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超能力JKと探偵専門学生  作者: 紫雪


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34.ワッフル

 ご飯の時間になると5人でビュッフェに行き、タダ飯と言っても過言でないどころか事実な夕食をいただいた。ビュッフェ定番のハンバーグなどの洋食の他、天ぷらやそば、お寿司なんかもある。さすが狐里グループ。私を除いた4人はお酒飲み比べなんかもできる。お寿司は頼めばその場で握ってくれる。そういえば、狸坂家の方々はそのままお帰りになったということを太陽さんから聞いた。


 シェアするために持ってきたのかと思うほどの量を全て食べるを繰り返す太陽さんの向かいで、私と月緋さんはお昼ご飯と同様、私が持ってきたスイーツはいつの間にか食べられ、月緋さんが持ってきた茶碗蒸しは食べてやった。二人でキーキー言っていると葉賀さんが、というのは言うまでもない。


「佐野さん、糸端さん、二人は何歳なんですか??」


 また般若の面を被った葉賀さんに叱られ、私たちは小さくなる。「お酒つぎますよ」とか月緋さんが余計に媚び売ろうとするから面が顔に生着するかと思った。京都に来てから自分以外が怒られているのを見ている松さんは心底嬉しそうだった。


「泉璃ちゃん、こっちワッフル作れるよ」


 腹八分目を超えてきた頃、あれだけ食べたはずの太陽さんがケロッとして私をワッフルコーナーに連れ出す。月緋さんはお腹がいっぱいなのかダウンしていた。太陽さんが水を差し出している。私のスイーツセレクションを全部食べるからだよ。


「抹茶の粉末があるんですね」


 ねー、と太陽さんが器用に作ったワッフルをデコレーションする。私も小さめに作り、そばにあった機械でソフトクリームをつくった。「いいね、罪深くて」と太陽さんが褒めてくれる。


「泉璃ちゃん明日時間ある?」


 私の真似をしてワッフルの上にソフトクリームをのせている太陽さんがきいてきた。


「深由さんのお誕生日会までなら大丈夫ですけど。太陽さんサークルの活動は行かないんですか?」


「ゆるいからいいの」


 正直に言うとパーティーの2時間前には戻っているべきなんだろう。発見現場に行く用事もあるから時間はあまり取れないし、パーティーは夜からだったから、4時には戻っていないと葉賀さんが怒るかもしれない。それは後で確認するとして、太陽さんは私に何の用なんだ。


「ちょっと案内したいところあって」


 耳元でこそっとささやく太陽さん。なぜか、下心丸出しというようには見受けられないが、目は好奇心を示している。何かしたいことがあるのか、時間はまさかの1m。分か月か分からないのが私の短所だ。minとかにしてくれないかな。どっちにしろ明日のことではない。


「みんなに内緒で観光しようよ」


 なぜか月緋さんの方をちらちら見ながら話す太陽さん。対して私は好奇心の塊。時間さえあれば悪くない話だ、けど。気になるのはその数字。そして色。しゃぼん色にしては赤が多い。けど、例の殺人未遂のときの女と違うのは数字から吹き出しているということ。吹き出した赤はそのまま蒸発したように消える。連想するのは、太陽のプロミネンス。はじめましてだ。これは何を意味するんだろう。


 もしかして。


 「どう?」とたずねる太陽さんに私が返事をしようとしていると、月緋さんが間に割って入ってきた。


「だめだって」


 月緋さんは太陽さんを「どういうつもり?」とにらみつける。


「冗談だよー、ツキそんな怒んないで」


 太陽さんは月緋さんの背中をバシッと叩く。そうすると、プロミネンスは月緋さんの方に吹き出し、消えた。いつの間に0を迎えたのか、頭上の時間は元の、あの徳のない感じに戻っている。女性関係を何とかすれば時間は短くなるのに、って月緋さんがさっき言っていた。基本の時間が長いにしては太陽さんはよく願いが叶っている。今もそうだし、月緋さんと再会した時もそう。例の月緋さんは、眉間に皺を寄せて太陽さんを睨みつけている。もはや変顔。太陽さんは気にせずごりごりにデコられたワッフルにはちみつをかける。月緋さんは太陽さんの時間をどう見たのか。今すぐには訊けないので黙っておく。


