14 自分のためじゃない戦い
「勝率は?」
「1勝1敗です。まあ、逃げるときもありますから」
目を細めて楽しそうに言う姿に、チリッと頭が痛んだ。ああ、コイツは自分のことしか考えないで相手を犠牲にできるんだ。前の声が良かったから、今の声が自分の理想じゃないという理由だけで、相手の希望を奪うんだ。
1回奪って、1回奪われている。奪われているのに、それでも自分の理想を手に入れたいのか。
ポケットの中で、小瓶の中の液体を指に付けた。
「逃げるぞ」
ケータは俺の隣に跳んできて、腕を取った。
「こんな奴と戦うリスクを負いたくない」
「……じゃあ、俺が代わりに戦っていいか?」
液体の付いた指を舐めた。あの感覚が蘇る。体が軽い。頭も冴えてきた気がする。冷静に考えろ。
俺が戦っても、ケルンの対象はケータだ。負ければケータがケルンを失う。でも、さすがに負けそうになったら逃げるつもりだ。卑怯だけど、反則ではない。勝負に策はつきものだ。
自分の戦いじゃないのに、戦う理由は。ケータのためとか、それは二の次で。
ジュンの戦う理由が、アイツを傷付けるからだ。
「任せた。俺のケルン、というのは気にしなくていい」
ケータは背中を押してくれた。任せた、という言葉が力をくれる。背中に当てられた手から信頼が伝わる。わざと負けたり、不利なことはしないと、信じてくれている。
もしかしたら、俺と協力することを決めたときから、ここまで考えていたのかもしれない。
自分のケルンを預けるのは、こんなにも重いことなんだ。俺は、ケータに俺のケルンを預けることを考えたことがなかった。反対のことしか考えていなかった。
反省は後だ。今は、戦いに集中しろ。シャツを脱いで、身軽になった。
「あなたもクリーガーだったんですね。で、代わりに戦うと」
先手必勝とでもいうように、距離を詰めて殴りかかってきた。顔の急所を適格に狙ってくる。拳を手や腕で受けると、ダメージが大きい。避けられる分は最小限の動きで避けた。
相手の攻撃を受け流したり利用するだけじゃなくて、自分からも攻撃するのか。小柄な体型を活用して、スピード重視の攻撃だった。でも、この戦い方は汐里に似ている。汐里とは何度か手合せをしているから、対処法も数通り思い付く。
「意味が! わからない!」
「お前の戦う理由も、な!」
膝を曲げて体勢を低くし、右足を回した。




