表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第一話 恵比須顔

 連載小説の締め切りまで、後一週間しかない。まだ最後のオチが思い浮かばない。 気分転換に散歩にでも行こうかな。


 季節外れの寒波が続く日々、春のあの高揚感はまだ感じられないと物思いにふけながら私は歩いていた。


 自動販売機の前で立ち止まり、千円札を入れ煙草を買った。


 お釣りが全て百円玉で出てきた……。


 そんな事で、いちいち腹を立てる程の事ではないが少しだけ私の顔は無愛想になり、そのまま釣り銭を取った。


 何気に釣銭を見てみると、その中に一枚だけ見慣れない百円玉がある。


 何かの記念硬貨か……?


 通常の百円玉より少し小さく、百の裏面は恵比寿顔のような絵柄だった。


 見たことないな……変なコイン……。


 

 私は家に戻り、小説の続きを書き始めた。


 「おいっ! そこのお前」


 ん?


 どこからともなく声が聞こえてきた。


 空耳か……。


 「お前だよ。そこにいるお前だよ」


 「誰だ?」


 辺りを見渡したが誰もいない。気味が悪いな、疲れているのかな?


 そう思っていると、また声が聞こえてきた。


 「机の上をよく見てみろよ」


 机の上を見ると、灰皿と煙草とさっきの釣り銭しかない。


 「俺だよ……」


 あの変な百円玉がカタカタと動いている。


 これか?


 「おい、裏返してくれよ」


 私は恐る恐るその百円玉をめくった。


 なんだ? これは……。


 絵柄の恵比寿顔が動いている。そして、私の方を見つめている。


 夢でも見ているのか?


 その百円玉は、ゆっくりと私の方へ近づいてきた。私がその様子をじっと見ていると、百円玉はこう言ってきた。


 「お前、俺の事を変なコインと思ってバカにしているだろ?」


 百円玉は何やら怒っているようだ。


 「えっ? バカにはしていませんけど……」


 なぜか私は丁寧語で話している。


 「珍しいだろ? 俺は他の百円玉より偉いからな!」


 「偉い?」


 「希少価値があるという事だよ!」


 私は普通に百円玉と会話をしている。頭がおかしくなったのか、それとも精神的に壊れてしまったのか……。とりあえず煙草でも吸って落ち着こう。


 私は煙草に火をつけ、煙を深く深呼吸しながら肺に入れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