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超能力JKと探偵専門学生  作者: 紫雪


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40/40

40.衣装選び

 ホテルに着くと、そこにはすでに葉賀さんがいた。土田さんにお礼を言って、4人、ロビーに集まる。月緋さんは葉賀さんに体調を心配され、松さんは近くのご飯屋さんを調べていた。私は、月緋さんと考えたことを葉賀さんに言うタイミングについて考えていたけど、スケジュール的にパーティーが終わるまで無理そうだった。


 お昼は松さんの提案で、ホテルに入っているお寿司屋さんに行くことになった。ロビーと同じ階、今夜の会場とは逆方向にあった。月緋さんが「回らないタイプ?」と尋ねると、松さんがにんまりしながら大きくうなずいた。


 お寿司を食べている間は特段おかしなことはなかった。深刻な数字を見たわけでもなければ、偶然パーティーの参加者に会ったわけでもない。挙げるとするなら、回らないお寿司は最初の一口がためらわれる、とか。私と月緋さんによる、人のものを食べあうという喧嘩も怒らなかった。ここまで考慮していたのかと葉賀さんが感心して松さんを褒めるほど。月緋さんは心外、というような顔をしていた。私の表情だ返せ。


 あまりにスムーズに進むものだから、当たり前に暇はできた。けどそれは私と月緋さんのことであって、警察の二人は、ご飯を食べ終わった後は電話したり調べ物をしていたり。葉賀さんに報告するタイミングはなさそうだし、太陽さんは帰ってきていないということで、私たちは土田さんに連れられて、一足早く衣装選びに向かうことにした。


 ホテルの敷地内に黒い直方体のようなこぢんまりとした建物がある。普通は狐里グループ系列店のレンタルショップとして機能しているそうだけど、私たちについては、会計関係はすでに重丸さんが終わらせているらしい。本当に何なんだ。ショップの位置としては一度外に出る必要があるものの、昨日のお風呂場よりは近い場所であった。土田さんの話によると、ホテルではしょっちゅうパーティーだの結婚式だの、ドレスコードのあるようなイベントが催されるらしい。


 到着して店内に入ると、背筋をピシッと伸ばした店員さんたちが、丁寧に挨拶をしてくれた。こういうのを無視できないので、私も会釈をしてしまう。月緋さんは堂々と土田さんの後ろを歩いていた。土田さんはお店の奥の方まで進むと、そこで待っていた二人の従業員に「後はお任せします」と言って帰る旨を私たちに伝えた。


「土田はここで失礼いたします」


「ありがとうございました」


 私と月緋さんがお礼を言うと、そのままお店を出て行ってしまった。元々、重丸さんについているのだから、こうやって私たちを気にかけてくれるのはただの親切である。もしくは、この他薦自称探偵の動向を把握するように言われてるのかもしれない。どっちにしろ、私たちのするべきことは変わらない。


 私たちの世話をバトンタッチされた二人のうち、一人の店員さんが、立方体の箱を目の前に見せてきた。上の面には丸く大きな穴が開いている。


「こちらから紙を一枚お取りください」


 なるほど、くじ引きらしい。私と月緋さんで順番にくじを引くと、書かれていたのは二人とも水色の丸。月緋さんが「これなんですか?」と、手に持ったくじについて質問した。くじ引きを持っていない方の従業員が説明してくれる。


「こちらは参加者の皆様に引いていただく、深由様がつくられたくじとなっております」


 くじの内容は、衣装の色を指定するもので、普段の参加者は数か月前にくじが送られるらしい。毎年数人、赤を引いた人が現れるけど、その人たちは当日赤いものを身につける必要がある。


「今年のテーマは海となっておりますので」


 くじの箱を持っている方がほほ笑んだ。深由さんの誕生会は、こうやって毎年準備段階から楽しめるものになっているそうだ。色も決まったことだし、私と月緋さんはそれぞれ衣装選びを始める。メンズとレディースは向かい合うように、部屋の左右にずらーっと掛けられている。私は左に、月緋さんは右に向かった。


 衣装、と言ってもそんなに華美なものではない。主役は深由さんであって、私たちは祝う立場だ。水色を中心に探してみるけど、面白いデザインがいっぱいある。柔らかい生地のパステルブルーが目に入り、つい手に取ってみる。長袖のワンピースかと思いきや、肘のあたりまで深いスリットが入っていた。袖を料理につけてしまいそうだ。あった場所に戻し、また別のものを探してみる。


 こうやって見ると、水色を基調としたワンピースはすらっとした形のものが多かった。パフスリーブのものと目が合い、手に取ってみるがスカート部分が短い。ほぼミニスカート。よく見るとキュロットになっていた。パールも縫い付けられていて綺麗だったけど、泣く泣く諦める。丈が短いものはTPOに合わない気がする。


 後ろから「これにします」と聞こえてきた。月緋さんはもう決めたらしい。気になってちらっと見てみると、パステルブルーのカラースーツを手に取っていた。結構大胆に色を取り入れてる。従業員とシャツとネクタイについて話している。これから試着をするらしい。気が付いた月緋さんが、私に声をかけてきた。


「泉璃決まった?」


「いいのはあるんですけど。私に着こなせるかどうか」


 月緋さんは「ふーん」と適当に相槌を打つと、「まあなんでもいいと思う」と考えることを放棄したようだ。と思ったけど、試着室に行く前に教えてくれた。


「あの場で出くわしたときに、どんな行動がとれるかは重要じゃない?」


 私は頷いておいた。従業員の二人には当然意味など伝わらず、スマイルと一緒にしゃぼん色の基本の数字を傾げた。


 犯人がパーティー会場にいる確率もなくはない。もしあそこで犯人を見つけたとき、何ができるだろうか。何をするべきだろうか。狸坂家には護衛がいるから、深由さんたちは大丈夫だろう。私たちの役目は、犯人を見つけ出すこと、能力で分かった場合、葉賀さんにすぐ知らせること。そして、誰一人としてもう犠牲にならないことだ。


 そう考えたとき、最もふさわしいのは。


 虎の威を借りる、みたいなことは不本意だけど、これが最善としか思えなかった。


 私は1着のワンピースを手に取ると、付き添ってくれているスタッフに試着をお願いした。

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