14話 同接、えぐい数字になったぁ!
14話 同接、えぐい数字になったぁ!
そのまま、20分ぐらい死闘が続いた。
途中、何度も膝をつきかけた。
水の塊を全身に浴び、視界が滲む瞬間もあった。
正直、死ぬかと思った。
けど、ギリギリのところで、
「おらぁあああ!!」
最後は必殺技の名前を叫ぶ余裕もなかった。
とにかく全力で、血みどろになりながら、剣をふるって、
A級モンスターの息の根を止めることに成功した。
「はぁ……はぁ……うぉ、勝った……マジか……正直、途中で逃げるつもりだったけど……なんか、勝った……すげぇな、俺……A級に勝ったぁ! 俺、最強!!」
『最強ではない』
『おめ』
『痛みにたえてよくがんばった、感動した』
息も絶え絶えだが、なんとか勝利した俺は、
スマホに向かって、
「ここからも、覚醒した俺の快進撃を見たいという方は、いいねと、チャンネル登録と、ハイプをお願いします。スパチャは……べつに、まあ、あれですけど……くれるっていうなら、ありがたくもらいます……金欠なんで」
そこで同接を確認した。
380まで増えていた。
快挙!
いや、マジで、えぐい数字よ、これ。
もちろん、俺の教え子たちみたいなスーパースターなら、
同接数万とか余裕なわけだけど、何度もいうように、あれは例外中の例外だから。
俺みたいな底辺にとって、380人って数字はマジでえげつない。
『すごかった! なんで、急に覚醒したん?』
『まだ強くなるなら、その先も見たいね』
『スパチャ120円あげる』
……と、その中に一つ、不穏なコメントが混じってきた。
『こいつ、確か……時空旅団の担任じゃね?』
そこから一気に空気が変わり、
『時空旅団のクラス転移を防げなかった無能教師』
『……で、責任とらずに逃げたやつ』
『ああ、なんかだいぶ前にニュースで見たかも、時空旅団のダメ担任』
そんな風に話が広がっていく。
ちなみに、時空旅団ってのは、教え子たちのチーム名。
あいつらは、もともと『時空ヶ丘学園2年B組』と呼ばれていたが、
『担任の俺ぐらいはポップな名前で呼びたいな』という厨二心で、
あいつらの配信コメントに、
『今日も時空旅団の面々は格が違った』
『時空旅団のメンツがエグすぎて、底辺配信者のワイとしては嫉妬を禁じ得ない』
などと定期的に書き込んでいたところ、
……その名称が、なんか妙に流行って定着した。
この世は何が流行るかマジでわからん。
『教師の責任を果たせなかったやつが、呑気にダンジョンで遊んでんの草』
『腐っても教師なら助ける努力とかしろよ』
『時空旅団のメンツ、もう帰ってきてるから助けるもくそもないけど』
……好き勝手なクソコメが増えてきた。
数日前だったら、効いたかもしれない黒歴史の晒し。
けど、
「あ、はい。そうでーす。授業中、いきなり目の前から生徒が消えて、対応のしようがないのに、責任取ってやめろって言われた、哀れな中年です」
『開き直った』
『これだから日本の教師は』
『文部科学省の闇』
「じゃあ、俺は何をすればよかったんだ?」
『異世界まで助けにいくとか?』
「それ、あんたできるのかよ。ちなみに、あの子たちの親類も、友人も、ほかの教師も、誰も何もしていないが……俺だけに責任を押し付けるのは、俺が担任だったからってそれだけの理由? だったら、俺はこう言う。――担任は神様じゃねぇよ」
ずっと言いたかったことを口にできた。
なんだか、すっきりした。
「正直、異世界にいきたかったよ。昔から異世界転生・転移するのが夢だったからな。けど、いくら頼んでも、女神は俺の願いを叶えてくれなかった」
このクソみたいな世界から卒業して、ウェブ小説の主人公みたいに、異世界に旅立てたらって……何度思ったことか……
『涙ふけよ』
『みっともな』
『なんか知らんけど、がんばれ』
おっと……いけない、湿っぽい空気になってきた。
俺はどちらかというと、ピエロなエンターテイナーでいたい。
「というわけで、ここからも、哀れな俺の、ちょっぴり変わった成り上がりを見たいという方は、いいねと、チャンネル登録と、ハイプをお願いします。さっきのスパチャ120円、さんきゅっ。助かるよ。じゃあな」
そこで配信を切って、俺は天を仰いだ。
★
家に帰って、ユウガが出してくれたお茶を飲みながら、チャンネルをチェックすると、
登録者数が一気に50人以上増えていた。
あと、結構な応援コメントもついている。
『開き直んな、バカ』みたいなクソコメも結構あるが、
それに対する『じゃあ、お前は何ができんの?』という、
俺の切り返しをもとにした反撃コメントも結構ついている。
炎上……ってほどじゃないし、バズってほどでもないが、
ちょこっとだけ、界隈で名が広まったっぽい。
俺のスマホをのぞき込みながら、ユウガが、
「だいぶ伸びているようですね」
と、声をかけてきた。
「まだまだこれからだよ。ここから一気にいく。この先、だいぶ稼いでいくぞぉ。めっちゃ稼げたら、どうする? ブランドもののバックとか買ってあげようか?」
「ブランドものは、自分に自信がない者が背負う税金だと認識しております」
「それ、ひろ〇きが言ってたセリフだな……」




