絶望の色だった。
最悪のカウントダウンが0を告げた数時間後、果林は死んだ、と病院で、医師に告げられた。電話で告げられて病院に来た果林の母の横に並んで、それを聞いた。果林の母はハンカチを顔に当て、静かに泣いていた。
エルゥは果林が死ぬ前のことを思い浮かべた。
「ごめんなさい。」
果林の母は「え?」と言ってエルゥを見た。目尻が赤くなった彼女の顔はエルゥは見れず、下に俯いたまま続けた。
「自分が・・・・、速く、果林のとこへ行けば・・・・赤になる前に・・・・渡りきれたのに・・・・・・、そしたら、果林は・・・・・死ななかったのに・・・・・!!」
泣く声は出なかったのに、言葉を繋ぐのは難しかった。その後は、ただ、泣き声もなく涙を流していた。それしか出来なかった。
「エルゥちゃん、こっちむいてちょうだい。」
果林の母は優しくエルゥに声をかけた。エルゥはそのまま顔を彼女に向けた。
すると果林の母はエルゥを抱きしめた。自分が消えようとした時の果林と同じように、強く、強く。
「果林の言ってた通りね。あなたはとっても優しい子なのね。こんなに果林のために悲しんでくれるなんて。でもね、自分に無理矢理罪を押し込まないでちょうだい。あの子が、泣いちゃうわ。あの子はいつも、あなたのことを話してくれた。それだけ、あなたが大好きだったの。それだけ、あなたが大事だったの。だから、お願い。」
果林の母は顔をゆっくりと離し、片手をエルゥの後頭部に持って行った。触れていたのは、果林にもらったヘアバンドだ。
「これ、すっごく大事にしてくれているのね。嬉しいわ。私も、あの子も。」
しばらくの間、このままこのぬくもりに浸っていた。エルゥは改めて思った。
人はみんな無情で、欲深くて、汚い物だと思っていた。でも、そうでない人も中にはいたのだ。
果林の葬式には、エルゥは来なかった。なぜなら、果林の母とエルゥの親は一切認識がないから。
そして、自分が悲しくなり、立ち直れなくなるから。そして、果林は生まれた時からとっくに父がいなかったという。きっと、果林が生まれる前に彼女の母は自分の夫を運命に奪われたんだ。そして、私は、彼女の大切な果林を運命に奪われてしまった。果林の母はエルゥのせいじゃないと言われたが、余計に苦しくなってしまうのだ。
なぜ、情のある人間は運命に奪われていくのだろう。
果林の葬式が開かれるこの日、エルゥは朝起きて洗面所に向かうと、自分の姿が映った鏡が見えた。果林がきれいとほめてくれた白い髪を見れば、あの時の白いスポーツカーが脳裏に映るのだ。周りの人々が気味悪いと言われてきた生まれつきのこの髪は今は自分にとってもすごく気味の悪いものとなった。
白は、絶望の色だったのか。




