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Aurum Online [Shooter]  作者: 亜空間会話(以下略)
第三章 Weiswald
42/120

#042 Vorabend

 ちょっとテコ入れ(やる必要ない)。バーチャルの表現規制がもはや終わってる、というかリアル側にかなり寄せているため規制を取っ払えば見えてしまうという円盤のようなことになっています。エログロどっちもな! ダメージングゾーンはお光様のような立場でしょうか。


 さてと、どこまで暗くしようか。


 どうぞ。

「次に表彰伝達に移ります。名前を呼ばれた生徒は起立してください」


 そう酒田教頭が口にした瞬間に俺はびくっと震えてしまった。後ろの鵜飼がいつもより甘さ三割増で「どうしたの、大丈夫?」と言ってきたが「なんでもねえ、大丈夫だよ」と素晴らしく適当なごまかし方をした。


 次々にテニスやら吹奏楽やらで呼ばれて行く中、中でも奇妙なものが現れた。


「アウルムオンライン、プレイヤートーナメント三位、伊吹俊御」

「はい」


 ざわざわとざわめく人の声を聞かないようにして、俺は突っ立ったまま賞状なりが手渡されるのを待つ。


 所詮はお嬢様とお坊ちゃまが大量に集まっているだけなので、何とかオンラインとかいう聞き覚えのないものが現れたら騒いでしまうのだろう。騒いでいない一派もあるのだがそういう派閥は人数が少ない。当然セントラルである加々美は事情を知っているが、説明しないように俺から言ってあるので大丈夫だろう。


「表彰状、伊吹俊御殿。貴方はプレイヤートーナメントにおいて非常に優秀な成績を修められました。かつ違反ユーザーを初めて追放されました功績をここに讃え称します」


 右手を伸ばして表彰状をつかみ左手を添えてそれを折れない程度に曲げ両手をもとの場所に戻してから礼をして席に戻り少しばかり息をついてから周りの質問にできる限り的確に答えてから俺は暗澹たる気持ちに囚われた。


「ねえ、ほんとどうしたのよ」

「なんでもねーんだよ…… 言って理解できるようならもう説明してるぜ」


 事前の紆余曲折は除くにしても、話はアウルムオンライン開始当日から始まる。


 RPGで誰もが行うことであろうモンスターを倒してのレベル上げに臨もうとした俺とミサはフィールドで珍しそうなモンスターを見つけた。プラチナ・ターマイト、かなりレアな金属を落とす白蟻のモンスターだ。


 ところがそれは巧妙に仕組まれた罠で、初心者やラッキーだと思って近付いたプレイヤーを殺すためのエサだった。用意したのはプレイヤーキラー・カウンシルの「J」で、運よく見逃された(もう一人いたやつは殺された)俺たちとあいつの間に妙な縁が生まれることになる。


 何度か取り引きやらをした間柄だったJは「プレイヤーキラー・トーナメント」をやってみないかと俺を勧誘した。その目的が何なのかは未だにわからないが、ろくなことじゃないのは確かだ。


 ともあれ三位にまで勝ち残り、前々から父さんに頼まれていた「違反ユーザーの追放」も果たすことができて、一石二鳥とも言っていい状態になった――


 いい面だけを述べればそうなる。


 PKに人を殺すためのアイテムを渡してしまい、そして人殺しの祭典に呼ばれた。もちろん勝ち上がるために必要な全員を殺し、どうにか暗黒に堕ちていたミサを救い出して帰ってきたかと思われたが、本当にミサが帰ってきたのか、それは分からない。


 教室に戻り、事情を聞いていたのだろう先生から祝福の言葉を受け取って俺は一日を過ごすことにした。今日はたぶん掃除だけだしホームルームでも俺の事情をそこまで詳細に話すわけにはいかなかったのか、うだうだと長い話を聞かされずに済んだのはありがたいことだ。


