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3.天敵ヒカル

 あっけらかんとした声が響き渡り、同時にあたしのおでこにはピシッと青筋が浮き上がった。

 ――誰だ、記念すべき瞬間を邪魔しくさった不届き者は!! 馬に蹴られて星になれ!!

 

 キッと眼差しも鋭く、丘の向こうから現れた新たな影を見据える。

 輝くような金髪に、ちょっとつり目の明るい緑の双眸。赤を基調にしたネクタイを緩めて着崩した濃紺の制服姿。あ。こいつは……


「お兄ちゃん」


 パッと顔を輝かせたミサ(激可愛い!)が応えると、男は瞳を和ませたけど、次にあたしの方に視線を向けるや怪訝そうに眉を上げた。


「あん? なんだ、おまえ……見慣れない顔だな。何者だ?」


 あごを上げて、腕組みしながら上から目線。うっわ、感じ悪。


「オレはこの学園の性別女ならば生徒、教師、事務員さん、学食のおばさんから池の鯉まで完璧に把握してるからな」


 そして良く分からないことを自慢げに語る。

 このイケメン台無しの第一印象の最悪っぷり。間違いない、ヒカルだ。


 ミサだけでなく、ヒカルまでいるってことは……あたしってば、『フェルソナ』の世界に来ちゃったの!?

 

 うっわー、ラッキー! 超ラッキー!

 でも、なんでいきなりこんなことになったのかわかんないし、またいつ帰ることになるかもわかんない。

 となればとりあえず、今のうちにとことんミサを堪能しなくっちゃ……!


 グッと両手でこぶしを握ってミサを仰ぐと、彼女の胸の前から、さっきは見えなかったピンクの矢印がビヨンと伸びているのに気付いた。

 んん? なによ、あれ?

 矢印が向いた先にいるのは、「おい、シカトすんなよ」と言いながらこっちに近寄ってくるヒカル。そのヒカルからも、同じようにピンクの矢印がミサに向かって伸びていた。


「こら、アホ面下げてないで何か言えって、このちんちくりん。なんでそんな水の中で座り込んでんだよ?」

「そんな態度じゃしゃべる気もなくなっちゃうよ。――ごめんね、お兄ちゃんは口は悪いけど、性格も悪いの。だけど、女の子には基本的にはひどいことはしないから安心して」


 反応のないあたしにいらだったように声を荒げたヒカルを制して、笑顔で話しかけてくれるミサ。はわあっ眩しい……!


 更にミサは手を差し伸べてくれたりしたもんだから、あたしは(いいんですか!? 本当にいいんですか!? いいんですね!? いいんですよね!?)と胸の中で何度も念を押しながら、その白魚のようなすべすべした手につかまって、ようやく立ち上がった。やばい、この手は一生洗えない。


「あ……ありがとう。あたしの名前は、さやか。今日からこの学園に転入することになって、ママに瞬間移動(テレポート)かけてもらったんだけど、着地点を間違えたみたい……」


 ミサに嘘をつくのは胸が痛んだけど、いきなり異世界トリップしました! なんて上手に説明できる自信はなかった。いつも読んでる小説の世界に入ってきて、とかミサたちには絶対なんのこっちゃ、だろうし、変な子だと思われて引かれるのは避けたかったのよ。


 こちらの世界には、一部の限られた人間ではあるけど、超能力を使える人たちが存在して、能力者はそのほとんどが超能力者育成学園――その名も『フェルソナ』に入学することになっている。

 そして、ヒカルの言動から察するに、ここはフェルソナの敷地内。

 突然能力が目覚めて途中入学する生徒もときどきいるし、瞬間移動で着地を間違えるのもよくある話だから、あたしのこのとっさの作り話も別に不自然ではない、はず。


 にもかかわらず、ヒカルは胡散うさんくさそうにあたしをまじまじと見つめる。


「……なんっか、ひっかかるんだよなあ。ま、陰謀とか企めそうな脳みその持ち主には見えねーけど」


 うわー、こいつの毒舌設定はわかってたけど、面と向かって言われるとマジでムカつく!

 あんたねえ、と声をあげそうになった一歩手前で、「お兄ちゃん!」といさめてくれたのは、やっぱりミサだった。


「ごめんね、さやかちゃん。ちょっと前までこの学園、悪い奴らが潜り込んでごたごたしてたから……でも、もう全部終わったし、心配しないで。私はミサ。こっちは一つ上の兄のヒカル。2人ともクラスは高等部1-Cだよ」

「年上なのに同じクラスなの?」


 なーんて、ほんとは理由も知ってるんだけど、ミサとの会話を楽しみたくて、あえて質問してみる。うきき。


「オレは昔ケガで一年入院してダブってんだよ」

「あんたには聞いてない」

「はあ!?」


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