第3章
私が、融宛てに書いた、最後の手紙。
もちろん、返事もあった。
融とは、別に疎遠になったわけではなかった。
とは言っても、連絡を取るのは年に数回だけなのだけれど。
私はというと、もちろんあれから何人かの男性と交際をしてみたものの、すぐに別れてしまった。
お陰で、未だに独身を貫いている。
結婚願望がないわけではないが、かと言ってそれほど焦りもない。
ちなみに、今の職場であるこの第一高等学校、通称「一高」に勤めている男性教師は全員、恋愛対象外のオジサンだ。
この春から着任した人の中にも、いい人はいなさそうだった。
チャイムが鳴る三分前。
私はいつも、それくらいに職員室を出る。
そして、足早に担当クラスの教室へと向かう。
新学期になって、今日から本格的に授業が始まるということもあり、私の足取りは自然と軽やかになっていた。
スキップでもしたくなるのを堪えて、私は一年五組の教室に続く廊下を、ひたすら歩いていた。
チャイムが鳴ったのとほぼ同時に、私は教室に到着した。
ほら、さすが私。完璧。
未だかつて、授業時間に遅れたことは、一度もない。
そんなことを考えながら、私は教室のドアを開け、中に入った。
それから「お願いします」と挨拶をして、自己紹介をし、出席をとった。
それだけで、今日の授業時間の大半を費やしてしまった。
「えー…と。それじゃあ、何か質問はありますか?」
「はいっ」
「どうぞ。何でも訊いて」
「先生、彼氏いるんですか?」
よくある質問だ、と私は思った。
高校生になっても、こういった話が好きな子は必ずいるもので、二回に一回は、この質問をされる。
それと、あとは「何歳ですか?」とか。
若作りしているつもりはないが、もう三十歳手前だと答えると、かなり驚かれる。
その反応は、素直に嬉しい。
さっきの質問には、ノーと答えた。
恋人なんて、いるわけがない。
独身だとも言った。
それくらいのことを話したところで、終業のチャイムが鳴った。
ありがとうございました、と言われても、今日は何もしていないのに。
そう思いながら、私は教室を出た。
するとすぐに、誰かに呼び止められた。
振り向くと、一人の男子生徒が立っていた。




