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私達は少し進んだところにある平らな石にすわって足を揉んだ。

 運動不足のせいで足の疲れがじんじんと響いており、ふくらはぎが締め付けられるようである。あと1回力を入れれば確実にまたこむら返りを起こしそうになっていた。

 一生懸命もんでいると、彼がこちらに来て「もんであげるよ」としゃがみ込んだ。

 私はとっさに足を引っ込めた。

 「……なんでさ」

 今日の彼に足を揉ませたら絶対に「へんなこと」をすると思い、警戒して足を守る。

 上から彼の耳の間が見える。そこはいつもはもふもふなところなのだが、今回はトゲトゲと毛が逆立っていた。その下にはやけに縦長に瞳孔が閉じた。

 彼は悲しそうに耳を下げ、両手をあわせておねだりをする。

「……だめ?」

「だめじゃないけど、変なことしないって約束する?」

 彼はゆっくりと目をそらして沈黙した。何かごまかそうとしてるな?と思い目をそらさないでいると、案の定ボロが出た。

「…………チッ」

「はい今舌打ちしたからだめ〜〜〜〜!」

「あぁあああ!」

 彼が舌打ちをするときはだいたい図星だ。

 特に今のように尖った目をしていておねだりをしているならなおさらだ。絶対に何かをしようとしていた。

 なので私は全力で足を腕で捕み、絶対に彼に取らせないように力をこめた。

「いいだろ?絶対なにもしないから」

「いいやするね!私は確信してるよ!」

 彼は悲しそうなふりを続け、私に向けて少し高い声をだしていた。

 だがそれもおそらく油断させるための罠だろう。絶対に私の足を渡しはしない!と心に決めた。

 その後も彼が私の足を揉もうとしてくるので、私と彼で攻防戦を繰り広げていた。

 すると足が吊った。

「なあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……ごめん」

 私は叫び、ふくらはぎを必死に抑えて筋肉を元に戻そうとしていた。だが吊ったのはふくらはぎだけでなく、時間差ででつま先もなったので痛みは更に増加した。

 よく考えれば、攻防戦を繰り広げてしまったところで足が吊ることは確定していたのだろう。なぜそのことが考えられなかったのか、と足を抑えながら不思議に思った。

 彼はさっきより深く耳をお辞儀させて申し訳なさそうにズボンを捲って地面に正座をしていた。

「ホント仲良しですな……」

 その光景を見て呆れたジャスがボソリとため息混じりで呟いた。

 うるさい!と言おうとしたが、それより先に恥ずかしさで赤面になってしまい何も言えなかった。

 彼もそうで、顔を見ると耳の先を赤くして顔を抑えてモフッと毛が膨らんでいた。それを見てもっと赤面が激しくなって、私までも顔を抑えた。


 ―――――――


 少し休憩して、私達は街に向かい、本当に30kmを3時間かけて歩ききった。私は町が見えた瞬間に体力が一気に回復し、そこからの道のりは早かった。

 だが彼らならきっと1時間もあればこの道を歩いていけるのだろう。獣人の身体能力おそろしや。

 街が見えたときは達成感で疲れが消えると聞いて期待していたのだが、そんなことは全然なかった。

 街の前につくと、足は震え、息は乱れ、膝に手をつかないと立っていられなくなった。

 

「流石に少し休め。町中に入ってからも結構歩くからな。兵士さん、中入れて休ませていいかい?」

「ええ、大丈夫ですよ。ではこちらへ」


 兵士さんと会話した後、私はなんとかっていたところをゆっくりと膝を持ち上げられ、部屋の中へと運ばれていった。

 私を運んだのは、彼だった。

 声はジャスさんだったので完全にジャスさんが持っていくのかと思っていた。

 あんなに歩いてきて体力も無かろうに。

「ありがとう、カイラ」

「……なんで急に名前呼び?」

「しらにゃい」

 私は意識が朦朧とした状態でそう言い、彼の頬を撫でてあげると、彼は顔を真っ赤にして驚いて尻尾をピンと立てていた。

 その姿を見て、愛おしいな、と微笑みながら私は彼に身を委ね揺られた。

 その間「私が持とうか?」とジャスの声が聞こえると、彼はそれを絶対拒絶するように私をジャスさんから逸らした。


 少し移動すると、入り口近くにあった白くやわらかなベットに寝かされた。

 その後ちょっとだけ起こされて、水筒に入っている水を飲まされた。水道水から汲んできたのか自然の香りがした。

 横を見ると、兵士さんと彼が何か会話をしていた。ジャスさんはどこを見渡してもいなかった。

 おそらくもう用は済んだからどこかへと行ってしまったのだろう。

 それにしても、私はこんなに歩く前は何をしていただろうか?研究?それとも読書?

 なぜかほとんど記憶がないことに気づき、なんとなく空しさを感じた。

 研究であったことは思い出したが、何の研究だっけ……と記憶を掘り返し始めた。

 今はそれしかできないほど体が痛いのである。

 ふかふかなベットの触感を感じでいると、やがて眠気が襲ってきて、私は静かに眠りについた。

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