第1章
私はその日、朝からずっと機嫌が悪かった。
仏頂面をした自分の顔が、バスの窓に映っている。
何だって、せっかくの休みにわざわざ学校へ行かなければならないのか。
それは、先輩に呼び出されたからだ。
その先輩は、正直あまり好きではないし、面倒な人だった。
でも、仕方ない。
ここで先輩を無視して、後でいろいろ言われることのほうが面倒臭い。
私を呼び出したその先輩は、校門のところで私を待っていた。
とりあえず、挨拶と、待たせてしまったことに対しての謝罪をする。
その人は、いいよいいよ、と言ってから、私に「ついて来て」と言って背を向けた。
私はその背中の後を、言われた通りついて行った。
辿り着いたのは、一つの教室の前だった。
先輩はその教室のドアを開け、中に向かって「お待たせ」と言った。
そこでようやく、私は室内に人がいたことに気付く。
「柚紀。これが、前に話した、あたしの彼氏」
「はぁ」
「どうしても、柚紀にだけは紹介しておきたくて」
「どうしてですか?」
「んー。あたしが、一番好きな後輩だから、かな」
「…そうですか」
意外だった。
まさかこの人が、そんな風に思っていたなんて。
でも、だからと言って、私の気持ちが変わることはなかった。
自分の彼氏をわざわざ、しかもこんな日に私に紹介するなんて、やっぱり面倒、と思った。
もちろん、それ以外に私に用はなかった。
私は朝より一層不機嫌になって、学校を出た。




