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最終話 旅立ちの朝

 世界が震えている。

 全ての神を失った世界が悲鳴をあげているのだ。


『よくやったなラウル。これで世界を救える』

「どういう事だアインちゃん?」

『世界を生き返らせるには、神の代わりを世界に与えればよい。それだけの事だ』

「神の代わりだと……まさか!」

『そのまさかだ。我をエナドリに込めて世界に与えろ』

「そんな事をすれば……」

『我の意識は世界に拡散されて消えるだろうな』

「それでいいのか?」

『ああ、最初はただの略奪だった。女神ダルマシウスから世界を奪って満足していた。だがな、神として崇められる内に気に入ってしまったのだよ。この世界が。だから救いたい。それが貴様に殺された我に残った最後の意思なのだ』

「そうか……それなら躊躇わない」


 俺は癒しのエナドリである白銀滋養霊液を生み出し、アインバダルの意識をエナドリに移し替えた。


「それじゃ行くぞ! 世界よ! 飲み干せ! 世界を思う意思を! そして甦れ!!」


 そして地面にエナドリの容器を突き立てた。

 限界まで!

 意識を失うまで止めはしない!

 世界を癒やせ白銀滋養霊液!


『意識が溶けていく……我は世界になる……ありが……ラウ……』


 アインバダルの声が遠のいていく。

 そして……俺の意識も遠のいていった……


 ――ネイラシアの朝は早い。

 今日も朝から畑仕事だ。

 俺はブタリウスと合流して朝の仕事を終えた。


「ブタリウス、今までありがとうな」

「ブゥ〜ウ!」


 ブタリウスが嬉しそうに鳴いた。

 今日でブタリウスとお別れだから念入りにブタリウスを撫でた。

 この後の旅にブタリウスを連れて行けないからな。

 こいつがいれば両親の畑仕事を任せられるから、俺が居なくなっても安心だ。

 しばらく会えなくなるから寂しくなるな。


 女神バンダニギとの決戦から一年。

 俺は冒険者を止めて故郷のネイラシアの村で両親と一緒に暮らしていた。

 なぜか居候同然で住み着いてしまったフェードとアリスも一緒だったけどな。

 弟も生まれたから、二人が面倒をみてくれてくれて助かってはいたけどな。


 アインバダルを込めたエナドリによって世界の崩壊は止まった。

 きっと、今もアインバダルが頑張って世界を維持しているだろうな。

 仲間たちは全員それぞれの居るべき場所へ帰っていった。

 ユウマはアルリディアと共に世界各国を旅している。

 こんどこそ世界を守る勇者として活動するってな。

 魔王を倒すだけが勇者じゃない、世界平和の為に旅をする事は良い事だ。

 今日の約束を忘れていなければ良いのだがな。


「ずいぶんまったりしているんだね。腕は鈍っていないかな?」


 約束通り来たようだなユウマとアルリディア。


「試してみるか?」


 俺は立ち上がってユウマと向き合った。


「そうだね。私が勝ったら諦めてもらう事になるけどいいかな?」

「構わないさ」


 ユウマが聖剣を構えた。


「勝負は一撃。無駄な攻撃はするなよ?」

「分かっているさ。これが私とラウルの最後の戦いだ!」

「くらえ! エナドリキィィィィック!!」

「打ち返せ! 聖剣ブライアー!!」


 俺の蹴りとユウマの聖剣が激突する。

 そして……俺の蹴りがユウマの聖剣をへし折った。


「ふっ、エナドリを飲んでいない君に再び聖剣を折られるとはね」

「エナドリは飲んでいなかったが全力だったよ。強くなったな、色々な意味で」

「一人じゃないんでね」


 ユウマがアルリディアを見た。

 どうやら良い関係なようだな。

 今後を見てみたいという思いもあるが、俺は旅立たなければならない。


「それじゃ頼むよ」

「本当に寂しくなるな」


 ユウマが俺に近づいてくる。

 あとは俺に触れるだけだな。


「逃がさねぇぜアニキ!」


 俺の背中にフェードが飛びついた。


「フェード?! なぜ?」

「なぜじゃねぇだろ! オレ様を置いていける訳ねぇだろ?」

「話したのかユウマ?」

「何も話してないですよ。女の勘って奴じゃないですか?」


 ふぅ、仕方がないな。

 出来れば誰も巻き込みたくはなかったのだけどな。

 だけど、心の中でどこかこういう事態になるんじゃないかって思っていたのも事実だ。

 これから俺は異空間に飛ばされる。

 戻って来れる保証はない。

 ユウマは収納魔法の力を持っているのだ。

 それは狂人ソレータムの手によってセレスティナ(健太郎)が飲み込まれた異空間に飛ばせるって事だ。

 一年以上前に異空間に飲み込まれた健太郎が生きているとは限らない。

 だが救えるなら助けてやりたい。

 一応あいつも俺たちの仲間だからな。


「ユウマ、一人増えたが問題ないか?」

「問題ないよ。それじゃいくよ」

「ありがとうユウマ。色々あったが会えて良かった」

「置いてきぼりのアリスによろしくな!」

「こちらこそ会えて良かったよ。さようならラウル、フェード」


 ユウマが俺の体に手を触れた。

 そして……俺とフェードは世界から消えた……


 ――ラウルとフェードが消えた後、ユウマとアルリディアが佇んでいた。


「伝えなくて良かったのですか?」

「何をだい?」

「アリスさんが先に異空間に行ったって」

「いいんじゃないかな。驚くような再会をした方が楽しそうだから」

「そうね。きっと、楽しい冒険になるわよね」

「そうだね。さて、僕たちも冒険に行こうか」

「はいっ!」


 ユウマとアルリディアが去っていった。


「ブッブッブ〜!」


 そしてブタリウスが楽しそうに鼻歌を歌いながら帰っていった。

 今日の仕事は終わりだが、明日も明後日も畑仕事を頑張るだろう。

 ラウルたちが帰ってくるその日まで……


 スカッと一撃! エナドリ無双!! 完

最後までお読み頂きありがとうございました!

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