「まず」


 怒る原因は2つ以上あるらしい。月緋さんは太陽さんがさっき用意してくれた水の入ったコップを目の前に見せる。


「これ酒」


 そういえばちょっとにおいがする。「吐かせる気か」と言って太陽さんに飲ませた。近くの返却トレーにコップを置いて、月緋さんは「二つ目」と太陽さんの肩に手を置く。


「泉璃ちょっと離れて」


 そう言われたのでしぶしぶ席に戻る。ワッフルを食べようとしたけどナイフとフォークを忘れたのでまた戻る。月緋さんは太陽さんに何かがやがや言っていた。


「お前はサークルに行け」

「いいじゃん観光。別にツキ来てもいいんだよ」

「何考えてたかは分かってっから。あんまそういうことしないで」


 いい?と指を突き立てる月緋さんに、太陽さんは納得いかないようで唇をぐるぐるしたあと、仕方なく軽く頷いた。何それどうやんの。私は二人の周囲をぐるっと回り、目的のものを取る。私に背中を向けている太陽さん越しに、バチッと月緋さんと目が合った。数字のことを視線を動かして訴えてみると、分かってんのかどうなのか、首を傾げ、眉を最大限に寄せて変顔。私は呆れて戻ることにした。


 あんまそういうことしないで、の部分で私は引っかかる。表面上はちゃんと席についてワッフルを食べているし、話すなら席につけと葉賀さんに言われて唇をぐるぐるしながら戻ってきた二人にも平然と振る舞えている。けど、引っかかりは引っかかったままだ。


 私がずっと「もしかして」と思っていたことが、もしかしてとしてありえなくなるからだ。


 もしかして、というのは、太陽さんが殺人事件の犯人かもしれない、ということ。徳の無さすぎる基本の時間といい、自意識過剰だけど私に話しかけるのも怪しさがあった。けどそれなら月緋さんから黒色がどうとか何か言われるはずだし、今だって「そういうことしないで」の「そう」に簡単に収められるわけがない。


 ちらっと隣を見ると、憑き物が落ちたかのようにいつもの様子でふざけ倒す月緋さんがいる。やっぱりさっきまでの落ち着きは落ち込みからだったのだろうか。何の落ち込みかなんて知らない。


 月緋さんは私の視線に気づき、にぱっと笑ってソフトクリームの乗ったワッフルを指さした。


「歯ぁ溶けそう」


 太陽さんといい、おいしそうを素直に言えないのか。


「月緋さんが一口ほしいそうです」

「ツキあーんして」


 さっきまでだったらやめろとか言ってそうだけど、月緋さんは太陽さんのワッフルを一口もらった。ソフトクリームとチョコとはちみつと色々が乗っかったでかい一口は前歯の一本くらい抹消させると思う。


「なんか細長いの入れた?」

「ちっちゃいマシュマロとカラースプレーはさんだ」


 甘ったるいのかコーヒーを取りに行くようで席を立つ。本当にいつも通りだけど、落ち込んでた理由と治った原因が分からない。太陽さんとか、私の「もしかして」と何か関係があるのだろうか。


「泉璃なにみてんの」


 月緋さんは首をかしげた。何も隠してる様子はない。とりあえず私の分のカフェオレを所望してみたが、真っ黒いのをふたつ持ってきやがった。調整しようと盛り盛りのワッフルを頬張ってあーだこーだ言ってるうちに葉賀さんが、なんてのはもう言う必要はない。


 般若の角はもう自前のものとなっていた。

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