31 失ったモノ
ユーキの情報を元に、ユーキがクリーガーと戦った場所をケータと一緒に巡った。意外と行動範囲は狭かった。この地域にクリーガーが多いのか、クリーガーの全体数が多いのか。近くに研究所があるから、その半径内に分布しているのかもしれない。
今日は試験最終日で授業が午前だけだったから、少し遠出をして市外の公園に来た。ユーキはどういう理由でこんなところに来たんだか。人通りが少ない場所を探すのが上手いと思う。
広い芝生の上でケータと手合せをすることにした。離れたところでキャッチボールをしている親子がいるけど、人通りは少ない部類に入るだろう。ケータの蹴りを避けながら、周りを警戒していた。動いている間は、時計が反応しても気付きにくい。
30分ほど経って、ケータは両腕を挙げて終了の合図を出した。
「そういえば、アイツらとは連絡取っているのか?」
「ジュンとユーキか? ジュンからは週1回はメールが来る。ユーキとは毎日メールしてるし、週の半分は泊まりに来てる」
「クリーガーが慣れ合うとはな。俺も人のことは言えないけど」
確かに、奪い奪われる戦いをする者同士が慣れ合うなんて考えにくい。ケータは最初からクリーガー同士の協力は難しいと言っていたし、ユーキもクリーガーに協力者がいるなんて、と言っていた。俺はケータが協力を申し出たから協力関係になったけど、ジュンやユーキとは戦ったわけだし。まあ、ジュンは棄権したし、ユーキも棄権はしていないけど戦わなくなったからクリーガーではないと言えるかもしれない。
「ケータの戦いが終わったら、どうなるんだろうな」
「何も変わらないだろ。俺が妹を取り戻しても、お前が俺を友達だと思うなら関係は続く」
「戦いが終われば関係は切れると思ってた」
「……思い出したのか?」
「何を?」
「いや、何でもない。お前が失った記憶を取り戻したとしても、俺は友達だと思っているから」
話が噛み合ってない気がする。でも、それを聞いたところで教えてくれないだろう。ケータは、俺が失った記憶の一部を知っている。それは、きっと重要なことで。
それを思い出したとき、俺はどんな気持ちになるんだろう。ケータの様子から、良い気分になることはないと分かっているけど。
失った記憶。汐里はこのままでも問題ないと言っていたけど、誰かを傷付けていないだろうか。自分が傷付かないために、忘れることで逃げたんじゃないのか。
あれ? 俺が取り戻したいものは『失った記憶』だとケータに言ったか?
「ケータ、それ」
「イチロー?」
気だるそうな声が、俺の名前を特別な呼び方で呼んだ。




