遅刻
やばいっ
遅刻しそう…
何でこんな時に電車遅れてるんだろ…
空は少しずつ暮れかけているのに
蒸しかえるような暑さだ
(仕方ない…)
電車を待っていたら、何時になるかわからない
目的地は一駅先
ひとまずその方向に向かって走り出す
(はぁはぁ)
ゆう
「あっと、とりあえず先に連絡しなきゃね」
プルプルっ
男
「はい…水野さん?どうしましたか?」
ゆう
「あの、ごめんなさい。
電車が遅れてて、待ち合わせに遅れそうなんです
だから今からそちらへ…」
男
「わかりました。大丈夫ですよ。
いまどこですか?」
ゆう
「えーっと
上城野の駅です。目の前に桜銀行があって…」
男
「わかりました。
そこで待っていてください」
ゆう
「え?でも…」
ツーっツーっ
ゆう
「き、きれた
ここで待ってればいいの?」
焦るゆうとは対照的に
低く落ち着いたその声の主は
どうやらここにきてくれるらしい
(息を整えるゆう)
はあ…何で初めてのデートなのに…
あ…髪ボサボサじゃないかな
汗で眉とれてない?
バッグからコスメポーチをだし小さな鏡で確認する
はあ…かろうじて眉はあるけど
ひとまず手櫛で髪を整え
汗を拭う
ようやく息が整い
汗も少し引いてきたころ
後ろから声をかけられた
男
「水野さん…」
ゆう
「え? は、はやい…」
「あ、こんにちは。ていうか、ごめんなさい。
遅くなって」
男「いえ、電車が遅れるなんて予想できませんよ
気にしないで。
車を止めてあるのでいきましょう」
(背、高いなやっぱり…)
すらっとしてるけどがっちりしてて
細身のスーツがよく似合っている
小顔で、凛とした顔立ち
そんな男の表情は読みづらい…
だが…怒ってはいないようだ
ゆう
「あ、ありがとうございます」
ゆうは急いでその後ろについていった
男
「すみません、ゆっくりでいいですよ」
男はにこりともしない
だが
二人の歩幅はゆっくりとそろう
固い表情に隠れた柔らかい気遣いに
ゆうは少しホッとした
。
。
。
駐車場はすぐ近くだった
男
「どうぞ…」
助手席のドアを開けてくれる
ゆう
「あ、ありがとうございます」
(これが…エスコートというやつですか…)
(なんか照れくさいな…)
男は慣れているのか…
その動作には何のぎこちなさもない
ゆう
「あの、どうして車で?」
男
「今日はドライブに誘おうと思っていたので、車で来ていました」
(なるほど…てっきり地元の駅で待ち合わせだったからその近くで食事でもするのかと思っていた)
ゆう
「ドライブ、いいですね」
男
「よかった、じゃあ、海にいきましょうか?」
(今からなら夕陽がまだ見れるかもしれない)
車内にはまだ熱気がこもっている
助手席のドリンクホルダーには
冷たい缶コーヒーがさりげなく置かれていた




