↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その【聖女】転生者につき。  作者: お餅憑き
序章:聖女と勇者と加護。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/127

頁:1 【プロローグ】始まりは、不快感と共に。◆挿絵有り

※ご注意※


当作品はスナック感覚でお召し上がりいただくには少々重いです。


登場人物の感情や、世界観の空気を重視した結果――

咀嚼を愉しむような仕上がりとなりました。


テンポの良い展開、爽快感などは薄いです。

世界に浸れるような、そんな読書体験を好まれる方に向いていると思います。


自分自身の「好き」に従った結果、こういったスタイルに落ち着きました。

少しでも、自分の作品の合う方に楽しんでいただけましたら幸いです。


では、拙作ではございますが、ご笑覧いただければ幸に存じます。




 ――頭が……痛い。


 偏頭痛持ちの自分だけれど、今までとは比にならない頭痛。

 鈍くって……まるで焼けた火箸が脳みそかき回してるみたいな――


 頭の奥に奔る感覚でどうにかなりそうだった。

 頭蓋骨の内側から、鈍器で殴られてるような錯覚まである。


 ぐわんぐわんと響く脳に、左の胸の奥に感じる締め付けられたような。

 耐え難いほどの苦痛で、肺が呼吸を拒んでるみたいだ。


 吸っても吸っても、いくら呼吸しても酸素が足りない。


 この症状は……恐らく肋間神経痛及び過呼吸の症状。


 呼吸は出来ないのに、あばらが軋むような激痛で、胃もおかしくって。

 吐き気は確かに感じているはずなのに、立ち上がることすら許されない。


 ――もう、最悪。最悪がすぎるよ、こんなの。


 視界がぼやけて揺れていて、頭から血液が引いていく感覚。

 その症状が低血圧からくるものだと分かるのだけれど……。


 身体を動かそうにも自由に動かなくって、それでも必死に、手を伸ばした。


『だれか――たすけ、て。』


 スマホ……自分のスマホは、どこ……?このままだと、本当に――


 最期の身体の防衛反応だろうか?


 自分の意識は、まるで水底へ引っ張られるみたいに――

 そこで、ぷつりと途切れた。


 ◇ ◇ ◇


(ここは――どこだろうか)


 次に目を開けてみれば、ぼやける視界には濃紫色の何かが見える。

 知らない天井……というか、なんだろう……まだ意識が混濁しているのか?


 しかし、視界が明瞭になるにつれ、その空間が異質であることを悟った。


挿絵(By みてみん)


(はて……天蓋ベットに寝かされている?なにゆえに?)


 目に映る景色は、高級そうな起毛素材でできた天幕。

 たとえ知識がなくっとも、その見るからにお貴族感満載な天蓋は――


 ぼやけた思考でも分かる。


『……異世界転生しちゃった?』


 ほんのりと周囲を漂う、花のような御香の匂いで頭がクラックラ。

 懐かしさを感じるけれど、それが何の花なのかまでは分からない。


「ここは……どこ?」


 ふと呟いた掠れ声に、少しずつ現実感が押し寄せてくる。


 視線を動かした先には、黒のドレスに白のエプロン姿の人影。

 うーむ、完全に『メイドさん』であることは伺えるのだけど。


(なるほど……これは死の間際に見る夢だなぁ……。)


 無理矢理そう落とし込んだはずだったのに――脳内に流れ込む断片。

 それは、日本で過ごしてきた記憶とか……見たことのない景色とか。


 ドバ――っと流れ込む記憶の奔流に、また――頭痛が込み上げて。


 でも、おかしいぞ……?記憶に欠陥?なんか、違う。なんだこれは。

 名前とか性別とか、思い出せない……頭が痛くて分からない。


 日本での記憶は、看護師の母に憧れて、同じ道を目指して歩んだこと。

 頑張って――必死こいて働いて。んで世界中がパンデミックにのまれて。


 病院だけじゃなくって、世界全体が大混乱で。


 職場の病院も忙しすぎて余裕がなくって、病院の一室で休憩して。


 嗚呼。そうだった。


 自分は恐らく過労の影響で、後悔の中助けすら呼べずに――死んだ。

 三十路手前、恋人すらおらず、親に感謝の言葉も伝えられなかった。


 なんて、なんて残酷であっけない人生?


