9 戦闘条件その2
「クリーガーとして、一般人を傷付けた場合は負けにカウントされるんだったな?」
「そうだ。あと、条件を摂取していないクリーガーは一般人扱いだから注意しろ。戦闘対象になった場合は、条件を摂取していなくてもクリーガーと認識される」
ケータは条件を摂取できなかったから、戦闘対象にならないように逃げるしかなかった。俺が条件を提供しても、近くにいて怪我をしたら負けになるからクリーガーになっておく必要があるな。クリーガーになったら傷も治るし。
「俺がケータの代わりに戦った場合は? 対象はケータだから俺が負けてもケータが負けないと負けにはならないのか?」
「いや、代わりに戦った場合でも俺の負けになる。俺のケルンが奪われる。共闘すると負け扱いだ。入れ替わりで戦うのはできるが、ケルンを得るのは一人だ」
「自分のケルンを相手に任せられるかってことか」
「ああ。あと、戦闘以外でクリーガーを傷付けた場合と、戦闘で道具を使った場合も負けになる。相手を死なせた場合は、自分も死ぬ。回復できないようなダメージを与えた場合は参加権を剥奪、プラス五感の一つを失う」
視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚。失うにはリスクが高すぎる代償だ。これを失って取り戻すために戦いに参加している人もいるだろう。
何のために戦うのかは重要だけど、どうやって戦うかも重要だ。
「回復できないようなダメージって?」
「四肢を捩じ切るとか。武器は使えないから切断じゃなく、捩じるか捥ぐか」
「うわ……と、ともかく。戦闘開始から24時間経たないと、次の戦闘はできない、と」
「ああ。戦闘自体は1時間の制限があるけどな。戦闘から24時間経ってないクリーガーと会ったときは、液晶が光る。これも設定しておいたからな。あと、一度勝敗が決した相手とは二度と戦えない。勝敗結果は時計で確認できるから、後で良いから見ておけ」
ケータは自分の時計で横のボタンを示した。さて、確認しておこうか。このままダラダラしていたら、今の会話も忘れそうだ。
膝上から時計を取り、ボタンを押した。アナログの針の下の液晶に、白で1、黒で0が表示された。勝ちが白で負けが黒か。わかりやすい。
確認してから顔を上げると、ケータが時計をこっちに向けていた。
「お前の戦闘から時間が経ってないから今は無理だけど、後でケルンを渡そうか?」
「協力するのにそんな代価は必要ない。お前が4回勝った後なら貰うけど」
血液を提供する代価は、ケータの知識で相殺される。あと、俺に渡さなければ3回負けたことにならなかったのに、という状況になったとしたら嫌というのもあるけど。とにかく、ケータとの間でケルンは渡さないし、貰わない。