私、すごく傷ついたの
「ん……」
朝か。
といっても、だいぶ早い時間だけど。
まぁいっか。
最近たまり気味だったゲームのストーリーでも進めておこうかな。
そう思ってタブレットを取ろうとしたら、布団が膨らんでいることに気づく。
しかもふたつ。
ということは、チョコとバニラかな。
「お~い、勝手にもぐっちゃダメだよ~、いたずらしちゃうぞ~」
そして、勢いよく布団をはがす。
「すやすや……」
「な!? もももも」
モカさん!?
なぜここに?
とりあえず罰として胸をもんで起こすことにしよう。
ふにふに。
「んん……」
「モカさ~ん、起きましたか~?」
「すやすや……」
ダメか……。
もっと強くもまないとか……。
ふにふに。
「すやすや……」
なんだと……?
ユウキならこれで起きるのに……。
こうなったら直にもむしかないな、うん。
というわけで、脱がします。
私はモカさんのローブのボタンに手をかける。
その瞬間にモカさんの目が開いた。
「……」
「……?」
「おはようございます」
私はモカさんにあいさつをすると、胸前のボタンをはずし、手を突っ込んだ。
「キャー!!」
強烈な蹴りが股に入り、さらにビンタで布団に叩きつけられる。
なんという力の強さ。
これがモカさんか。
今のですさまじい音が家中に鳴り響く。
そのせいで朝早い時間だというのに誰かが走ってくるのが聞こえる。
「かなで! 今、すごい音が!」
「なっ」
かけつけてくれたのはマロンちゃん。
そしてそれは念願のモカさんとの再会だった。
「お姉ちゃん?」
「マ、マロン……」
さっと顔を隠すモカさん。
そのあと少し慌てた様子になった。
「あれ、転移魔法が使えない?」
「それが私の魔法だから」
「はぁ……」
モカさんはあきらめたようにため息をつく。
そのとき、ユウキといろはちゃんが部屋に入ってきた。
「お~い、今なんか大砲みたいな音がしたぞ?」
「大丈夫ですか?」
意外と落ち着いた様子で入ってきたふたり。
しかし部屋の中をみて、急に慌てだす。
「なんだこの状況は!?」
チョコとバニラが私の布団で横たわる。
そして胸前がはだけてペタン座りしているモカさん。
それから床に転がる私。
「かなで 話を聞かせてもらうよ」
「はい……」
さすがに今回のは私にも原因があるので言い訳しません。
緊急でリビングに集まった私たち。
チョコとバニラはそのまま寝かせておいたけど。
私とモカさんが隣同士で座り、机をはさんで反対側に残りの三人が座る。
「で? かなで、その方は?」
いきなりユウキから質問。
ここは私が紹介するとしましょう。
「えっと、こちらはモカさんといいまして、マロンちゃんのお姉さんです」
「「え?」」
ユウキといろはちゃんが同時に反応し、マロンちゃんの方を振りむく。
「そうなんだよ、私のお姉ちゃん、ずっと避けられてたみたいだけど……」
「それは……」
さみしそうに言うマロンちゃんに、モカさんは目をそらしながら答えた。
「それはマロンが、私が赤い目に覚醒したとき怖がったから……」
「え? それが原因だったの?」
「うん……」
赤い目に覚醒?
なんかかっこいい!
ということは、あとから赤くなったってことか。
「お姉ちゃん、私のためを思って避けてたんだ……」
マロンちゃんが少しうれしそうに言葉を漏らす。
しかし、逆にモカさんはトーンダウンしていく。
「私、すごく傷ついたの」
「ごめんなさい、お姉ちゃん」
「私、すごく傷ついたの」
「う、うん、ごめんなさい」
「私、すごく傷ついたの……」
「う、うわ~ん、ごめんなさい~!」
ついに泣き出してしまったマロンちゃん。
それを見てモカさんは私の方に顔をむけてニヤリと笑った。
モカさんもそんな顔するんだなぁ。
やっぱり姉妹だからかな?
モカさんの新しくてかわいい一面を見ることができた。
それがとてもうれしかった。