 情緒も情報もシッチャカメッチャカで、多分自分は今、泣いている。


 涙を袖で拭って、なんとか冷静に努めてみるけど――

 視線を移しても景色は変わらないし、天蓋だし天井広いし。


 一旦、情報を整理しよう。こういうときこそ冷静第一。


(まずは、深呼吸……。)


 この場所から――周りの豪奢な装飾を見た限りは……中世?

 古い時代を感じる、ヨーロッパ的な貴族のお屋敷だろうか?


 しかし黒のドレスに白のエプロンは、些か『THE・メイド』感が凄まじい。


 先ほど頭痛を感じたということは、一旦夢の可能性を否定。

 すると、現実世界のどこかの古い国にタイムスリップ的な。


 でも、空気から感じるのは、地球のソレとはどこか違うって。

 言い知れない……第六感が告げている――『異世界』だと。


 しっかし、死の間際に見せてくれる光景が『異世界転生モノ』かぁー。

 神様の粋な計らい……最後っ屁で夢のある光景をありがとう。


 視線をふと、下に移すと小さな手と華奢な腕が確認できた。


(身体……子ども!?子供の身体……。)


 頭は成人だと認識しているのに、目を向けたら身体は子どもって――

 ――ッは!これは……名探偵になったのか!?近くに黒装束は……。


 現実逃避はいい加減にやめよう。流れ込んだ記憶は何もひとつじゃない。

 日本の記憶に紛れ込んでもう一つの記憶が、今の自分にはある。



 流れ込んだ断片的な知識を拾い集めると、だいたいこんな感じ。


 まず……この国の名前は『煌陽国・セレスタリア』


 この国に存在するルール……神から授かる力【加護(ギフト)】を始めとして――


 他だと〈霊気力(アニマ)〉から紡ぐ〈技能(スキル)〉とか……。

 あとは〈聖神力(サンクト)〉から紡ぐ〈神聖術(ディ・サンクトゥス)〉なるものが存在している世界。


 一気に流れ込んできた情報だったゆえ、頭の中はぐーるぐる。

 お陰様で自分の思考回路はショート寸前。今すぐ泣きたい。


 んでもって、最大限頭を悩ませる、根本的なこと。



 ――どうやら自分は『セラフィーナ』という少女の身体に入ってしまった。



(転生じゃ、ない。これはすでに存在している人に『乗り移った』)


 ソレが指し示す事実……転生とは“一からのやり直し”が定石。

 しかし現在の自分は、もう既に成長途中の身体に“憑依”している。


 現在の自分を偽物だと仮定したとして、本物のこの子(セラフィーナ)の精神はどこへ?


 流れ込んだ記憶からでも分かるのは――

 この子が愛情たっぷりに育てられたという事実。


 自分という存在のせいで、この子が変になったのでは?

 そう考えるだけで再び頭痛がぶり返していくみたいで、頭を抱えた。


 そうしていると――唐突に「バンッ!」と音を立てて扉が開かれた。


「セラフィーナお嬢様ッ! お目覚めになられましたかッ!?」


 ――困った。


 “セラフィーナ”として、自分はちゃんと振る舞える?

 この身体の持ち主が、どういった少女だったのか、よく分からないのに。


「はへぇ……。」


 考えすぎた結果――小さな体では受け止めきることなんて出来なかった。

 薄れゆく意識の中で、見える景色は……メイドさんの焦燥した表情。


 重いまぶたに身を委ねて……自分は意識を手放した。





ここまで読んでくださって、とても嬉しく思います。

誤字脱字があればご報告いただければ幸いです。


お気に召していただけましたら、

ブクマなどいただけますと、励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。