自宅の日常その3
急ピッチで作られたとは言え会社や研究室と同時に完成とは行かず、会社から遅れる事3ヶ月、ようやく我が家が完成した、研究室の方が2ヶ月も早く完成したのは予想外だが一階建てと三階建てだ、当然と言えば当然なのだろう。
レンガっぽいタイルの張られた外壁は何処と無くヨーロッパ風味でL字型の風貌は日本っぽい、一階は玄関と風呂とトイレに脱衣所、室内干しが可能なランドリールームそれと収納付きの客室だがまず間違いなく舶来用なんだよな、二階がリビングダイニングキッチンに書斎と一階に比べれば手狭な客室、三階にトイレと寝室と収納、間取りで言うなら4LDK、ランドリールームを一部屋と見るなら5LDKになる、研究室とやらのスペースが使えるならもう三部屋は軽く確保できたがその場合は何処かの部屋で爆薬を作るという事になる、現時点では隣の家でだから目糞鼻糞になるが多少はマシだ。
どうせ障壁を張るがそこは気分の問題というか壁を隔てただけと1メートル程度の間を挟んだ別の建物というだけで意味は変わる、理想を言うならばそんなものは必要ないが結婚の最低条件が研究室が欲しいだ、家の中に作るか外に作るかの違いで外を選んだ結果がコレ、もう少し土地を確保できていたならとも思うがそうなると今度は予算の問題が出てくる、世界最強でもどうにもならない事は有るのだ。
ようやく完成はしたが正直に言って延べ床面積でさえ隠れ家にやや劣る、二階建てと三階建てという事を考えると大幅に研究室がスペースを取っているのが解る、まぁ向こうの方が土地が広いというのもあるが、研究室はトイレと部屋が一つ有るだけの立方体、コンクリートの建物ではめ殺しの窓しかない、毒物を扱うため仕方がないが建物の上には換気孔が付いていて、その下に付いたフィルターはかなり大きい、そのため異様な物がそこに有るとしか言えない、普通の一軒家と庭を挟んで同じ敷地に有る、便宜的には離れと呼べる建物が異様、そういうのが好きな人には堪らないのだろうが一般的な価値観から見るとなんだこれとしかならない、これが山奥とかで趣味のためにと言うなら理解もできるし、その趣味が陶芸で窯が必要とか、絵でアトリエにしているとかならまだ良いが住宅地からやや離れているだけで最寄り駅まで徒歩20分足らず、趣味が爆薬製造と毒の抽出、間違いなく隣に引っ越してきたいと思える隣人では無い。
しかしようやく完成した我が家だ、後は住民票を移したり婚姻届を出したりと役所での作業が必要になるが卒業してからの一波は越えたと言える、会社も順風満帆、日に数十人は軽く来るし新興で小さいバス会社だが営業を掛けたら受けてくれたおかげで毎日最大30人は固い、事前に契約書や説明を丸投げする代わりに安くしているため他のバス会社がチマチマと予約して説明でゴタゴタとする上に値段も据え置き、小さい新興でも二割は安くスムーズに宇宙に行けると話題で既に新たに人を雇っているらしい、向こうの社長から増便の依頼を受けるのも時間の問題だろうし、少し待っては貰うが枠は考えてある、売り上げも好調で新たに数人雇いいれてはいるし給料も若干値上げしたが問題はない。
仕事にしても契約書の説明か添乗員か添乗後にコンテナを掃除するか予約の受付かお土産の販売か、適材適所で割り振ってシフトを組んで、まぁ俺は作られたそれに判子捺すだけだが、正社員の方も一人増やして予約の管理者が二人体制でシステム面と説明面に分けてある程度は補える様にだ、俺の仕事はと言うと出社して、昨日の売り上げ持って会社近くの銀行に預けてお土産物屋で必要になる小銭貰って、後はコンテナを上げ下げしながら部屋で本読んだりテレビ見たりするだけだ。
コンテナに最大10人、1時間で150万円、貸し切りも加われば180万円の売り上げが日に何度も有るのだ、それも一便だけで、複数飛ばすなら倍々で売り上げは増えていく、会計士の資格持ちの東さんの話だと法人化も見えてきているらしい。正社員の中では即戦力最有力候補だっただけ有って真面目で頼れる、前職は会計事務所で働いていたらしいが上司との折り合いが悪くなってきた頃に子供が喘息となり東京よりはマシだろうと辞めて故郷である千葉に越して来て、失業保険と奥さんの力でなんとか食い繋いでいた所に妙な求人見てやって来た人だが同じ様に色々とあって前職を辞めた新島さんと共に役員指名した方の意見だ、手続きが面倒とか言っていられない。事務の手続きが増えるという話だがその辺りは二人が率先して動いてくれるらしい、俺も勉強する必要もあるが基本的には丸投げ、ワンマン経営なのにこれで良いのかとも思うが他に真似ができない芸当を俺が持っている、ある意味一番働いていて稼いでいるのが俺なんだからある程度は丸投げでも良いだろう。