第1章
やっぱり、三上さんは分かりにくい。
いつも、期待してしまう。
だけど、三上さんは、きっと私なんかのことはどうでもいいんだろうな。
そう思うと、切ない。
泣きたくなる。
それはもう、どうしようもないくらいに。
「柚紀ちゃん?」
「えっ」
「大丈夫か?何や、顔色悪いで」
「そうですか?全然、何ともないですけど」
「いや、絶対嘘や。…彩、悪いけど俺、柚紀ちゃん送ってくわ」
三上さんがそう言うと、香月先輩はすぐに頷いた。
私に、断る隙も与えず。
お陰で、私は三上さんと二人きりで帰ることになってしまった。
三上さんは、私への気遣いからか、いつもより歩調を緩めてくれていた。
けれど、そのペースが、私にとっては逆に、とても申し訳なかった。
つかず離れずの距離を保ちながら、ゆっくり、歩く。
不意に、三上さんが立ち止まった。
気が付くと、私たちはいつの間にか、昨日の公園までやって来ていた。
三上さんは私を振り返り、「ちょっと、休もか」と言って、迷うことなく公園へと入っていった。
そして、昨日と同じように、ベンチに腰を下ろす。
今日はどうやら、ヒロト君はいないようだった。
「なぁ、柚紀ちゃん」
「はい?」
「柚紀ちゃん、何か悩んでんのか?」
「えっ、別に、そんなこと」
「ほんまに?俺で良かったら、いつでも相談相手になるからな?」
「あ、はい。ありがとうございます」
どうしよう。声が、震える。
これはきっと、緊張のせいだ。
今、自分が、好きな人の隣にいる。
それだけですごく、どきどきする。
心臓が、弾け飛んでしまいそうだった。
今のこの気持ちをぶつけたら、三上さんはどうするだろう。
全部、正直に言ってしまいたい。
全て、吐き出してしまいたい。
けれど、そんなことをすれば、もしかしたら三上さんに嫌われてしまうかもしれない。
そんな私の考えを、突然聞こえてきた「あっ」という叫び声が、一瞬のうちに切り裂いた。
「トール、ユズキ!」
「おう、何や、ヒロトやないか」
「トール、本当にここにいた」
「当たり前やろ。いつでもおる言うたやんけ。なあ?柚紀ちゃん」
「え?ああ…はい」
「ねぇ、トール。トールは、ユズキのこと好きなの?」




