ifその1番外
「フハハハハハ」
「ご機嫌ですね陛下」
そこは一言で言うならば王座の間だろうか、真っ赤なラグが敷かれた床に幾つもの石柱が梁を支える為に並び、その一つ一つに彫刻がなされている。
数段の階段を上がった場所に豪奢な椅子が二つ置かれていてその後ろにはこれまた豪奢なステンドグラスが在る、そして椅子を守るように入り口からほんの数十メートルという距離に甲冑や鎧、はたまた上裸の異形の戦士たちが歩哨をしている。
「うむ、側近よ、余は余の才覚が恐ろしいと今さら感じ入ったわ」
「はぁ、左様ですか陛下」
「うむ、先頃、人界に忍ばせた者から繋ぎが来た、どうやら奴等異世界より勇者の召喚に成功したらしい」
「大事件じゃないですか!? これまでも何人の勇者が魔王を討伐、封印に成功していますよ」
「フフフ、それはソヤツらが阿呆だからよ、余は阿呆ではない、解るか側近よ」
「余はそれを予見していた、これまでの己は違う、己は大丈夫等と過信する阿呆な魔王と違い余は予見して、対策を打っておいた、つまり万全之策が在るというわけだ」
「なるほど、具体的には?」
「うむ、まずこの城の周囲に結界を張った、ドラゴン、それもエンシェントが20、いや30は集まってブレスでも吐けば破れるだろうがそんな一撃を放てる生き物はこの世に居らん、そしてこの事を人界に忍ばせた配下を通じて流布しておく」
「知らせるのですか!?」
「うむ、そこが胆よ、知ればきっとどうにかして結界を破る方法を探し、そして行き着く、東の果てのそのまた果てに結界を破れる道具が在るとな」
「それでは意味が」
「まぁ最後まで聞け、その最果てには我が弟が守りに着いておる、故にまず大丈夫だしそこまでの道程は天然の迷宮たる洞窟、その洞窟には不死団長と配下を配置している、彼処は阿鼻叫喚、恨みと死の洞窟だから奴らには打ってつけ、罠も幾つも在るし万が一にも攻略は不可能、仮に攻略しても最後の部屋には団長以下強力なアンデット、勇者とて一堪りもないわ」
「おぉ、素晴らしいですな」
「そうだろうそうだろう、しかもだ億が一にそれを倒しても最果てに至る扉には特殊な鍵をかけてあるし団長には負ける事あれば洞窟を崩落させよと命じてある、勝てば良し負けても生き埋め、仮に生きて外に出られても宛てもなく鍵を探すのだ、その間に別働隊で人界を落とせばよい」
「流石です陛下、してその鍵はどちらに」
「うむ、南の砂漠、幻影の塔の中に隠して風の四天王が守っておる、そして人間が砂漠を越えるには湖の聖霊の加護を得るか地元の者の力を借りるかだが、地元の者はほぼ殲滅、湖には水の四天王が居る、それに湖に近付くには長耳の許可が要るが奴等の所には土の四天王、ソコに至るまでの道には炎の四天王、これら全て倒してもこの城に入れると言うだけ、ここに至る道にも兵は配置しているし、ここには将の器では無いだけで実力なら四天王と肩を並べる事ができるかもしれん手練れが揃っておるし四天王が束になっても叶わんお前も居る、何より余も居るのだ、どんな勇者だろうと話にもならん」
「陛下、私、脱帽でございます、勇者がちょっと強いくらいでは太刀打ちできない程の幾重もの策、しかもそれらは全て勇者の目を他に向けてその本質は一気に人界を手中に収めるための囮、素晴らしいお考えです」
魔王「まさか破壊神が来るとは思わなんだ」