4話
スノウの止まることのない口はいつ閉じるのか。
それに言い返すお兄さんもお兄さんで言い合いは続いていた。
それがいけなかった。
足元の罠を。
何かが切れるような音が聴こえ、誰かが踏んだのだ。
お兄さん、スノウ、二人が縄にかかり、宙に吊るされた。
どこからともなく現れた小さなドワーフ、彼らの仕業だろう。彼らは罠を仕掛けて獲物を狩るのを得意としていると聞いたことがある。
「獲物だ」
「人間だ。食べられない」
「間抜けな面してやがる」
「また罠を仕掛け直さなきゃならなくなった」
「余計なことをしてくれる」
わたしの背中に当たる何かは確認したくない。きっとお兄さんやスノウに突きつけられてる槍の矛先だろう。
「おい、早く下ろせ」
「生意気だ。間抜けなくせに」
「全くだ。吊るされてるくせに態度がでかい」
「いや、実際見上げなきゃならん」
「そうじゃないだろう」
お互いの頭を叩きあう姿こそ間抜けである。
下ろすのか下ろさないのか、話が先に進まない。
「ごめんなさい。下ろしてもらえませんか」
ドワーフは女の子に弱かった。
何人かが顔を赤く染め、縄を切り落とすという雑な方法だったが、確かにスノウの言葉で地面に下ろしてくれた。
向けられた槍はそのままだけど、もしもの場合はお兄さんがなんとかしてくれるだろう。
「さっき王国軍が通った」
「黒い髪の女を探してた」
「赤い髪じゃなかったか? 」
「馬鹿。黒い髪だ」
そこでわざとらしく言葉が途切れ、スノウとわたしの髪を見比べた。
「つき出すか」
「ま、待って! お願い、それだけはしないで! 」
「お金がもらえる」
「たっぷりとな」
「お願い! やめて! 殺されるわ! 」
命のかかった訴えの必死さぐらいは伝わったはずだ。わたしもお兄さんも関わったドワーフももしかしたら死ぬかもしれない。
みてみないフリが一番良かったのだろう。
彼らは輪になり話し合いを始めた。わたしはお兄さんに近づいて、服を引っ張った。
「……ねえ、いつまでもここにはいられないの」
「だろうな。王国軍が戻ってきちまう」
スノウとも目を会わせていつでも逃げれるように足に力をいれる。
「おい! 王国軍が戻ってきた! 」
一人見張りにつけていたドワーフが走りよってきた。
お兄さんは素早くわたしとスノウを幹の裏に隠し、自分も別の幹の裏に回る。
彼らが話さないと信じるしかない。




