29 食事
夕食は鍋にした。一緒に鍋を囲むって家族って感じがする。一人用の鍋もあるけど、二人以上で食べる鍋は特別な気がした。実際家族で鍋をした記憶はないけど。俺が考える理想の家族像なのかもしれない。
この家で初めて鍋を囲む。始まりには丁度良いかもしれない。季節外れだけど。
「お前はバイトがあるから、戦い目的の時はなるべく一緒に行動しない方が良いな」
「でも、オレがいた方が便利じゃない?」
「最初はそう思ったけど、一人暮らしとか聞いたから。俺達の戦いに付き合う必要はない」
「それってアイツのため?」
「まあな。お前とは家で会えるし、無理することないかなって」
ユーキの噂は利用できるけど、ユーキにも生活がある。事情を知った今は、戦いには参加しない方が良いと思った。時間が合って一緒に行動したいというなら拒絶はしないけど、バイトや学校を犠牲にしてでも参加してほしくない。
ユーキは眉を寄せながら白菜を口に入れた。また何か気に入らないことでもあったのか。
ユーキとは家族ごっこをするけど、ケータの戦いを優先することは既に言っている。それなのに、何故。
「ケータの戦いが早く終わる方が良いだろ」
「なんで?」
「後はお前を優先できる」
ケータの戦いが終わったら、俺も棄権する。その後は、ユーキとの家族ごっこを優先するつもりだ。もし、その時に俺の記憶が戻っていて生きるのが辛くなったとしても、ユーキを理由にして生きていく。どんな記憶を忘れていて、どんなことを思い出すのか不安だけど。それでも、過去は変えられないから受け止めるしかない。
ユーキが俺の過去を知って離れていくかもしれないけど、その時はそれで良い。絶対俺からは手を放さない。
「え? 疑似家族ってクリーガーの戦いをしてる間だけじゃないの?」
「いや、期間限定のつもりはなかったけど。期間を決めた方が良かったか?」
「……アイツが言っていたのはこれか。確かにお人好しすぎる」
「だから自己満足だって。で、どうするんだ」
「もちろん、期間は長い方でヨロシク」
ユーキの笑顔が、一瞬誰かに重なった気がした。




