#039 Extreame-pure Darkness
白いキャラで闇を思い出させるのは「仮面ライダークウガ」に登場した「ン・ダグバ・ゼバ」ですかね。戦闘能力が低い「グロンギ族」の怪人たちや、いわゆる現実世界の一般市民である「リント」を三万ほど殺害するというスケールがぶっ壊れた怪人です。なお対抗する「黒いクウガ」はキック力100トン、人間サイズでは歴代最強。
白いミサは現実の殺人鬼にはならない…… と思いたい。
どうぞ。
確実に攻撃力が上がっていることを実感しながらも、やはり剣士人形は強敵だった。恐ろしくなるほどのスピードで薄い緑の剣が特技のエフェクトに包まれながら虚空を粉砕する。避けていなければこっちが死んでいた。
とはいえ、こちらの攻撃を回避するのはあちらには無理らしい。盾による防御も間に合わず、こちらの〈スロウ〉が何度も敵を痛打していた。
とはいえザラルダイトのボーラがかなり傷んでいるし、金のボーラを作り直す時間はもうない。打撃系投げ武器といえば使いやすさも考えてボーラなのだが、いい加減にスリングショットも作るべきだろうか。レンガも投げて投げられないものではないし、決して威力の低いものではないのだが、納品するときボロボロでは申し訳が立たない。
無限投げナイフはとっくの昔に売り払ってしまったが、残っていればまた話は違ったのかもしれない。いくら投げても耐久値が損耗しないあれならば、いざというときの切り札として役に立つものだったはずだ。そもそものダメージが低いということを考えなければクリティカル連発するだけして壊れない武器はありがたい。
「剣を止められればな……」
当たったら一撃で斬られそうな気しかしない。とはいえ投げてノックバックで止めるってのもかなり難しい。タイミングがシビアなだけじゃなくて、ダメージの蓄積がないとスタンさせることはできないのだ。
ゴーレムが剣技を炸裂させるたびに戦々恐々だが、どうにか〈スピードアップ〉の効果が肉体にも精神にも反映しているおかげで解析スキルなしで回避できる。たまに受けてしまう分は〈ディフェンス〉でかなり軽減されていて、投げたボーラや石ころのダメージは打撃武器の威力を上げる投げ武器スキルの特技〈インパルスシュート〉や〈アイアン・マッシャー〉で底上げしている。
さらに攻撃力をアップさせる〈ショックアップ〉でダメージが上がっていた。
『ジュウ……』
肩の飾りパーツはぐちゃぐちゃにへこんで、もう原型をとどめていない。しかし剣には刃こぼれなどひとつもなく、盾もまたあまり有効活用されていないとはいえガラスのコップのように艶めいた輝きを保っていた。
構えを取ったゴーレムの手に持つ剣が、桃色の輝きを放つ。
『ジャッッ!!』
横の斬り払いから斜めの切り上げにつなげ斬り下ろし、そこから逆の横斬り払い、ぎゅっと戻して開放するような突き。ゴーレムが五連撃を操るというふざけた事態にもきっちりと頭は着いて行って、少しずつ残された隙間に体を割り込ませて残った投げ武器を全部何もかも投げて投げて投げまくる。
恐ろしい数のクリティカルヒットが、ゴーレムの腕を千切った。
あまりにも痛みが大きかったのか、ゴーレムは倒れ込み、俺はそこにとどめを刺そうとした。ところがあわれっぽくこちらを見ているゴーレムは、どうやらとどめを刺される気と言うものがないらしい。
「悪いな」
『ジュウ……』
すっ! とびっくりマークをつけないとおかしいような勢いで立ち上がったゴーレムに俺は投げナイフを構えたが、どうやら俺もゴーレムももう戦えない。
アリアルの投げナイフの残り投げ回数は1だった。
それ以外は全部、砕屑に変わっている。
「引き分けってか?」
『ジャッ』
盾を構えてはいるのだが、見たところ形だけのおふざけだ。これから戦おうとか命のやり取りをしようというそれではなくて、やる? やらない? という間違った意思表示のように見える。
クエストの表示が出た。
