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最悪のカウントダウン

 夏休みが終わりそうな頃、エルゥは果林と外に遊びに行っていた。

「エルゥ、今から私の家で遊ぼうよ!」

「うん、いいよ!」

公園のベンチに座っていた。二人は果林の家に行くことにした。公園を出て歩き出す。

「エルゥとこんなに仲良くなれるのならエルゥと一緒に生まれたかったなぁ。」

「いいね、それ。」

「生まれ変わったら、一緒の親の元に生まれよう!」

「神様が許してくれたらね。」

「許してくれるよ!」

「そうだね。生まれ変わったら、恵瑠って名前で生きていきたいな。」

「もう、照れくさいなぁ。」

こうやって話していると、大きな道路に出た。信号は青だ。左を見れば、いつしかの歩道橋が見える。

エルゥはどこかしらから何かの気配を感じ取った。立ち止まり、周りをキョロキョロと見回すが、特に怪しい人はいない。

「エルゥ?」

声がして、ふと横断歩道を見た。横断歩道の真ん中からやや手前で果林は立ち止まり、エルゥを見つめると、手を振り、「早く~」と声をかけた。

「ごめんごめん。」

 エルゥは果林の元へ走りだそうとした。しかし、その足は、横断歩道に踏み入れる前に止まった。

右耳に嫌な音が入ってきた。向こうの信号を見て見れば、赤いランプが光っていた。バッと横を見れば、奥から、白いスポーツカーが猛スピードで走ってきた。

エルゥは果林に声をかけようとするが、声が上手く出なかった。

「エルゥ?」

果林はエルゥを不思議そうな目で見る。そんな果林に「危ない!」と言いたいのになぜか声を出せない。

果林の元に走ろうとするが、地面に必死にしがみついたかのように足も動こうとしてくれなかった。

スポーツカーの音は最悪のカウントダウンをするかの様に近づいてくる。

「か・・・・・か、り・・・・・・・・・・待って・・・・・・・・・・。」

やっと声が出たのに、その声はとてつもなく小さく、かすれていた。当然のように果林には聞こえなかった。

「どうしたの?エルゥ?」

果林は歩き出そうとした。

嫌だ。

スポーツカーの音が耳を突き抜けそうなくらいの大きさになった時、果林は足を止めた。

待って。

果林はゆっくりと横を向いた。

行かないで。

その時はすでにスポーツカーは果林の目の前だった。

その後は、エルゥはほとんど覚えてなかった。

覚えていたのは、正面だけを赤く染めたスポーツカー。そこからの距離はわからないが、赤くなった道路の上に横たわっていた果林だった。


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