短編集その1
基本的に文字数少ないのに一話にも満たないネタを詰め込んでみました。
弱パンコンボからの小ジャンプキック、さらに滞空技に繋げて着地と同時にスライディングキックで距離を詰めつつ硬直のタイミングをずらす、相手の飛び道具を相殺して更に距離を積めて下キックで牽制しつつ投げを狙う。
持ちキャラの特性を最大限に生かす戦い方は読まれやすいがハマれば強い、それは洗練されているが故に読まれれば全て防がれるが一撃でも判断を誤れば怒濤の連続攻撃で一気にHPバーを削られる、何より大まかなコンボや立ち回りは決まっていてもそのタイミングや組み合わせは使い手による、待ちを基本にする奴、動き回る奴、飛び道具を連打する奴、同じキャラを使っていてもその性質は大きく異なるし相手によって対応は変わる。
このキャラ相手だとエリア端が安全とか距離を積めようとか、しかしCOMではなく対人だとセオリーは存在しない、キャラ比で圧倒的有利でも腕で落とされるなんてのはザラだし絶対的な強キャラなんて存在しない。
強パンチのスーパーアーマーで受けつつ技の無敵時間を利用して前進、距離さえ詰める事ができたなら後は投げれば終わると言われる鈍重高耐久高火力キャラ、その扱いはかなりの腕を必要とするが他のキャラよりシンプルな戦いができると好む者も多い、とにかく距離を詰める、コンボで削って掴んで崩してから投げる、これさえできるならば同じキャラの対面でない限りバーを削りきれるし耐久の高いキャラでも決まれば七割は持っていける、それに禁忌だが投げハメを使えば対面でも一撃で落とせてしまえる、代わりに他の部分が劣るため玄人でももて余す、やはり最強ではない。
そんな互いの持ちキャラを知るが故に、あえて趣向を変えてミラーマッチをと二人が同時に考えると、何故だか持ちキャラ交換と言う珍事が起こる、しかしそれでも戦うしかない、いや席を入れ換えればそれで良いのだろうが。
ただ、外から見て『ヒデー試合』と呼ばれるような事になった事だけは確かだ。
「ちょっと思ったんだけどさー」
部室にてそれぞれがそれぞれに本を読むと言うなんのために集まっているのか謎な状態を打開しようとでも思ったのか唯一の男が口を開く。
本を読む手を止めずに然り気無く視線だけを一瞬向けて、直ぐに文字を追い掛けるが反応したという事は聞く気は在るだろうと判断して
「親父がさ、フィッシャーズベスト? あの胸の所にいっぱいポケット着いてる奴新調したんたがな」
テクニカルベスト、フィッシャーズベスト、彼の言うように幾つものポケットに様々なツールを容れられるベストでアウトドアシーンで大いに活躍してくれる一着だろう。
「それ見てて思ったんだ、次は裸エプロンじゃなくて裸ベストの時代が来るんじゃ無いだろうかって」
だが、間違ってもエロに直結させるような一着ではない。
スッと栞が挟まれパタンと本が閉じられる、まるで映画のワンシーンのように流れる様な動きは何度と無く行ってきたからだろうか、そこには確かに美が存在する。
「康男」
「あぁ、またかよ」
「えぇ、残念よ、本当に」
そんなやり取りの中で部室に異質としか思えない物がいつの間にか鎮座している、それを誇称するならば大きなシュレッダーだろうか、元はカルチベーター、耕運機と言った方が良いだろうか、鉄の爪で大地を掘り返して柔らかくしていく機械。
それを改造して改造して、通常よりも多く鋭い爪を二重にして挟み込む様に設置し、さらに高速で回転できるように魔改造されたそれはサイズも重量も音矢菜慈美の異能では移動させる事は不可能な筈の代物だ。
だというのに、彼女の持つ数々の例外の一つとして距離もサイズも重量さえ越えて、自宅の物置に安置されるコイツは定期的にその役目を果たすために部室に呼び出される。
「頭からで良いか?」
「足からよ」
「そうか……そうか」
すなわち、制裁という単純な目的のために。
「なぁ、ちょっと思ったんだが」
「うん? どうした」
「いや、お前のバイクってこれだけなんだよな?」
「まぁそうだな」
「大型二輪って18からなんだが、それまでどうしてた」
「板田、勘が良いと早死にするぜ」
「ってのは流石に冗談で、原付乗ってた、今は親父が校内の移動用に使ってるよ、整備さえすりゃ日本縦断五周くらいしても壊れないだろうアレにな」