 というわけで帰る時間になった。


 まあ、このクラスにも「○○社の社長令嬢」やら「○○に強い影響を持つ人物の息子」くらいならあふれかえっている。そういうやつらの話を聞いていても大して面白くないので俺は雑談には加わらないまま帰ろうとした。


「表彰おめでとう平民君。今回ばかりは祝わざるを得ないな、この僕でも」

「あんまり嬉しくねえな、なんとなくありがとう」


 はっは喜んでいるじゃないかとセントラル…… いや加々美が笑う。このクラスのやつらもいちおう加々美の家の影響力、つまり家電全体における加々美グループのシェアは知っているので、ゲーム関連でも同じようなことだと思っているのだ。


 関係者のお墨付き、ということだ。ゲーム機を作る方からしてもありがたいことをしたのだと、無形の知らせ方をする。軽く見られていた立場が変わるのかどうか、そう言うことは置いておいても「たかがゲームではない」ということを知らせてくれたのだ。


「四位だったのにな」


「そうだが、しかし業績が違うのだろうね。またいつか共に戦おうじゃないか。セールスに来たのは君の父だよ。素晴らしいセールスマンだ」


「父さんが? そんなにか」


「成績は上から三番さ。最初のお客を獲得したのは伊吹聡士、君の父上だろう? まさか発売元にまで売り込みに来るとは思わなかったが」


 おい笑えねえよ。それ多分間違ってきたんだろ。


「何はともあれ、お祝いをしてくれる仲間などいないのだろう? どこかでミサくんと祝うというのはどうかな」


「悪くねえけど…… 俺はアルバイトあるしなあ」


「あっちで、だ。誰もが忙しいのは承知しているさ、こちらの紹介した店など落ち着けやしないだろう」


 普通のファミレスくらいしか行ったことないし、こちらの紹介した店ってのは一生に一回お目にかかるかどうかという店のことだろう。


「まあ、またあちらで会おう」

「おう、またな」


 雑談を終えたら周りの人もぽつぽつと帰り始めていた。


「やっほーお兄ちゃん」

「なんで来たんだよ……」


「今日は友達みんなでカラオケに行っちゃうんだって。今日はたまたまお金持ってないから、断ってきたの。だいじょぶだよ」


 悪いけど大丈夫には思えない。女子の席立った瞬間悪口言い始める感は異常。


「お兄ちゃんの心配してることは分かるけど、別にそんなに仲悪い人ばっかり寄せ集めのグループじゃないから。というかそれならつるまないよ」


 まあ、そうなんだけど。


 仲良くないわけじゃない、でも欠点を盲目的に見ないようにすることまではできない。そんな手合いなんていくらでもいるだろう。俺だってそうだ。美沙が俺の部屋で下着姿で寝ころんでごろごろしていたら間違いなく部屋に戻って着替えろよばかと言う自信がある。何なら母さんに言って美沙を説得してもらうことだってあるかもしれないな。


 そういうのはごく当たり前のことだと思うが、それの影響がとても大きくてすばらしく簡単に離反するのが女の子なのだろう。


 まあ、そういうことを考えている間に歩き出していた俺たちが普通に家に帰り着いたことは言うまでもない。美沙を玄関前まで送ってからカフェーローズに行き、アルバイトを始める。そしてその日は二時間だけのシフトをこなして家に帰った俺は、リビングに待ち構えるかのように座っていた父さんが「トシ、ゲームのことなんだが」と言ったのを聞いていい加減にしてくれよと言いたくなった。


「どうしたの、父さん」


「いや、違反ユーザーの件でな。テロリストにきな臭い動きがあるからゲームを利用するのかもしれんということだそうだ。まさかそんな、とは思うが警戒しておいてくれ」


「ゲームの中じゃそこそこ強いけど、ゲームの中からテロに対抗するのは無理だよ」


 できたらすごい。ゲームの目的が、まさか現実にあの力を根付かせるためだとでもいうのなら俺は投げナイフなり買って真剣に修行でもしておこう。そんなことがあり得ない以上俺は別にスローイングナイフを買うなんてばからしいことはしないし、ましてや会心の一撃なんてものが出るわけがないのだ。


