30 幼馴染み
ユーキの希望で、ケータが泊まった時と同じようにベッドの横に布団を敷いた。同じが良いのか特別が良いのかよく分からない。
布団に入って電気を消してから、お互いのことを話した。
ユーキは、ずっと孤独を感じていたこと、誰かを信用したことがないこと、俺のことも信用していないこと、でも信用したいこと。俺は、何かを忘れていること、それを思い出すために戦いに参加していること、それは必ず取り戻したいものではないからケータが4勝すれば棄権すること、そのこととユーキとの家族ごっこは関係ないことを改めて説明した。
その説明に安心したのか、ユーキの声は途切れた。
寝たか。
ケータが泊まった夜は、俺の方が先に寝てしまった。あのとき、ケータの声が聞こえた気がした。ケータは何を言ったのか。次の日の朝に聞いてみたが、はぐらかされてしまった。
何か大切なことを言っていたはずだ。でも、もう一度言うのは躊躇うような何か。
俺が忘れているものに関係があるのか。
思い出さないといけないのか。
全部、何もかも。
もう、何も考えたくない。
「イチロー!」
誰かが呼んでいる。俺のことをそう呼ぶ人は限られている。
一郎なのに長男じゃないんだね、と言ったアイツ。兄さんが零士だから零の次の一なんだ、と返した。
僕たち四人はずっと仲良しだよね、と言ったのに。遠くへ行ってしまったのはアイツが先だった。
「--スケッ!」
叫んでも届かない声は、記憶と共に消えていった。
汐里、修二、俺。あと一人は誰なんだ。




