第4章
「…はめてみ、それ」
「うん」
融に促され、私は今し方受け取った婚約指輪をはめてみる。
融はもちろん、誰かに指輪を貰うなんて、初めてだった。
にも拘らず、彼のくれたリングは、私の指にぴったりとはまった。
私は思わず、感嘆の声を上げる。
「すごい、ぴったりだ」
「そらそうやろ。毎日ユズのこと見てんねんから」
「でも、指のサイズなんて、普通は分かんないよ」
「俺には分かんねん。この細さやったらこのサイズかな、って感じで」
「えー?何、そのプレイボーイ的な発言は」
「俺だって、モテ期くらいあったわ。つーか、そんなん言うんやったら、リング没収やからな」
そう言いながら、融は微笑んだ。
リング没収なんて、そんなの冗談だって分かってるけど。
それにしても、融本人も言っていたように、彼は本当によくモテる。
そのことが逆に、私を不安にさせる。
もちろん、彼に信用がないというのではない。
むしろ私は、彼のことを全面的に信頼している。
けれどやっぱり心のどこかでは、彼を疑わしく思っている自分がいる。
でもそれがなぜなのか、その理由は明確だった。
それは――彼がまだ、十三年前の私に別れを告げた理由を、教えてくれていないから。
だから私は、彼をまだ完全には信じきれないのだ。
「ユズ、大丈夫か?何や、ぼーっとしてるけど」
「あ…うん、大丈夫。ごめん」
「そうか?そんなら、まあエエけど。もうすぐ着くで」
私は彼の言葉に頷き、シートベルトを締める。
それから間もなく飛行機は着陸し、私と融は二年ぶりに日本に帰ってきた。
私は「ただいま」と大声で叫びたいのを我慢して、融を見上げる。
彼もやはり日本が懐かしいのか、心なしか嬉しそうに見えた。
――融っ。