 ふんっと気合を入れれば鉄が変形し出すわけでもなければヒールと一言つぶやいただけで交通事故で瀕死の人が救えるわけでもない。


「利用するってのはそういうことじゃないぞ。ゲームの中からじゃなくてプレイヤーに何かしようって魂胆だろう。ログアウト不能になったりショックを与えたり、テロリストがやりそうなことだ。お前個人が止めるにも限度があるだろうが……」


 そりゃそうだ。というか中学生がテロを止めるって、むちゃくちゃすぎるだろう。そんなエキセントリックなストーリーがどこにあるんだ。


「頑張ってみるけど、さすがに無理じゃないかな……」

「正直俺もそう思うが、頼むぞ」


 生返事をした俺の心境はやっぱり、無理だよなあと言う方向に傾いていた。






 美沙がグラビアアイドルと見紛うような格好で俺のベッドの上に寝転びながら読書しているのでちょっとだけ見た後「何の撮影だよ」と突っ込んでから背中のなまめかしい素肌にチョップした。


「そそらない?」

「そそられたら問題だろ。戻れ」


 実際のところ美沙の体はもう女性として完成してきていると思うし、ほとんど肌をさらした今のかっこうでも、どこにも欠点が見当たらない。別段いやな臭いがするでもなくどこか乱れたところがあるでもないし、あえて言うなら悪いのは兄を誘惑しようとしていることくらいだろう。


「みんな褒めてくれるのに、お兄ちゃんは何で動じないの?」

「雑誌見りゃグラドルいんだろ。俺が女の子に求めるのはそういうのじゃない」


「……これじゃ、だめ?」


「そうじゃないよ。すごいかわいいけどさ、一緒にいられる時間とか、そういうのを大事にする方なんだよ俺は。正直言うと画像コレクションに加えておきたいくらいだけど、だめだろ? とりあえず服着ろよ、そのままでもいいけど」


 カスタードだったかミルフィーユだったか、そのあたりの名前の生地だったか。ふわっとした、わざとしわを作ったクリーム色の下着に身を包んでいる。控えめに言ってかわいい。控えめに言わないと一声で百人くらい死にそうなくらいかわいい。妖艶だ。


 パンツなんかただの布だぜなんて言えるわけがない。有り体に言ってしまえば俺は落とされる寸前であり、理性が狼に吹かれているレベルでなびいている。だが、まだ抗えるのだから理性に従わなければならない。


「写真五兆枚くらい撮って保存しときたいけど、思い出にこれが混じってたら確実に逮捕されるだろ。お腹とんとんして寝かせてやるから、ほら」


「うん、服着る」


 さすがに五兆枚にどん引いてくれたか美沙は真っ赤になりながら置いてあったミニスカートに足を通しブラウスを着た。見せつけるようにボタン止めるのやめろ。


 いやしかし、妹なんて可愛くないと言ってるやつは自分と同じ遺伝子を持つ女性が自分と似た容姿になったことを嘆くといい。妹はかわいい、そういうものだ。そもそも一度も妹にセクハラしないやつなんているのか? 自分の心に聞いてみれば分かるはずだ。妹はとてもかわい


「どうしたの?」

「あ、いやなんでもねえ。妹はかわいいなと思ってたところだ」


 あ、言っちまった。これは言うとまずいやつだ――


 という推測を裏切らず美沙はむふーと妙な笑い方をすると俺のふとんを抱き枕か何かのように抱え込んでゴロゴロし出した。にゃんこ動画に似てるな。


「美沙は好きな人とかいねえのかよ」

「お兄ちゃん?」


「それ以外」

「それじゃなくてお兄ちゃん」


 だめだもうどうしようもない。


「お兄ちゃんは?」

「あ? あー、そうだな」


 美沙はかわいいが、戸籍上ちょっとややこしい手続きを経ないと結婚できない。とはいえ男か女か今のところよく分からないリセイに走ってしまうのは責任の放棄ではないだろうか。というかゲームから現実の付き合いに移る気もない。


