Day2
満天の空。街灯以外の光はほとんど何もないここからは星がよく見える。
その次の日もまた、桜の木の下に向かうと彼はいた。
「……」
彼女はいつものように明るく立ち振る舞うことができなかった。
そんな彼女の異変に気付いた彼は相変わらず顔を膝に押し当てて座り込んだまま
「……ごめん」
と昨日と同じように謝る。彼女の耳に届くかどうかも怪しいくらい小さな声であったが、その言葉は確かに意味を成したようである。
「……ねえ」
彼女は彼の隣で桜の木にもたれかかるようにしながら、どこか遠くを見るような目をしながら独り言のように言った。
「……私のこと、嫌いになったの?」
その言葉に動揺したのか彼は肩を微かに動かした。しかし、運よく彼女の視界には入っていなかったようで昨日のように尋問されることはなかった。
「ちがう。すっと……」
彼女はその言葉の続きを聞くべく目線を彼に向けた。けれども、彼はしばらくの沈黙の後、頭を掻き始めたがいつまでたってもその先の言葉が発せられることはなかった。
やがて彼女の我慢の限界が来たのか
「意気地なし」
はっきりとそう言うと彼はまた頭を掻いた。
今度のは照れ隠しだろうか? しかし、彼の顔は隠れているため、どんな表情なのかは判断できない。
ただ、今の彼女にはその仕草がどういう意味を持つのかはどうでもよかった。彼女はもう彼の返事を待てるほどの心の広さはなかったのである。
「でも、そうじゃないと困る」
彼女は昨日と同じ小悪魔のような笑みを浮かべると彼は頭を掻くのをやめてそのまま黙り込んでしまった。
再び訪れる静寂。彼女は自身の髪をいじりながらまたぼんやりと闇夜の先にある何かを見ていた。
「もう……怒ってないの?」
静寂を壊したのは珍しく彼であった。その問いに対し彼女は
「さあね。自分で考えな」
と口だけ動かして返した。その後に再び気まずい雰囲気になる前に
「帰る」
彼女はそれだけ言って立ち去ろうとしたが、途中で何かを思い出したようで立ち止まり。後ろに振り返り彼に尋ねた。
「女子が一人でこんなとこに来てるんだよ?一緒に帰ってあげるとかの気遣いとかできないわけ?」
そう言って、一人「お化け怖い……」とか弱い乙女のような大袈裟な芝居をする。
「本当に欲しいと思ってる?」
彼の冷たい返事に彼女はやれやれと言わんばかりにため息をついた後、彼に背中を再び向けて歩き始める。
「必要か必要じゃないかはどうでもいいのよ。あんたは人の気持ちが分からないわけ?だから女子に好かれないんだよ」
彼は何も言わなかった。そのうち彼女の姿は風にあおられ飛んでいく桜の花びらと共に暗闇へと消えていった。




