第3章
彼の言ったことを理解するのに、多少の時間を要した。
何度考えてみても、「ユズキと付き合いたい」という言葉に、別の意味があるとは思えなかった。
ということは、つまり、そういうことなのだろうか。
でも、理由が分からない。
初めて会った時、彼はまだ三歳だったのだし、再会した今でも、特に何かあったというわけではない。
だったら、なぜ?
彼にそっと目をやると、私と視線を合わせないためか、俯いていた。
そんな彼に、私はどんな言葉をかければ良いのか分からず、思いあぐねていた。
すると不意に、彼のほうが先に口を開いた。
私は慌てて相槌を打つ。
「どうしても、だめ?オレが、ユズキと付き合うの」
「当たり前でしょ。あくまでも、私たちは教師と生徒なんだし」
「それが分かんねーんだよ。別に、差別するわけじゃねーのに、何でだめなわけ」
「だめなものはだめなの。そこに、理由とか理屈とか、そういうのは関係ないの」
「何だよ、それ。ユズキも、何も知らないんじゃん」
「仕方ないじゃない。私は、そんなの考えたことないんだから」
「でもさ、バレなきゃいいんじゃねーの?」
「そういう問題じゃなくて。…だいたい、何で私なの?」
「何でって、別に理由なんてないけど」
「だったら、私みたいなオバサンじゃなくて、もっと他の子いるでしょ」
「は?別にユズキ、そこまでオバサンじゃねーじゃん」
「オバサンだよ。もう私、29歳だよ?アラサーって分かるでしょ?」
「だから何?まだ二十代じゃん。年の差とか、オレは気にしないし」
彼はそう言って、私に一歩近づいた。
私は逆に、一歩後退する。
けれど私はすぐに壁まで追いやられ、もうそれ以上は下がれなくなってしまった。
それでも彼はまだ、執拗に食い下がった。
私はまるで、尋問でもされているかのような気分だった。




