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異能部  作者: KAINE
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彼の者の日常その2

 事がここに至って、ようやくこの男の()が聞こえないという事実に気付く、普通なら空気を通して心配する声が、面倒だなという声が、何か良からぬ事をしてやろうという声が、ヒロイックシンドロームに酔う声が聞こえてくる筈なのだ。

 これは相当な異能を娘が持っている、少なくとも私の異能を防げる精神系の異能を持つ世界最強と高くなっていた鼻をへし折られた気分になるが嬉しくもなる、過去に会ってきたサイコメトリーは世界の声を聞く程では無かった、触れないと駄目、触れても表層、聞こえるだけ、操れるだけ、その全てが程度が低い、言ってしまえばオママゴトだ。

私に認識や記憶を改竄消去されるのが簡単なくらいには程度が低い、それを異能も持たない親に持たせる事ができる程の精神系、少なくとも防護性は並べるだろう。


 「君、本当に大丈夫?」

 肩に触れられた瞬間、堰を切ったように心の底から心配する声や、彼の記憶が流れ込んでくる、一瞬立ち眩みにも似た感覚を味わって、ようやく自分の勘違いに気付いた。

 娘じゃない、隣に住む子供だ、私を世界最強の精神系異能とするなら世界最強の物理系異能、これは会ってみた方が良いだろう、とりあえず触れれば記憶の処理ができる、どうやら方向も合っているしほんの少しだけ付き合ってもらうとしよう。




 数ヶ月ぶりの日本は冬と違ってジメジメと蒸し暑く、冬富士だけではなく夏富士まで見るとは思ってもいなかっただけにミンミンと五月蝿いセミの声も加わってあまり良い気分とは言えそうにない。

 車を乗り継いで目的地に向かうつもりだったが運良く目的地を同じとするトラックを見付けて半日は掛からないにしてもそれなりに時間は使うだろうという予想に反して2時間にも満たない時間で到着はしたがここからが長い。

平日の昼間なら学校に居るだろうが彼処は地獄だ、人が多いというだけでも大変だが子供というのは基本的に考えが浅い、直感的に生きているせいで情報量事態は少ないが豪速球のソレだ、大人は大人で情報量が多い分大変だが複雑な方がまだ慣れている。


 居た、浅黒い肌にアフロに近いチリチリヘアー、ランドセルが絶望的に似合っていない小学生。

 アレはマズイ、私は私で人の事が言えないがアレは私以上に破滅的な思考を持っている、私は何時死んでも良いと考えて、それでも死なない理由を見付けて先伸ばしにしているだけだが、アレは何時世界を壊しても良いと思っている。

明日友達と遊ぶ約束をしたから、来週漫画の新刊が発売されるから、来月気になってるゲームが発売されるから、そんな私の死なない理由と似たり寄ったりな理由で世界は壊れずにいる、もしもそれらが無くなれば、それらに飽きれば、容易く世界は壊れるだろう、アレは他者をなんとも思えていない、家族も友人も既に期待もしていなければ愛着を感じている訳でもない、心底愛情を受けているし仲の良い友人も居る、それを理解していても尚、世界を壊す事に躊躇がない。

何故気付かなかった、悠長に旅をしている時間なんてとっくの昔から無かったと、私は自滅主義で生きた幽霊だが、人と世界に絶望してはいるが、それでも壊したいと思っているわけではない、変えようと思っている訳でもない、在るがままを受け入れて、その上で諦めただけだ。

もしも異能至上主義の精神操作が可能な者に操られても抵抗すらしない程にアレはなんとも思えていない、何もかもが石ころ一つ分以下の価値すらなく、言わば全滅主義の塊だ。

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