い対応。

  値段:100,000神様ポイント


 ★神ガラガラ

  効果:神様を寝かせる(赤子時のみ有効)

  詳細:夜泣きをしたときに大活躍。

  値段:30,000神様ポイント

     


 この前はじっくりと見る時間がなかったが、色んなものがあるんだな。

 神ミルク、かなり高いな。

 他の神グッズも、地味に欲しいものばかりだ……。


 神様の国にたどり着いた時点での残金は80,000神様ポイント。

 その後で《煉獄れんごくの狼》を浄化したから、30,000神様ポイントゲットしたんだよな。

 合わせて120,000神様ポイントだ。


 宿代の2,000神様ポイントを昨日の夜のうちに、サティアに払ったから、現在手持ちは108,000神様ポイントか。


 ちなみに、サティアに夕食代も払おうとしたんだが、そこはお礼ですからと受け取ってもらえなかった。

 


 うーん。おむつ換えるのが、思った以上に面倒なんだよな。

 ダジャレかと思いながらも、神おむつに心引かれるものがある。


 しかし値段がギリギリだ。

 成長すれば、すぐいらなくなるだろうし、悩む。

 夜泣きも大変だったし、ガラガラも欲しい。


 しかし、神様ポイントはこの世界での通貨でもあるし、使いすぎると後で困る。

 買うものは考えないと。


 悩みに悩んで。

 神のほうではなく、紙のおむつのセットを1つと神ミルク(微)を8つ買うことにした。

★2016/09/12 神ミルク(並)と(微)を間違えたので修正しました。指摘ありがとうございます。すみません!

 お金の計算をわかりやすく追加してみました。

★2016/09/15 キラの名前をミケと間違えていたので修正しました。パソコンのデータが飛んで、古いデータを使ったので、直し忘れていたようです。すみません。報告助かりました!

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