「隠れ里への招待……?」
隠れ里とはなんだろう。
クエスト内容の説明を読むと「幻に揺られたゴーレムに友情が芽生えた! この機会を逃さず、幻の街へ向かおう」と書いてある。
「幻の街って…… 次の街のことか」
『ジィ』
ちぎれた腕を持ち上げて、治癒魔法で直した瞬間それが俺をぶっ飛ばす…… なんて裏切りに殺されるわけでもなく、ゴーレムはおとなしく治療されている。俺の方は何とか危機的な傷はなかったので、普通の治癒魔法の特技で治せた。とくに危険な状態異常にかかっているわけでもなく、お互いにHPを減らし合っただけだ。
「クエストはいいけど、戦いはもう無理だぞ。武器がないんだ」
『ジュオウ……』
言っていることを理解しているとは思うが、やな予感しかしない。
『ジュグ』
ぼかっ、と音がしたのは気のせいではない。足元の地面に穴が開いて、階段のようなものが現れたのだ。奥には紫色のどろどろしてざざっとノイズのように揺れる気持ちの悪いものが見えている。
「あ? え、これが街の入り口か?」
うんうん、という感じに縦にうなずいている。
嫌だなあとは思いつつ、いちおうクエストの情報と解析スキルを照らし合わせてみても入り口はこれだ。しぶしぶながらゴーレムの案内に従って階段に入る。
入った途端に毒の状態異常に侵されてしまったが、なんとか自分より適正レベルが低い毒を一定時間だけ無効化することができる〈アンチ・ポイズン〉で直した。別にゴーレムが俺に対して嫌がらせをしようとしているようには見えないのだが、毒をそのまま吸いながら移動したらダメージがヤバいことになりそうだ。
ずっとこのままここで〈アンチ・ポイズン〉で支援魔法のレベル上げができちゃうかもしれないな、なんてバカなことを考えたタイミングでジュウジュウとゴーレムが何かを言った。とは言ってもぜんぜん意味が分からない。
「なんだよ」
『ジュウ』
いや分からないってば。
そう突っ込もうとしたが、どうやら「そこで止まれ」と言っているらしいことを、目の前を通り過ぎようとした巨大すぎる何かから察した。
デルク・キューブ
ジュエル:フォートレス/キューブ種 推奨人数:30人~
デルク・クリスタルでできた浮遊型ジュエル。
解析したのがばれたのかデルク・キューブはこちらをぎろりとにらんだが、近くにソードマンゴーレムがいるのが原因なんだろうか攻撃をしかけてこなかった。というか威圧感だけのわりと弱い敵なのかもしれない。
そう思っているとゴーレムは再び歩き出した。交通ルールでもあるのか。
そしてまた止まる。
レニオル・スーパークラスター
ジュエル:ヒュージフォートレス種 推奨人数:100人~
レニオルメタルの摩訶不思議な性能をすべて活かした、超巨大浮遊型ジュエル。無限に供給される魔力を使い、光魔法を自由自在に操る。
ヒュオン、という音で超巨大な真紅の結晶体が不可解な形に伸びてこちらを向く。よく見ると赤いだけではなくて内側には青色も紫色も含んでいる。
『ジュウ』
『人間を連れて来たのか……。もうちょっと滞在してたかったんだけど?』
『ジュ……』
『うそうそ冗談。名もなき者をここにも連れてきたら大問題じゃん。ねえ、そこの君』
このでたらめにでかい赤から青に移り変わる不思議な色をした結晶は軽い調子の青年のようなおしゃべりをした。まともな受け答えができそうだ。
「ここはどこなんだ?」
『うわ、いきなりタメで話しちゃう感じ? 君友達いる?』
「いやそれは…… どうでもいいだろ」
『じょーだん冗談。ここはファリアー、君たちの言葉でいう地下の街だよ』
地下の都市。
『あー、やっぱし知らないんだ。ま、人間以外が作った街だし仕方ないかもだけどね』
「この世界に人間以外の種族が……?」
『え、まさか亜人すら知らない? あり得ないよね?』
「知ってるって! 亜人が街を作るってどういうことだよ」
こりゃ重症だねーと冗談めかして言いながら、アニメでよく見るホログラムのようなものが投影される。それは長身の青年だった。
