第3章
「ほんで?付き合ってくれるん?」
「え、あ…まあ、うん」
「何やねん、その間は。ほんま、はっきりせえへんな」
「いいじゃん、別に。そんなこと言うんなら――」
「あー、ごめんごめん。俺が悪かった。だから、もう一個だけ頼んでエエかな」
「え?何それ。まだ、何かあるの?」
「…うん、あのさ――」
――俺と一緒に、アメリカに来てくれへんかな。
彼の口からは、そんな思いがけない言葉が飛び出してきた。
私は瞬時に彼の言ったことを理解できなかった。
そのくらい、彼の言葉には驚いた。
そこでふと脳裏を掠めたのが、仕事のことだった。
柿本大翔との一件があり、私は今日から一ヵ月間の謹慎処分を受けているのだ。
そのことを、まだ彼には話していない。
このまま隠し通すなんて、そんなの、きっとできない。
だったら、今のうちに言っておかなくては。
私は気持ちを奮い立たせ、意を決して彼に事の経緯から全てを話した。
その間、彼はじっと黙って私の話を聞いていた。
「…で?それで、ユズはどうしたいん?」
「どうしたい、って?」
「だから、俺と一緒にアメリカ行くか、ここに残るか」
「そんなの、融と一緒がいいに決まってるじゃん」
「そんなら、辞めてこっち来ればエエやん」
そうすることがさも当然であるかのような口調で、彼はそう言った。
けれど私にそんな突飛な発想があるわけもなく、彼の提案には心底驚いた。
それから、彼が柿本大翔とのことについて、何も触れてこないことも。
もっと、問い詰められるかと思ったのに。
仕事を辞める。
それはつまり、私の大学生活を無駄にする、ということだ。
そうまでする勇気が、果たして自分にはあるのだろうか。
優柔不断。
そんな私の性格は、この二十九年間、ずっと健在だ。
だから今も、こうして結論を出しかねている。
けれど本当は、自分がどうしたいのかくらい、分かっていた。
融と一緒がいい。
だったら、もう、私のすべきことは決まっている。




