005 ボクの五臓六腑
篠崎マリが学校に来なくなって一週間経っていたが、誰も気にしている様子はない。
外は相変わらずの雨。
朝のホームルームの時間に担任が篠崎マリの空いた席を見つけても、特に何かを言う事もなく、穏やかな時間が過ぎていく。
俺がどういう事かとクラス委員長である下村に尋ねると、下村は旦那が知らないならば、私が知るわけ無いじゃないと遠い目をして呟くだけだった。
「中学の頃からだから、昨日今日始まった事でもないし、正気になったら来るでしょう」
なんだ、良くあることなのかと安心したが、篠崎マリの事で俺が安心しなければならないという事に気が付いて少し腹が立つ。
「神出鬼没よ。前の日に沖縄の首里城で撮った写真をフェイスブックに投稿したと思ったら、次の日には納沙布岬で自撮りした画像をラインに投稿したりしていたそうだったから。行動力は半端じゃじゃないわ」
「観光か!!」
「ラインとか、メールとか、奥さんのアドレスを知らないの?」
「誰が奥さんだ。そもそもそんなのをやり取りするまでもなく怒濤の日々だ。連絡の取りようがない」
その時だった。
教室の入り口が勢いよく開き、入ってきたのは噂をすればの篠崎マリだった。
「あ、嫁登場」
下村が興味なさそうな声で言った。
「アモーレ、見つかった!! アモーレのスマホが!!」
そう言ってスカートのポケットから取り出したのは、薄いピンク色で肌触りの良さそうな柔らかい感じで、いろいろとテレビに映る時はモザイク処理されそうな危険物だった。
「それスマホじゃないよっ!! オナホだよ!!」
二人でオナホプレイだと!?
嫌いじゃないぜ!!
実物を初めて見たわ
セクシャルハラスメント!!
ちっちゃなおなか?
ざわわ ざわわ ざわわ
天は我を見捨てたか!!
男性用生玩具をふりかざし、我こそ世界の覇者と言った感じで教室の中央に篠崎マリは立っている。
ざわめく教室の中、俺は行動を起こさねばならない。
なぜなら、あれは俺の所有物ではないと、俺の中の何かがそう叫んでいる。
「俺のじゃないし、スマホとオナホを掛けたかっただけだろう。この瞬間の為に一週間もネタを仕込んでいたのは評価出来なくもないが、それは俺のじゃないから!!」
「いやいや、斑目恭一郎(16)の自宅から押収してきたブツなんだが?」
「不法侵入かよ!!それでも俺のモノじゃないから!!」
「じゃ、篠崎も来た事だし、ホームルームは終わりだ」
担任はそう言うと、何事もなかったかのように教室を出て行く。
クラスのみんなも次の授業の用意を始めた。
「おや?あんまり、ウケなかったみただね。残念だよ」
「やっぱり、ウケ狙いか!! 俺のメンタル方がズタズタだよ」
ウケッと篠崎マリは邪悪な顔をして笑う。
「まぁまぁ、軽いジョークじゃないか。大人の玩具などと言うけれど、こんなモノは子供のオモチャみたいなものさ。キミは固めのキツ目の方が好きだったから、こんなプニプニのモノじゃ果てる事は出来ないだろう? ギチギチの未完成な肉壺でなければキミは満足するはずがない。そんな事は、たとえキミが忘れていたとしても、キミの全てを受け入れていたボクが一番知っているのだよ。何度も何度も摩擦を繰り返した幼い器は、赤く腫れ上がってしまう事も幾度とも無くあったのだけれども、ボクは君が望むならばと、痛みで涙を浮かべる事があっても我慢したのだよ」
「それはそれは俺はずいぶん鬼畜だね」
「キミのおこりん棒が激しくボクの五臓六腑を打ち付ける内に、ボクの中の女が目覚め、花開かせられる様になるまで、そう長くは掛からなかったのさ」
この作り話にいつまでつき合わなければならないのだろうか、と思い始め、俺はさっさと物語を進めるべく篠崎マリに聞いたのだ。
「ところでスマホは見つかったのか?」
「当たり前だろ。ボクを何だと思っているのだね?斎藤さんだよ?」
篠崎マリはそう言って、古ぼけたスマホをポケットから取り出したのだった。
「それを早く出せよ!!」




