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001 宇宙人(自称)のグーパンチ

 「ボクが宇宙人だと言ったらキミは信じるかな、一年B組 斑目恭一郎君? 略してキョン君でも良い」


 隣のクラスの篠崎マリは変わり者で有名だという話はクラスメイトから聞いた事はあったのだけど、初めて話しをする俺にいきなりそんな話を振ってくる意味がすでに理解不能だった。


 「文芸部の部室の片隅で、無口なメガネッ子がそう言ったら信じるかも知れないけれど、ボクッ子でポニーテールなキミは、どちらかと言えば団長タイプなんじゃないだろうか。あと、略さなくていいから」


 高校に入学して2ヶ月が経ち、親元を離れて親戚の家に居候しながら通うという不慣れな高校生活にもある程度なれた六月のある日。


 授業も終わって帰ろうかと席を立つと同時に、腕を取られて引きずられて行く姿を、クラスメイト達の生ぬるい目で見送られながら(リア充氏ねと言う呪詛も聞こえた)、連れて来られたのは体育館の裏であり、連れてきた首謀者はこの篠崎マリだった。


 「ところでなんの用かな? まるで見当が付かないのだが。もしかして俺はこれから怖い上級生達が出てきてシメられるのだろうか? それとも恋の告発というヤツか?」


 この高校の女子生徒の制服は、今どき珍しい生粋のセーラー服だった。

 

 すでに夏服に衣替えしていて、まだ見慣れない白い半袖シャツが眩しいのは、男子ならば当然の事であるし、まだ日に焼けていない白い肌を直視出来るほど見慣れていないのであった。


 「それを言うなら告白でしょ? だいたいなんでボクが訴えられなきゃいけないのかな? 訴えたいのはこっちの方さ!! 知らぬ仲でも無いというのに、高校に入学して2ヶ月も声をかけてくれないなんて。そりゃ、中二の時に転校してこっちに来たから、綺麗になったボクに気が付かない事もあるかも知れないけれど、それはそれで薄情って言う奴じゃないかね? 宇宙人もビックリだよ!!」


 篠崎マリはそう言ってぷりぷり怒りながら、俺のお腹にパンチを数発入れてきた。


 華奢で、俺より頭一つ小さな篠崎マリのパンチは、たいして痛くはない。


 お腹は。


 その代わりに、俺の胸がちくりと痛んだのだ。


 その時に俺はどんな顔をしていたのかは解らない。


 困っていたのか、怒っていたのか、悲しんでいたのか。


 だけど篠崎マリの顔を見ると、泣いていたのかも知れない。


 「あれっ? そんなに痛かった? ゴメン、ゴメンっ!! 力はそんなに入れて無かったはずなんだけれど、大丈夫?」


 慌てて俺のお腹をさすろうとする篠崎マリを押しとどめながら、俺はお腹が痛い訳じゃないと伝えた。


 「俺は中二の六月に事故にあって、それ以前の記憶が無いんだよ。だから、キミの事も覚えていないんだ」


 そう言うと、篠崎マリは泣きそうな顔をして、俺の左頬にグーパンチを叩き込んできたのである。

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