『ま、ゴブリンはぶっちゃけ例外かな。頭ヨワイし体格もちっちゃいし、弱小種族のくせに繁殖力だけある下半身バカ。分かる?』
「よくそんだけバカにできるな……」
『え、だってバカじゃん。リザードマンもちょっと無理かなー。かなり人間に近い体格してるんだけど、やっぱ頭がね、ちょっとアレ。そんで文化がねー。野蛮』
なんていやみなやつなんだ。
『ほかに思いつくものといえば、やっぱね。これ。滅びた種族』
「滅びた?」
『あー、うん。あんまり言いたかないんだけどね……。人間と同じ姿をしていながら、人間とは違ってあらゆるスキルを使えない。そんな種族がいたんだよね。ところがまあ、人間ってさ、分かるよね? 恩を売りたがるんだよね』
「ああ、そうかもな……」
クエストはそういうものの代表かもしれない。
『ミオンは見た目だけはきれいで、でも無能。だから美しさを愛でる奴隷みたいなものとして飼ったわけ。暮らしの世話を全部してあげられる、ちょー複雑な着せ替え人形。わかる? 男も女も、人間なしじゃ暮らせなかったからさ。仕方なかった』
「ひどすぎんだろ……」
『そんなわけでさ、あらゆるスキルを意思だけで使いこなせた人間にミオンは入り込んだ。そして汚染した。人間ってすっっっごいバカだよね。混じり合えばどうなるかなんてさ、考えたら分かりそうなもんだよ』
あまりにも恐ろしい話だ。
『いまの人間がわざわざ修行しないとスキルを使えないのは、ミオンの血が混じってるからだよ。まああとはお察しの通り。ちょっとした襲撃があるだけで純粋ミオンはばったばった死んでいくし、国を挙げてのミオン狩りなんてものがなくても病気に弱いミオンが彼らだけで生きていけるわけないからねー。純粋ミオンは見つかって数年で滅びた。あれっと思ったよね? それまでどうやって生きていたのか? その答えがこれ』
「ゴーレムを作ってたのか?」
『ちがうってば、僕らは他の何かの遺産。もしくは天然。ゴーレムなんて無粋なもの、最初はいなかったんだよ。僕らが作った。呪文も使えるゴーレムなんて苦労したなー。体を削ってまで作るものなんて久々だからさ、 ……あ、そうそう。いちおう人間ってこの街じゃ憎まれてる。あんまり移動しない方がいいと思うよ』
そうそう、とホログラムは付け加えた。
『君になら言っても大丈夫かな? じつはミオンは滅びていない。というより、復活したんだけどね。この街にはミオンの生き残りがいる。……決して近付いてはいけない』
そう言われるとそういうクエストみたいに感じるけどなあ。
いつの間にかゴーレムはいなくなっていて、案内もなしに俺はファリアーをうろつくことになってしまった。解析スキルで呼び出せるマップはこれまでに見たことのある場所だけだし、どうやら正式に入ったことにはなっていないようでマップが表示されない。
ミオンはたぶんきれいな人のように見えるのだろう。まったく近寄らないというのはかなり難しいだろうから、極力近寄らないように、見つかったら逃げるくらいの考えで行けば大丈夫だと思う。
と思ったのだがちょっと勝手が違った。
「もし」
「はい」
ものすごい美貌がもしとか言ってくるものだからちょっと笑いそうになった。嫉妬すらできないレベルとか積んでるぞおい。
「お客でありましょうか?」
「い、一応は。案内されて来たんですが、道が分からなくて」
「案内? 面妖な」
「ゴーレムに案内されて」
またあのゴーレムは街を出たのですかと美しすぎて男か女かすら分からないような人は眉をしかめた。
「すみません、あとできつく言っておきます。今日のところはお帰り願えまいか」
「あ、はい。帰り道、教えてもらっていいですか」
どこから湧いたのか、すでに人だかりができている。
「どこから来たのかしら」
「図々しいものだ」
「あのゴーレムもいかれたのかね」
