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回想と移動手段ディスカッション

某年某月、大学の学部生時代からの友人と、某指定都市へと旅に出ることになった。大学を卒業し、お互い社会人となってからはなかなか会う機会もなく、久しぶりの友人からの電話で我々は大いに盛り上がった。合わせて希望休を取り、泊まりで語り明かそう、そして久々の再会とあらば、いっそのこと我々が居を構える山、河川、田んぼと畑に囲まれたこの地ではなく、ビルが立ち並び、徒歩圏でも充分に遊び、楽しめるであろう某指定都市に行こうじゃないか。


この地においては、アミューズメント施設(遊園地とか、スライダーつき温水プールとか)もなければデパートもないし、書店の数も少ないし、規模も小さい。したがって、この地において買い物をする際、困らないのは生活・日用品と食材くらいなもので、主に趣味物品の買い物は通販に頼らなければならない。友人知人と揃った際に「どこかで遊ぼうか?」という話になると、思案した挙句"カラオケ"か"ゲームセンター"の2択になってしまう。案には上がれど却下されるのがボウリングで、理由は簡単、1ゲームが高すぎるからである。そんな悲しき片田舎の現実。


それでもこの地に居を構えた以上、その環境に順応するしかないわけだから、やはり某県民は忍耐強いと思う。そんなに不満たらたらなら、さっさと都会に移ってしまえばいいじゃないか。そんな至極まっとうな意見もあるだろう。その通りである。では、なぜ私が高校卒業と同時に都会へと飛び出さなかったか。それは……都会が怖かったのである。事件、事故、人混み、ちゃんと話せるのか標準語、地価、物価……どれを取っても怖い。18歳の田舎の少年を怯えさせるには充分すぎる恐怖だった。


それでも私は、大学受験の際、今回友人と赴く某指定都市の大学を含めて、都会にある学校ばかりを受験した。一応合格はしたものの、いざ大都会に単身赴くのか……と真剣に考えたら、情けない話だが希望と願望より恐怖が勝ってしまって、この地にある地元私大に入学してしまった。余談だが、国立大学はセンター試験の段階でばっさりと足を切られてしまった。もしもこの国立大学に受かっていれば、憧れのあの芸能人の後輩になれたはずなのに……。でも、その大学は大都会にあるし……。しかしながら当然、時を同じくして都会へと進学、就職した同級生もいるわけで、大人になった今、もしもタイムスリップ出来るものなら、当時の私にゲンコツを見舞ってやりたいし蹴飛ばしてやりたいし、叱責もしてやりたいところだが、時すでに遅し。時間は戻せない。


──過去の話だ、忘れてしまおう。当時を思い出していたら、腹立たしいわ情けないわで、泣いてしまいそうだ。生きているのは現代なのだ。


さて、その友人との旅行計画は、我が地元から片道約300kmある指定都市までの"移動手段を何にするか"のディスカッションから始まった。「交代で運転すれば大丈夫じゃないか」と友人。「運転は怖い、嫌だ」と私。いきなりもめた。交代とはいえ、往復約600kmも自動車を運転しなければと思うと、プレッシャーに弱い私の胃がきりきりと痛む。「同乗者がいる時に居眠り運転で事故でも起こしてごらんなさいよ、どうするんだよ?責任とれるの?!」とネガティブな話でまくしたて、定刻発車で定刻到着の電車の素晴らしさを切々と訴え、自動車交代運転移動案を半ば強制的に却下させることに成功した。押しに弱い友人に感謝である。電車で行く指定都市の旅。移動手段が電車と決まっただけで、私の心は軽くなったし胃痛も治まった。


荷造りをして、後は旅行当日を待つのみである。久々の充実したプライベートにわくわくする。1つだけ不満があるとすれば、野郎2人の色気のない旅行という点。まぁ、こればかりは不可避だ。現実を受け入れることで人は成長するんだもの。


(2話に続く)



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