「特に誰もいないな」

「え? けっこうきれいな人多いよね?」


「いや、作れるきれいさに興味ないから」

「そんなこと言ってたら誰も来てくれないよ」


 いやいや、現実ってやつを見てほしい。


 文句なしの美人がどれだけいる? 化粧なんてものが大流行しなさっているおかげでこちらがどれだけ混乱しているか、分かってほしい。化粧を落としたら化け物だったなんてのはいくらでも聞く話だしすっぴんで外出する人はいないなんて聞いたら人間不信になってしまいそうだ。


 イデアがない以上は本人たちの基準で美しさを判断するしかないし、そもそも俺たちくらいの年代で好きだ嫌いだ言ってても説得力のかけらもない。もうそろそろ大人になってもいい頃だと思いはするが、ぜんぜん大人になってはいないのだ。


「男だし、どっちかっつうと選ばれる方だろ」

「それじゃ素直に選ばれてよお兄ちゃん」


「いや、だからアウトなんだって……」


 AUTOってくらいアウト。


「ツタンカーメンだってお姉ちゃんと結婚したらしいし」

「関係ねえだろ……」


 そういえば、と俺は本題を切り出した。これが話したかったのだが美沙はまぜっかえすわ誘惑するわでめちゃくちゃだったのだ。


「そういえば次の街に向かおうとしたやつらが負けたらしいけど」

「そうなんだよね…… 私もそれ言おうと思ってたんだけど」


 服を脱いだ時点で忘れたらしい。そもそもなんで脱いだ。


「悩殺しようとしたんだけど引っかからなくて…… あ、ごめんそうじゃなくて」


 理不尽なほどに強いモンスターが大量に出現する。それは無茶をすれば切り抜けられるようなものではなくて、絶対に無理なのだそうだ。


「攻撃力も防御力もダンジョンボスより五倍くらい上って言ったら分かる? とりあえず一撃しのげる人すらいなくて。通常モンスターらしいのもフィールドボスくらい強くて、それを一体倒すのも数が多すぎて無理だったんだって。おまけに木の隙間で戦ってるから攻撃も魔法も避けにくくて、すぐに全滅したらしいよ」


 ふーん、そういうものなのか。


「そういやJたちも壊滅したって言ってたな」

「え、ほんとに? だとしたら筋金入りでクリア不可能だよ」


 美沙の話によるとまずオーシャンズが挫折、そして新興ギルド「プログレス」や「変態紳士の会」が壊滅したらしい。変態紳士の会ってなんだよ。


「あ、変態紳士の会って言うのは裸に近いかっこうでどれだけ攻略できるか試す集団なんだけどね。女の人もけっこういるみたい」


「見たことあるかもしれねーな……」


 ふんどし一丁のやつとかビキニアーマーのやつとか。


「あれは論外として、プログレスってそれなりに強そうに聞こえるぞ?」

「そうなんだよね……。どうする、行ってみる?」


 行くってまさか。


「うん、フィールドダンジョンの「ヴァイスヴァルト」だよ」

「そうだな、行くか」

 今回グーグル先生に翻訳をお願いしたのは「前夜祭」。もちろん不幸の前夜祭ですよ。なろう読者はストレス展開に弱いともっぱらの評判ですので、ストレス展開を増やせば読者数が減るってことですね(狂気


 フィクションという嘘物語を見慣れた人にとってはおかしくないことというのは例えば人間の体型のようなものですぐに分かります。あと描写不足。これに関してはあまりひとさまを突っ込めるものではないんですが、見りゃ分かる。シャーロックホームズというただの知識チートがあれだけもてはやされているのは、やっぱりホームズ言うところの「無用な」描写が効いてるからでしょうね。


 考えるのが無理になってきたのでしばらくいろいろお休みです。

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