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3 第三者

 緊急警報発令中!赤いテールランプがピカピカくるくる脳内に輝き、同時に脳内でかわいいパンダが『あぶないよーぅ』と警告してくれる。明らかな機会音で形式文を繰り返す女性がテンプレートだが、生憎無表情は見たくもないので自分の趣味に染まりに染まったかわいいキャラだ。白と黒の絶妙なコントラストが素敵。 


 その可愛らしい声に反応があったようで、元生徒会長の登場に引き続き、またしても窓から侵入者があった。


 「あれ、なんか楽しそうな話してるねー。俺も混ぜて混ぜてー」

 「ぜひお願いします。叶うならばこの殺伐とした雰囲気を醸し出す一人を全気力を総動員させて止めてくれれば」

 「近寄ったらお前の髪をぐっしゃぐしゃのUFOの着陸跡にしてやる」


 生徒会室に一つしかない窓はどうやらある特定の人々の常用出入り口となりつつある。新一年生には見せられない光景だ。ただでさえ人員が欠乏している今年の生徒会は過去最低だと先生が青い顔で叫んでいるというのに。…まぁほとんどはここにはびこる三年生のせいなのだが。


 「トオル先輩っ!ニヘラ笑いはほどほどにして、さっさとその窓を乗り越えて!かむおん!!」

 「えー、やだぁ。」


 差し伸べられそうだった救いの手は、目の前で無残にひっこめられた。


 第三の登場人物は窓からひょっこり顔を出したまま、両手を顔の下で組んでその上に頭を載せて微笑んだ。すでにおなじみのトオル先輩だ。彼とは長い付き合いになる。つい昨年も、元生徒会長の友達ということで関わりが多く、彼と会長を挟んで昼食をとることもしばしばだった。



 「だってとーま、今にも俺に飛びかかってきそうなんだもん。この髪型にどれだけ時間をとられているか…朝の目玉焼きを泣く泣く我慢してるこちらの身にもなってほしいねー」


 などとぶーたれているが、彼はちゃっかり180センチ近い長身で、かつ爽やかな笑顔の追加オプションにより校内で「爽やかイケメン」に認定される男だ。王道可愛い系を突き進む灯磨先輩と違って全く可愛くない。てか、今はそれ以上に憎らしいのでさっさとひっこめてほしい。



 どこからか最近ハマっているというバナナ抹茶ジュース(おいしいのかどうかは不明)を取り出し微笑みながらずずずと吸い込むトオル先輩にビキリと青筋が浮かぶ。しかしその瞬間、腰に回された腕に力がこもり、クルリと私の体を回した。


 必然的ににぱりと微笑む灯磨先輩と向き合う形になる。…いや、むしろ見つめ合うっていうか近いっていうか近い近い!!いわゆるリアル・目と鼻の先。


 「先輩、近いです」


 自分では真剣な顔をつくっているつもりだ。にぱにぱと微笑む灯磨先輩と向き合って、正直理性が…ぎゅって抱きしめたいという欲求を必死に押しとどめてる最中なんだ。もっと頑張って私の理性。可愛い顔したキュートな欲求軍団に今にも倒されそうだぞ。


 どうにか先輩の腕の中からもがき、やっと解放された。すがすがしい解放感に身がつつまれ、窓から流れ込む風がトオル先輩を乗り越えて私に降り注ぐ。あー、シャバの空気はうるわしや。



 「眉間のしわは仏頂面の進化を加速させていくんだよ…もう、いつも浮かべちゃって☆」

 「がふっ」


 キャハッと周りに花が飛び散りそうな声を発した後、そのぽわぽわした乙女雰囲気とは裏腹にするどい人差し指が私の眉間に突き刺さる。かなり力のこもった指は柔らかい肉に包まれているにも関わらず、その骨の強度を確かめるかのように私の眉間の皺を和らげていく。

 ごめん、なんだか語弊があるようだ。やわらげていくっていうか問答無用で伸ばされてる。ぐいぐいぐいーっていう効果音も可愛らしく聞こえるくらい、怒涛の勢いで。


 「筋肉バカに、お気楽おバカ…なるちゃんはおバカが好きなんだね。そうか分かったよ。じゃぁそんな超超超おバカななるちゃんにはお仕置きだっ!」

 「お仕置きの程度おかしくないですか!?」

 「僕の采配に狂いはないんだよー。そして、僕は何をしたって許されるんだ」


 額を抑え悶絶する私の傍で、灯磨先輩は極上の笑みを浮かべた。



 「だって僕は可愛いんだもん」



 …きっぱり。どきっぱりでした。全く悪気ないです。確信犯ですよこの人!誰か捕まえてくださーい!



 しかし、その笑みにやられる人が一人。

 








 「…ぅぅぅうう可愛い!!!!」



 ハイ、皆さまの想像通り、私でしたー。


 さっきまでの痛みなんて何のその。額に青筋浮かべてたなんて何ソレ夢でも見たんじゃない?と言わんばかりに超絶べりぃきゅーとな灯磨先輩に抱きついた。かぁわぁいぃぃぃいいいい!!!!もう本当この人宇宙人じゃないの!?この笑顔、笑顔、笑顔…(エコー)


 可愛さに悶絶し、うきゅぅぅうと顔に似合わない声を発しながら先輩をぎゅっと抱きしめる傍で、トオル先輩は爽やかに苦笑。会長はなにやら複雑な表情をしていた。私に抱きつかれている灯磨先輩はというと、満足そうに微笑んで私の頭を撫でている。…その仕草が可愛いから!ズキュン!ズキュンでズガンでバシューンだから!





 「灯磨の二重人格もアレだけど、芦沢の度を超えた可愛い者好きも相当だよねぇー」




 ズギュンズガンと灯磨先輩の可愛さにやられている私には、トオル先輩の言葉など耳に入らなかった。





オプションとしてはトオル先輩の髪色はミルクティー色です。茶髪万歳!


そして脳筋族(ごめん、またちゃんとした説明するね…)もとい元生徒会長様は黒髪短髪、まさにスポーツマン。実は陸上部の部長とかけもちだったら良いなって話。現実的に可能かどうかは不明。

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