むこうじゃこっちのアニメ見られないからね~
さて。
モカさんとマロンちゃんも無事に仲直りできたことだし、めでたしめでたしということでいいかな?
そう思っていたら、やはりユウキに話を戻される。
「で、ふたりはどういう関係?」
「え~っと……」
うまく脱線してくれたのになぁ……。
まぁ、別に私たちの関係にやましいことなんてないし?
ここは正直に話そうか。
「モカさんは私の嫁です」
「は?」
「やだ、かなでさんたらっ♪」
モカさんが照れながら私を小突く。
その瞬間、私の体にすごい衝撃が加わり、地面に叩きつけられた。
「あら?」
痛い。
なんという力だ。
「お姉ちゃん、身体強化魔法かけてるんじゃない?」
「そうだったわ」
さっきの時か。
すさまじい蹴りだったよ、あれは。
私が立ち上がりいすの上に戻ってくると、マロンちゃんが話しかけてくる。
「お姉ちゃんは身体強化が得意なんだよ」
「そうなんだ……」
転移魔法しか使ったとこ見たことなかったけど。
確かに優秀そうだもんね。
「そ、それで嫁ってどういうこと?」
ユウキが目を泳がせながら聞いてくる。
おやおや、動揺してるのかな。
その様子をみて、モカさんがニヤッと笑う。
「こういうことよ?」
そう言って私の腕に抱きつく。
「ぎゃー! 折れる折れる折れる~!!」
「あら、ごめんなさい、魔法を解くの忘れてたわ」
身体強化魔法の力、恐るべし。
「……」
あ、ユウキが放心状態になってる。
「そういえばお姉ちゃんは何でこっちに来たの?」
マロンちゃんがモカさんに話しかける。
「かなでさんを迎えに来たつもりだったんだけど……」
「あんな早くに?」
「まぁ、他にもいろいろあって……」
そのいろいろが気になるんだけど……。
「かなでさん、私、先に戻ってるわね」
「あ、はい」
モカさんが急に立ち上がる。
なんか考えを変えたような感じなんだけど。
「マロンもたまには戻ってきなさい」
「そう……だね」
マロンちゃんが少し元気のない返事をした。
戻りたくないのかな?
あんないい場所なのに。
「じゃあね」
モカさんは転移魔法でさっと姿を消してしまった。
「やっぱり私の魔法は不意打ちくらいじゃないと効かないか」
「でもカードなしで魔法使ったよね? すごいことなんじゃ」
「私が使えるのはこの魔法だけだよ」
どうやら他の魔法はカードを使わないといけないらしい。
あれ、そういえば前にいろはちゃんが私に治癒魔法みたいなの使ってたような……。
魔法って私が思ってるだけかもしれないけど。
さっきから一言もしゃべってないいろはちゃんの方を見る。
「……」
あれ?
寝てる?
ごめんね、朝早かったよね……。
時計を見るとまだ4時を回ったところだった。
みんな元気だね……。
「あ、ユウキ~、大丈夫~?」
「……」
「ユウキ~」
返事がない。
何かにショックを受けているようだ。
それならマロンちゃんとお話ししてようかな。
「マロンちゃん、むこうの世界に戻りたくないの?」
「え? なんで?」
「さっき戻ってきなさいって言われたときに……」
「ああ、それは」
マロンちゃんはムフンとした顔になって言った。
「むこうじゃこっちのアニメ見られないからね~」
「そこなの!?」
家庭事情とかあるかもって心配したのに……。
「今度一緒にむこうの世界に行こうよ」
「う~ん、まぁ録画でもいっか」
「え、リアルタイムで見てるの?」
嘘でしょ。
マロンちゃん、そんな時間に起きてるの?
「すっごくお気に入りのアニメだけね」
「そうなんだ……」
今まで気づかなかった。
「あとね、遠いんだよね~」
「モカさんは転移魔法だもんね」
「そう、天空の島でもあればね~」
え?
「私、今日天空の島もらうよ」
「嘘!? 本当に?」
「うん」
いや~、まさかこんなに早く役に立つ日がくるなんて……。
これは運命か。
「マロンちゃん、私の島でドライブしな~い?」
「した~い!」
あれ、引かれない……。
それどころか、目を輝かせながら身を乗り出してくる。
「それじゃあ今度都合のいい日に行っちゃう?」
「うん!」
かわいい!
よっし、天空の島をもらういい理由もできたし、なんかいい風吹いてきたんじゃない?