次々に罵倒するような文句が並ぶなか「客人だ、静かにしろ」と目の前の人は一喝してそれらを黙らせた。
「見ての通り人間に良い感情を抱いているものはおりません。案内します」
ゴーレムを見ていたので地面が目に影響を与えないくらいで変な色をしているということくらいしか分からなかったが、建物やらその他のオブジェもじゅうぶん変な色だ。金の螺鈿のようなものがはめ込まれた、桃色のねじれた平たい立方体。ピンク色のモノリスなんておかしなものなんてどの作品にも出てこないんじゃないか。モノリスは黒だ。
家の外壁は目に優しい透き通るような柔らかい緑色で、触ったらトラブルになりそうなのでやめておくが、実になめらかだった。やすりなんかで磨き上げたのじゃなく、静かに流れる風が研ぎあげたのだろうと思わせる。風魔法というものはこの際だから考えないようにしよう。
水路なのか川なのか、流れる水は地上のものよりはるかに清浄に見える。
「……ん?」
いま一瞬だけなにか変なものが見えたような気がする。
「どうかなさいましたか」
「あ、いや。ここってどういう形なんですか?」
「お答えできかねます」
「そっすか」
答えられない、というのはどういうことなんだろう。
「……あなたがファリアーに来た数少ない人間であることは確かです。それにゴーレムに認められた戦いの腕を持っている。そしてやさしさも。これを渡しておきましょう」
見覚えがある、というか売れなくて困っている例の宝石箱とよく似た形のものが俺に手渡された。何らかのクエストアイテムなんだろうか。
「贈り物ではない、ということを覚えておいてください」
「あ、はい。ここ出口ですよね?」
なにやら壁をとんとんと叩くとすっとスライドして開いた。
『では』
「え?」
すべてが暗闇になった。
「まさか、いや、これが……?」
『そ、幻の街。悪く思わないでほしいな。悪意でやってるんじゃないんだから』
早く出たほうがいいよ、といわれて俺はまたもや毒のトンネルをくぐった。いちおうは毒を無効化する呪文など唱えておいた方がいいのだろうが、じわじわ減る体力よりも気にかかることがあった。
何もかもが幻だったというのか。
そうだ、疑問を解決する手っ取り早い方法がある。
「連絡を待とう…… か」
クエスト画面の情報はそれだけだ。俺が歩いて街に戻っても連絡はなく、とうとうログアウトするまで連絡はなかった。
体の感覚が、噴水のベンチに座っている感覚から横になっている感覚に――
「お兄ちゃん……」
「あ?」
「ん、お兄ちゃん、起きたの?」
「ログアウトしたんだよ」
俺の体は、横に転がっていた。
「ってか美沙、何やってんだ?」
「ぎゅっとしてただけ」
背中に思いっきりしがみついてたのはなんだよと聞くとだからぎゅっとしてたんだよとふわふわした微笑を浮かべながら美沙は言った。
「無意識に攻略するような人だから、寝てる間に襲われちゃうんだよ?」
「襲うってなんだよ、怖いじゃねーか」
今日ばかりは冗談に聞こえなくて、俺はぞっとした。
「それじゃ、おやすみ」
「おう。おやすみ」
今日はワンピースなんだな、というと美沙は「今日買ったの」とにっこり笑った。
伏線みたいに言っておきながらなんでこんな気持ちの悪いもの書いたんだ…… と若干自分に対して引き気味。今日はワンピース…… うん。別に大した情報じゃないな。まさかあ(ドグジャッ
そういえば帳尻合わせに2章は21話あります。あと一話。
とここで普通ならスキルノートに移るところなんだが…… はい、ネタ切れですよ、ネタ切れ。寿司の上に乗せる魚の切り身じゃなくてですね。脳みそが話数についていかなくて、スキルを新しく生み出す速度よりも消費する速度の方が早いんですなあ。で、作ったスキルもその段階で設定が全部出来上がってるわけじゃないしスキルの特技もぜんぜんできないし。誰か手伝ってくれください。今回ばかりは冗談抜きですよ。
ネタ切れしてますので今日はありません。というか無期限停止。




