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第1章
私は驚いて、思わず三上さんのほうを向いた。
「…な、柚紀ちゃん」
「えっ、あの…それは、どういう」
「俺は、ここにおる。そのままの意味や」
「分かりにくいです、そんなの」
「とにかく、行き詰まったら俺んとこ来いっちゅーことや」
「あ…はい、分かりました」
「俺はずっと、柚紀ちゃんのこと待ってるで」
私はなぜか、泣きそうになっていた。
どうして、これくらいのことで。
でも、あんな風に言われたら、期待してしまう。
頭では、ちゃんと分かっているつもりなのに。
どうしても、心がついてこない。
――行き詰まったら、俺んとこ来いっちゅーことや。
――俺はずっと、柚紀ちゃんのこと待ってるで。
少し低めで、あったかくて、柔らかい彼の声。
一瞬、聞き間違えでもしたのかと思った。
それくらい、彼の言ったことは意外だった。
三上さんが私に、そんなことを言うなんて。そう思った。
ほな、またな。
別れ際、三上さんはそう言って私に微笑みかけてくれた。
私も同じように微笑み返したつもりだったのだけれど、どうだろう。
私はちゃんと、笑えていただろうか。




